背景

  1. 2010年(平成22年)の日本経済は、景気回復傾向を維持した。1-3月期の実質国内総生産(GDP)が大きく改善しその後もプラスの成長となったが、10-12月期は減速した。2010年の実質GDPはプラス3.9%で、3年ぶりに前年を上回った。デフレのため名目GDPはプラス1.8%であった。
    GDPの内訳をみると、輸出が中国など新興国向けを中心に回復し、設備投資も改善、さらに個人消費もエコカー補助金、家電エコポイントなどの政策効果や猛暑特需などにより好調だった。しかし、秋以降は、輸出が急激な円高などで減速感を強め、個人消費も9月のエコカー補助金の終了、猛暑特需やたばこ特需の反動減、12月からの家電エコポイントの半減等で弱含みとなった。
    消費関連では、2010年の百貨店の売上高は、高額品や衣料品などの不振により低迷が続いて3.1%減、スーパーも2.6%減と、ともに14年連続のマイナスとなった。コンビニエンスストアは、たばこ増税による駆け込み需要やPB商品の投入で0.8%減とほぼ前年水準を維持。家電は、エコポイント制度の対象となるエアコン、電気冷蔵庫、地デジ対応薄型テレビが好調で、12月からの付与ポイント半減を前にした駆け込み需要が目立った。エアコンは夏の記録的猛暑も重なって大きく伸長、電気冷蔵庫も大型タイプが好調だった。薄型テレビは地デジ買い替え需要も加わって84.9%増と大幅に拡大した。このほか、電気洗濯機、電気掃除機、ブルーレイディスクレコーダーが好調だった。デジタルカメラは、一眼レフが前年の不調から立ち直っている。携帯電話機は、スマートフォン人気が沸騰、既存機種からの買い替えが殺到し、4-9月期の国内出荷台数は前年同期を2倍以上も上回った。パソコンは、個人・法人ともに需要が拡大、2010年の国内出荷台数は前年比17.0%増の1,527万台と過去最高を更新し、出荷金額も単価下落に歯止めがかかったことで、17.0%増と10年ぶりに増加に転じた。国内新車販売は、登録車と軽自動車合計の2010年総販売台数が、前年比7.5%増と6年ぶりにプラスに転じた。エコカー補助金やエコカー減税を追い風に、ハイブリッド車や小型車など燃費効率の高い車種を中心に販売を伸ばした。しかし、9月上旬にエコカー補助金が終了したことで、秋以降の販売台数は急減している。減少が続いていた住宅着工戸数は6月から増加に転じ、2010年の着工戸数は前年比3.1%増となった。マンション発売戸数も、首都圏では6年ぶりのプラスとなった。
    世界経済は、リーマン・ショック後の不況から回復し、米国経済は2010年に実質GDPが2.9%とプラスに転じた。新興国は早くから景気が回復し、中国は10.2%の高い成長を維持した。
    企業収益は、コスト削減や新興国向け輸出の拡大などによって、経常利益がリーマン・ショック前の水準に回復し、売上高も増加した。
    雇用情勢は厳しい状況が続いた。2010年の完全失業率は前年と同率の5.1%だった。有効求人倍率は改善傾向が続いたが、2010年平均で0.52倍と低水準にとどまった。
    円相場は、7月以降は急激な円高に見舞われ、10月には81円台にまで上昇した。
    株価は、景況観の改善により4月は1万1,100円台にまで上昇したが、その後は値下がりして6月には1万円台を割り込んだ。夏以降は急激な円高による景況感の悪化を受け、9,000円台前半にまで落ち込んだが、11月以降はやや持ち直して1万円台に回復した。
  2. 2010年も多彩なヒット・話題商品が市場を賑わせた。食品では、食べるラー油がブームとなった。マスコミに取り上げられたことで需要が急増、品薄状態が続くほどの大人気となった。コンビニ各社が相次いで発売した高級ロールケーキや、猛暑特需でアイスクリームや氷菓が好調だった。飲料では、アルコール度数をゼロにしたビール風味飲料がヒットし、ハイボール人気がウイスキー需要を押し上げた。医薬品では、10月のたばこの値上げにより、禁煙治療薬や禁煙パッチが品薄になるほど需要が増加した。化粧品では、1,000円未満の基礎化粧品ブランドが話題を集めた。トイレタリーでは、すすぎが1回で済む濃縮液体洗剤が前年に続いて人気となったほか、香りのよい衣料用防虫剤が相次いで登場し売り上げを伸ばした。ファッションでは、ファストファッション人気が継続。精密機器では、小型サイズのミラーレス一眼デジタルカメラがヒット商品となった。事務用品では、ノック式の消せるボールペンや、針のないホッチキスが話題を呼んだ。家電では、エコポイント対象3商品の薄型テレビ、エアコン、電気冷蔵庫などが好調だったことに加え、低価格のLED電球や、携帯用電動歯ブラシが人気を呼んだ。また、米からパンが作れるパン焼き器が発売延期になるほど注文が殺到した。自動車では、エコカー補助金やエコカー減税を追い風に低燃費車が堅調だった。ハイブリッド車が好調、電気自動車が市販され話題となった。家庭用品では、電子レンジで魚が焼けるクッキングパックが大ヒットした。情報・通信機器では、スマートフォンが活況だった。6月に発売された「iPhone4」が大人気となったことに加え、秋にはグーグルの基本ソフト「アンドロイド」搭載の新機種が相次いで登場し、一気に活気づいた。また、5月に発売された「iPad」に続いて新機種が次々と投入されたタブレット型端末も注目を浴びた。出版では、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、池上彰氏の『伝える力』『知らないと恥をかく世界の大問題』などがベストセラーとなった。映画では、『アバター』『アリス・イン・ワンダーランド』『トイ・ストーリー3』など、3D映画が人気となった。商業施設関連では、建設中の東京スカイツリーが新名所となった。外食は、ファミリーレストランや牛丼店、居酒屋チェーンなどでは値下げ競争が一段と激化し、低価格メニューの積極的な投入などで売上高は7月以降回復傾向を強めている。旅行は、新型インフルエンザの大流行で手控えた前年の反動もあって、海外旅行、国内旅行ともに回復しつつある。テーマパークは、東京ディズニーリゾートが健闘した。
  3. 2010年の広告環境では、1月 日本航空が会社更生法申請、2月 バンクーバー冬季オリンピック、3月 日本経済新聞「電子版」発行、5月 「iPad」発売、上海万博開幕、6月 サッカーワールドカップ南アフリカ大会、7月 ヤフー・ジャパンがグーグルとネット検索で提携、参議院選挙、8月 日本各地で記録的猛暑、1ドル84円台の円高傾向に、9月 エコカー補助金終了、中国漁船が巡視船に衝突し日中関係が悪化、10月 たばこ大幅値上げ、12月 家電エコポイント半減などがあげられる。