新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費

<新聞広告費>

2010年の新聞広告費は6,396億円、前年比94.9%と推定される。
2010年はバンクーバー冬季五輪、サッカーワールドカップ南アフリカ大会、上海万博等の国際的な大型イベントが開催され、国内でも7月の参議院選挙、APECやCOP10の開催は、企業の広告出稿にプラス要因をもたらしたといえる。しかしながら前年の衆議院選挙関連出稿、エコカー減税をはじめとした景気刺激政策関連出稿の反動減などにより、新聞広告費は漸減傾向にある。
業種別では「食品」「化粧品・トイレタリー」「飲料・嗜好品」などが前年を上回り牽引したものの、「交通・レジャー」「案内・その他」「官公庁・団体」などの減少が響いた。
広告収入の落ち込みは新聞社の経営にも大きな影響を与えており、2010年も業務統合、事業停止、夕刊廃止等の動きがみられた。こうした状況下で、新聞社間の印刷・輸送・編集面での相互提携、他業種とのインフラの共用等によりコスト削減、収益拡大のための事業多角化に取り組む動きが目立った。

<雑誌広告費>

2010年の雑誌広告費は2,733億円、前年比90.1%と推定される。
業種別動向をみると21業種のうち4業種が前年実績を超え、5業種が前年比90%を超えている。特に雑誌広告で大きな割合を占める「ファッション・アクセサリー」が前年比103.1%と雑誌広告の底上げに寄与している。
ジャンル別では「男性コミック誌」「ヤングアダルト男性誌」「育児誌」が前年比100%を超えた。「パソコン誌」「番組・都市型情報誌」以外のその他ジャンルも前年比90%は超えている。
雑誌全体では宝島社などの付録付き雑誌の勢いが目立った。特に『sweet』(宝島社)は、女性誌の底上げの一助となった。なお、付録付き雑誌の発行数は前年と比較して微増傾向。今後もこの傾向はしばらく続くと考えられる。また、『Mart』(光文社)の読者である「Mart族」にも注目が集まり、彼女たちを起用した広告企画などが好調であった。
主な創刊誌は40代向け女性誌の『GLOW』『リンネル』(宝島社)、ギャル向け雑誌『PopSister』(角川春樹事務所)、『EDGE STYLE』(双葉社)、児童向け雑誌『ガクマンプラス』(小学館)、趣味誌『ランドネ』(枻出版社)など。特に『GLOW』『リンネル』は、それぞれ30万部の大型創刊で好調である。
ほかに、不定期刊行ではあるものの、『SPUR pink』(集英社)、『VOGUE girl』(コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパン)、隔月刊誌の『ELLE girl』(アシェット婦人画報社)といった、初心者用モード誌カテゴリーで雑誌が発行され、広告集稿も好調だった。
休刊誌は前年に引き続き老舗雑誌の休刊が相次いだ。主な休刊誌は『小学5年生』(小学館)、『ハーパース・バザー日本版』(HB)、『科学』『学習』(学研)など。創刊点数は近年40年のうち最少の110点で、前年より25点減少、休刊点数は216点で前年より27点増加となった。

<ラジオ広告費>

2010年のラジオ広告費は1,299億円、前年比94.8%と推定される。
ラジオ放送局全体の売上げは低調で、2010年前半は各局とも苦戦した。全体の約半分を担う関東エリアの売上げが全般的に低迷して、全体に大きく影響している。
業種別でみると、「精密機器・事務用品」「交通・レジャー」は出稿が低迷した。反面「化粧品・トイレタリー」「家電・AV機器」「外食・各種サービス」が好調だった。ほかには夏の参議院選挙を受けて、政党などのまとまった出稿があった。まだ出稿規模は大きくはないが、法律事務所の出稿が目につく。
2010年の動向で注目されるのは、2010年12月1日に設立された株式会社radikoがあげられる。普段使用しているパソコンがそのままラジオ受信機として使用できるため、新たな聴取者の獲得のほか、ラジオとネットを組み合わせた企画など、新しい展開が期待でき、ネット関係の出稿も期待される。
コミュニティ放送(243局)は厳しい社会情勢にもかかわらず、広告費はほぼ前年並みとなった。出稿スポンサーが小口化しスポットの売上げが下がるなか、イベントやマルチメディア関連など放送外の収入に伸びがみえる。

<テレビ広告費>

2010年のテレビ広告費は1兆7,321億円(前年比101.1%)と推定される。
内訳は、番組広告費が7,132億円(前年比93.9%)、スポット広告費が1兆189億円(前年比106.8%)である。
リーマン・ショックの影響もあり2009年にテレビ広告全体で2ケタマイナスとなったが、2010年に入り、まずスポット広告が徐々に活況を呈し始めた。インターネット関連企業の出稿が目立った「情報・通信」やエコカー補助金の後押しを受けた「自動車・関連品」などが牽引し、7-9月には前年同期比を大きく上回り、前々年の実績も超えた。
番組広告については、流動的な広告予算投下を志向する広告主の増加もあり、回復は段階的となった。4月改編では前年同期の大きな落ち込みの反動もあり、下落幅が縮小した。また「2010 FIFAワールドカップ」などの大型単発もプラスに働いた。本格的に回復の兆しが示されたのは10月改編であり、スポットの好況を背景として、より安定的に優良枠を確保しようとする広告主が増加したことから、10-12月ではほぼ前年並みまで回復した。懸念されていたCM単価の低減にも、下げ止まりの傾向がみられる。
業種別では「情報・通信」の大幅増が特に目立つほか、従来の基幹業種である「化粧品・トイレタリー」が好調。また「自動車・関連品」についてはスポットが大きく伸長する半面、番組では低下がみられ、政府景気刺激施策による影響が垣間みられる。

●2010年のマスコミ四媒体広告費の四半期別伸び率

2010年(1~12月)のマスコミ四媒体広告費を四半期別にみると、年後半にかけて回復基調が強まり、10-12月期はプラスに転じた。

(前年比、前年同期比、%)

2010年
1-12月
1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
マスコミ四媒体
広告費
98.1 96.6 99.7 94.4 98.8 98.9 100.4

<マスコミ四媒体広告制作費>

2010年のマスコミ四媒体広告制作費は2,825億円、前年比101.1%と推定される。うち、テレビCM制作費は1,870億円、前年比104.6%(注:広告制作費は媒体別広告費に含まれている)。
媒体別にみると、バンクーバー冬季五輪やサッカーワールドカップ南アフリカ大会などの大型スポーツイベントの影響で、年間を通して前年を超えたテレビCM制作の復調が四媒体広告費の増加の要因となった。次いでラジオ・新聞が健闘。雑誌広告制作は一時の不調は回復したが、媒体と歩を共にして前年には及ばなかった。
業種別にみると、シェアの大きな「飲料・嗜好品」「家電・AV機器」「金融・保険」「外食・各種サービス」が好調。一方、「食品」「趣味・スポーツ用品」「交通・レジャー」等が伸び悩んだ。