プロモーションメディア

プロモーションメディア広告費は2兆1,127億円、前年比95.4%と推定される。
4年続けて前年を下回った。「屋外広告」「交通広告」「DM」「フリーペーパー・フリーマガジン」「展示・映像ほか」がいずれも4年連続減となった。「折込広告」は5年連続、「電話帳」は13年連続の減少。前年に唯一増加していた「POP」も減少して、内訳のすべてがマイナスとなった。
2011年は景気の足踏み状態を脱し、緩やかではあるが回復基調が想定され、全般的に海外経済も良好で次第に上向きになると考えられていた。しかし、東日本大震災以降の出稿キャンセルや自粛、徐々に景気回復の兆しがみられるかと思われた年後半も、ギリシャの債務問題に端を発したユーロ圏の財政危機が顕著化するなどの影響により、広告主各社の予算削減、行政予算の見直しなどが行われ、厳しい状況が続いた年となった。
プロモーションメディア広告の費用対効果が一段と求められ、全般にデジタル化、インターネットとの連動などが一層顕著になってきた。

屋外広告は2,885億円、前年比93.2%。広告板は、東日本大震災による節電の影響を受けて消灯していたことから、前半は広告主に自粛ムードが波及し、新規出稿見送りや無照の広告板設置の動きがみられ、特に製作費に影響が大きく出た。
ネオンは、東日本を中心とした節電の影響で消灯が続き、新規製作や改修の見送りが発生し、製作費に大きな影響が出たが、節電を目的としたLED活用の動きもみられた。
ロードサイドボードは、例年同様の飲料、海外自動車メーカーに加え、年後半にはスマートフォンの大型出稿が目立った。自動車では海外メーカーが牽引し国内メーカーも少しずつではあるが復活の兆しがある。繁華街ボードについては、「音源」「エンタメ」「飲料」が牽引し、枠自体は比較的堅調だったものの掲出時期直前での発注となることが多かった。これらのことから、前年比で微増であった。
広告幕は、年後半から回復傾向で、年間では引き続き好調に伸びた。都心では、引き続き「アパレル」「音源・エンタメ」の出稿が中心で、短期のキャンペーンやエンタメ系の告知に利用されて好調だった。
屋外ビジョンは、東日本大震災により国内クライアントの出稿自粛、節電等による媒体側の自粛の影響を受け、結果として2011年は前年比約20%の減少となった。年前半に関しては非常に厳しい結果となった。一方で外資系企業からの出稿が4月以降に復調し、9月以降は年前半の出稿自粛の反動で国内の「ゲーム」「アパレル」「音源」「映画」などを中心に出稿が復調しており、都内主要媒体では前年比6倍近くの売上げがある媒体も出てきている。また、初めて大型ビジョンを利用する広告主も例年に比べ非常に増えた一年であった。震災の影響を受けて、厳しい一年ではあったものの、屋外広告物としてではなく、有事の際の貴重な情報発信源として、地域行政と協力してマニュアル作成を始める媒体が増えてきている。
スタジアム看板は、年間契約の媒体が多く、新規広告主は少ないものの震災の影響で辞める広告主も少なく、ほぼ横ばいであった。球場については、ゲームごとの協賛、オールスターゲーム、クライマックスシリーズ、日本シリーズに伴うスポット出稿は比較的好調であった。
商業施設は、2011年秋に有楽町駅周辺に商業施設店が開業し、館内および館外に目立った屋外広告媒体が設定されなかったものの、既存の出稿は増えてきている。ショッピングモールでの媒体掲出については、全国規模の商業施設のみならず、ローカルエリアのショッピングモールなどでみられ、前年に続き裾野の広がりが感じられた。また、デジタルサイネージについては、流通が主体となって各店舗に設置展開しているいくつかの媒体で堅調に出稿され始めてきている。都内の大型商業施設でのクリスマスイベント協賛は、比較的堅調に推移した。

交通広告は1,900億円、前年比98.9%。2010年の後半から2011年1月、2月まで、交通広告は回復基調にあったが、3月の東日本大震災の影響により3月、4月、5月に出稿キャンセルが相次ぎ、厳しい状況に陥った。飲料を中心とした大型キャンペーン出稿が6月から始まり、6~9月は好調となったが、前年のエコポイント対象業種の出稿減、2010年10月に開業した羽田空港国際線のような大型交通施設の新設がなかったことや円高や海外の自然災害などの影響により、2011年10月以降の出稿は減少傾向となった。
地域別のトピックスでは、九州新幹線が2011年3月12日に博多までの全線が開業し、山陽新幹線経由で新大阪駅まで乗り入れとなった。九州新幹線開業に伴い博多新駅ビル(JR博多シティ)が3月3日に開業した。大阪ステーションシティが開業し、大阪駅エリアを含む駅全体が5月4日に開業した。
業種別では、「自動車」「化粧品・トイレタリー」「事務用品」「住宅設備」が増加となった。一方、「エネルギー」「精密機器(カメラ・時計)」「飲料・嗜好品」「情報・通信」といった業種が減少となった。
車両サイネージ媒体は好調な売れ行きとなったが、駅サイネージ媒体は震災以降の節電意識の風潮が高まり、販売が低迷した。長期掲出が可能な1週間中づり、長期まど上、ステッカーなどは比較的好調だった。
バス部門の交通広告は、新設できる広告枠を作りにくい媒体であるため、横ばい傾向にある。既存広告主の出稿減少や車外広告・ラッピング広告の伸び悩みが響いている。
空港広告は、震災の影響により、新規クライアントの出稿が低迷したが、デジタルサイネージ媒体の整備が進んだ。
タクシー広告は、一部のタクシー会社で、車内パンフレットや車内サイネージ媒体を強化したものの、全体ではほぼ横ばいであった。

折込広告は5,061億円、前年比95.9%。東日本大震災前の1月、2月は前年比で回復基調にあったものの、震災の影響を強く受け、3月、4月は大幅に出稿が落ち込んだ。しかしながら、地域、業種によっては前年をクリアし、出稿が大きく伸びている業種も出始めた。業種によって前年比がプラス、マイナスとバラつきが出たほか、地域別においても、震災の影響により出稿量の差がみられた。
震災の影響を受け、3月は全国的に大幅な出稿減となったが、6月以降首都圏、中部、関西、九州を中心にマイナス幅が縮小した。2011年秋以降、それまで出稿減が続いていたスーパーや百貨店等の流通業においても回復基調にあり、前年を上回った月もみられた。震災の影響度合いが小さい中部、関西、九州においては、年間では前年を上回る地域もあり、出稿減少が続いていた前年から回復傾向がうかがえる。通販業種においては、震災の影響を考慮して、配布計画を中部圏、関西圏等に振り分けるといった事例もみられた。
地域別動向を左右する要因として、8月以降、広告規制強化が行われた遊技場(パチンコホール)の出稿減がある。全国平均でパチンコホールの出稿割合は折込全体の10%程度となっているが、出稿割合が高い地域ほど苦戦する形となり、中部を始め、北海道、関西、首都圏等でこの業種での10~20%弱の出稿減が響いた地域も多い。
2011年も2010年に引き続き、業種による違いが出た年である。中高年・シニアをターゲットとした「宅食」、学習塾に代表される「塾・予備校・教養」、2007年から出稿減が続いていた「求人連合」などが5~10%程度の堅調な伸びを示した。また、折込出稿の大きな割合を占める流通業については、好調と不調が分かれるものの、「ホームセンター」「ディスカウントストア」等が震災による防災意識の高まりの影響もあり、堅調に推移した。そのほか、「通販(健康食品など)」は引き続き堅調な出稿がみられた。不動産については、首都圏、中国、九州等で下げ止まり、回復の動きが出てきたものの、地域によっては出稿が引き続き減少傾向のエリアもあり、地域ごとでバラつきがある業種といえる。

DMは3,910億円、前年比96.0%。2011年は、3月の東日本大震災以降にDM発送を自粛する風潮が広まったため、予想したほどの伸びを示さなかった。また、郵便法で規制されている信書の取り扱いを巡り、業界内でコンプライアンスを重視する動きが起こり、その結果信書に該当するものを取り扱わないなど各社で対応がみられ、通数を押し下げる要因ともなった。消費者の節約意識の高まりを背景にして封書からハガキへ移行する動きが続き、通信会社の利用明細やカード会社からの請求明細を利用するユーザーが一部WEB上での照会に移行する傾向もみられた。また、メール便の単価の引き下げが進行したこともあり、全体としてDM広告費が減少する結果となった。
一方で、ダイレクト系のコミュニケーションは引き続き増加傾向にあり、冊子やカタログを配布するなどして、「健康」や「旅行関連」の商品を扱う「通販業界」がシニア層を囲い込むなど堅調だった。顧客とのリレーションを高める会員情報誌のニーズも高く、顧客への継続的なダイレクトコミュニケーションの有効性が広告主に認識されつつあり、今後その重要性がさらに増してくると思われる。

フリーペーパー・フリーマガジンは2,550億円、前年比96.6%。東日本大震災の影響があったものの後半には回復傾向がみられ、2011年は、2010年の前年比91.6%から減少幅が縮小した。業種別にみると、「住宅・不動産」「食品・薬品・化粧品」「求人情報」等は堅調であったが、「グルメ・飲食業」「旅行・ホテル」「ショッピング」等の業種が減少傾向にあった。
生活者の購買に近いフリーペーパー・フリーマガジンだが、紙媒体からWEBコンテンツに移行するケースも増えており、幾つかの成功事例も出てきている。他媒体との競争や広告主の出稿減による休刊・廃刊、発行の縮小が引き続き目立つものの、一方では地域に根ざした媒体として、読者の定着化や広告主の広がりなどで堅調に伸びている発行社がみられる。WEB媒体などとの連動やイベント企画など積極的な活動をして成功している例もみられる。

POPは1,832億円、前年比99.6%。東日本大震災以降、社会状況の混乱や、厳しい経済の低迷による製造業・流通業への影響、さらに節電による生活者の買い控えなどの消費意識低迷による広告主企業の販売促進キャンペーン・プロモーション活動の中止や延期などが大半を占めた。このことは本来購買時点訴求の役割を担っているPOP広告において、店内プロモーション活動の減少がPOP広告費の減少に大きく影響したと考えられる。このような状況下において、広告主企業の販促費の縮小や見直しが行われ、費用対効果に重点を置いた効率的で、妥当性のあるPOP広告が求められた。なかでも店頭で購買の最終意思決定を促す従来の広告主企業から顧客に向けたコミュニケーションツールとしてだけでなく、流通・店舗単位で高い収益性を得られる装置としての機能検証が必要となってきた。
昨今のGMS(総合スーパー)・家電量販店・ドラッグストアなどにおけるプロモーション活動は、メーカーから流通へのトレードプロモーションの強化と、購買データをもとに地域や顧客の特性を視野に入れた店舗支援、オペレーション型のオンデマンド販促(チラシ、POPなど)の運用による合理的で売上・収益とマッチングした販促手法やPOP効果が定着してきた。また、マス媒体、インターネット、モバイル等のコミュニケーション手法を戦略的に組み合わせながら、コンタクトポイントである店頭、商品に誘動し、最終購買につなげる動機付け情報、効用に重点を置いた顧客形成型POP広告が目立った。

電話帳広告は583億円、前年比88.1%。1999年から13年連続して減少した。長引く景気低迷のなか、前年より減少率が改善したものの厳しい結果となった。
なお、広告主及び利用者のニーズを充足するために展開しているインターネットによるサービスについては、前年を上回る成果があった。

展示・映像ほかは2,406億円、前年比91.3%。2011年は東日本大震災以降、広告主各社の展示会等の出展中止や予算削減、企業によるプライベートイベントなどの中止・延期が相次ぎ、展示・映像は厳しい状況が続いた。展示会・イベントの開催数の減少、規模縮小に加え単価下落、価格競争の激化が大きく反映した。
自動車業界、家電業界などの基幹産業については、エコカー減税、家電・住宅エコポイントの施策もひと段落したうえに、円高、タイ洪水被害などで輸出関連企業に大きなダメージがあり、展示・映像の大幅な減少傾向となった。携帯電話業界は、SNSへの需要が増加し、スマートフォンへの移行とともに広告主各社の売上競争が過熱した状況であったが、展示関連業界にとっては売上げの増加に至らなかった。また、官公庁や自治体に関しても、前年からの事業仕分けの影響で予算削減、公共施設物件の減少、採算性の見直しなどにより展示・映像の低迷状態が続いている。年後半には、東京モーターショーが東京ビッグサイトで初めて開催され、展示・映像業界にとって業績回復のきっかけになると思われたが、出展各社の予算縮小、単価下落により状況は厳しかった。
映像に関しては、特需的な要素もなく、前年同様に売上減少が続いている。同業各社との競争が激化するなか採算性を維持し利益を確保する企業努力が課題となって、企業間の格差拡大が目立ってきている。2011年の映画興行収入は前年の約82%であった。入場者数も前年比83%となった。これは3月に起こった震災の影響だけでなく、目立ったヒット作に恵まれなかったことも大きな要因である。このような状況の中、映画広告費も約15%程度減少したと推定される。震災の影響により春休み時期にキャンセルが相次ぎ、最需要期である夏休み作品まで大きな打撃を受けた。出稿量が激減するとともに、一回あたりの出稿金額も少額のものが目立った。これは映画広告が売場に近いプロモーションメディアという位置付けをされており、震災による広告活動の自粛はもちろん、流通網が整わない消費財各社が販促費をセーブした結果と考えられる。また、増加すると予想されていた3Dシネアドは数社の出稿に留った。夏以降は状況が緩やかに改善され、通信や自動車などのナショナルクライアントを中心に引き合いが少しずつ戻ってきた。新規出稿企業も、外資系通信やパチンコ、外食産業、健康補助食品など多く見受けられた。

媒体別構成比

媒体別構成比のイメージ