マグロの尾の断面から品質を判定するAI「TUNA SCOPE」を開発。
後継者不足が深刻な職人の「目利きの技」を、断面画像データのディープラーニングによって継承しました。

日本のあらゆる伝統産業における様々な「匠の技」は、その長い歴史の中で培われた、人類にとっての貴重な知識資源であるといえます。これらのノウハウは、「職人の勘」と形容されるように、体系化したり言語化して説明することの難しい暗黙知とされ、担い手の高齢化が進む中、その存続が危ぶまれています。

電通のクリエイティブチームは、日本の水産業を支える高度な職人技のひとつである、マグロ仲買人の「目利き」に着目。
マスターするには最低10年の修業が必要といわれていた、マグロの尾の断面から品質を判定する技術を、ディープラーニングを活用した画像解析技術を用いてAIに継承。電通国際情報サービス(ISID)、双日と3社共同で、マグロの尾の断面画像を瞬時に解析し、品質を判定するAIシステム「TUNA SCOPE」を開発しました。

完成したシステムは、それまで職人の目利きによって品質判定を行っていた焼津の水産工場に導入。その結果、その道35年の目利き職人と、85%の一致度でマグロの品質を5段階に判定することに成功しました。
さらに、AIが最高評価と判定したマグロは、「AIマグロ」としてブランド化し、東京駅構内の回転寿司店で実際に提供・販売し、5日間で約1,000皿を完売しました。

これまでのAIは、その多くが単純作業の代替・効率化を果たすために開発されてきましたが、「TUNA SCOPE」はそれと異なり、人類の高度な「暗黙知」を保存・継承するという使命を持って生まれました。このプロジェクトを通して、AIと人間が、互いの特長を生かし、共生していく未来への新しい可能性を示していきたいと思います。

また、今回開発した画像解析アルゴリズムは、職人や専門家の「目利き」を必要とするあらゆる産業における職能の継承へ展開していくことが期待されています。今後は、農業や林業、医療など、熟練の職能を受け継ぐ人材の不足に悩む他産業への応用に向けて、様々な検討を進めていく予定です。

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2019年5月29日
電通とISID、職人の能力をAIで継承する「プロジェクト 匠テック」を開始

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担当者:電通 志村 和広/日比 昭道