背景

  1. 2014年(平成26年)の日本経済は、4月の消費税率引き上げ(5%→8%)を機に暗転した。
    1-3月期は駆け込み需要などによって前期比1.3%(年率換算5.5%)増と好調だったが、4-6月期がその反動と増税に伴う実質所得減などの影響により、同1.7%(同6.7%)減のマイナスとなった。個人消費や住宅投資、設備投資が揃って落ち込んだことに加えて、輸出も前期割れとなるなど内需、外需ともに不振だった。さらに、回復が期待されていた7-9月期も、天候不順などで伸び悩み同0.6%(同1.9%)減と、2期連続マイナス成長となった。しかし、10-12月期は持ち直し同0.6%(同2.2%)増で、3期ぶりにプラス成長、2014年のGDP成長率は実質で0.0%、名目で1.7%増となった。
    一方、上場企業の収益は、2014年度上期(4-9月期)の全産業売上高(金融を除く)が前年同期比5.1%増、連結経常利益が10.3%増と堅調を維持。さらに14年度通期(15年3月期)は、全産業売上高が前期比3.6%増、経常利益が2.5%増、経常利益に関しては、リーマン・ショック前の08年3月期の過去最高益に迫る見通しである。円安によって、自動車などの業績が好調で、小売業などの低迷を補う構図となっている。
    雇用情勢は、前年からの改善傾向が続いた。完全失業率は3.5%水準で推移。有効求人倍率は1.12倍前後となった。
    円相場は、円安が一段と進んだ。月中平均で1月に1ドル=103円台でスタート、秋にはアメリカ経済の回復傾向を受けて107~108円台にまで円安が進行、10月31日に日本銀行が追加の金融緩和を発表したことから、11月は116円台と一気に円安が進展。年末(12月30日)終値は119円79銭と前年末に比べ14円以上の円安となり、リーマン・ショック前の水準を超えた。
    株価は、円安好感から秋以降、上昇に転じた。日経平均は月中平均で1月に1万5,578円でスタート、その後上下動を経て、年末終値は1万7,450円と前年末比の上昇率が7%となった。
    原油価格は、秋から年末にかけて急落した。欧州や中国経済の減速に伴う需要低迷やアメリカのシェール・オイル増産などで供給過剰感が高まったためと思われる。
  2. 消費関連では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストアの売上高はいずれも、消費税率引き上げ後の反動減、実質所得の減少や天候不順などが要因のひとつと考えられる個人消費の減退などが響いて、11月までの統計では4月から8ヵ月連続で前年を下回った。家電は、主力のエアコン・冷蔵庫・洗濯機・掃除機の1-11月の国内出荷台数が揃って前年同期割れとなった。ただし、出荷金額は比較的高価格帯の商品が健闘し、前年同期比0.2%増と、前年水準を維持した。AV機器は、1-11月の国内出荷金額が2.6%減と低迷が続いているが、減少率は前年同期に比べ縮小した。薄型テレビの1-11月の国内出荷台数は1.8%増とプラスに転じた。ブルーレイレコーダー/プレーヤーも0.4%増とわずかながらも前年を上回った。デジタルカメラの1-10月の国内出荷台数は、レンズ一体型が28.0%減、これまで堅調だったミラーレスを含むレンズ交換式が16.7%減、全体で24.8%減と振るわなかった。携帯電話端末は4-9月の出荷台数が前年同期比4.1%減の1,578万台、このうちスマートフォンは1,050万台で13.7%減と大幅な前年割れとなった。14年度通期は、総出荷台数が前年度比10.4%減の3,530万台、うちスマートフォンは15.2%減の2,510万台に対して、ガラケーは4.0%増の1,020万台となる見通しである。パソコンは4-9月の出荷台数が前年同期比2.7%減の672万台だが、円安による部品価格の上昇で出荷金額は9.8%増の5,367億円となった。タブレット端末は4-9月の出荷台数が前年同期比20.8%増の413万台と堅調で、14年度通期は前年度比21.7%増の910万台に達する見込み。国内新車販売は、4月以降は低迷したが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要で年間販売台数は前年比3.5%増と堅調だった。軽自動車が7.6%増と好調だった。住宅着工戸数は、駆け込み需要の反動減が続き、11月までの統計で9ヵ月連続の減少となり、1-11月の累計着工戸数は前年同期比8.4%減となった。マンション発売戸数も首都圏、近畿圏ともに低調。旅行は、消費マインドの減退などで国内、海外のいずれもやや低調だったが、訪日外国人数は円安による割安感などで大幅に増加、年間1,300万人を突破し過去最高を更新した。テーマパークは、新エリアが大人気となり、入園者数を大きく伸ばした。外食は、ファミリーレストランとディナーレストランの売上高が堅調だったが、ファストフードと居酒屋は低調が続いた。
    2014年は多彩なヒット・話題商品が登場。【食品】では、「クロワッサンドーナツ」を、コンビニ各社などが発売、いずれも売れ行きを伸ばした。カップ麺では、生産が追いつかないほどのヒット商品「アジアン風ヌードル」もあった。この他、太らない甘味料「希少糖」の関連食品・飲料、ドライフルーツ入りのシリアル食品も、女性層の支持を集めた。【飲料】では、2つの効能を同時に得られる特定保健飲料など「機能性茶系ドリンク」がヒットした。またそのまま飲む「炭酸水」も、人気だった。アルコール関連では、健康志向を背景にプリン体ゼロ・糖質ゼロの発泡酒が話題を集め「機能性ビール」という新市場が誕生。また、高価格帯のプレミアムビールが引き続き、好調を維持した。【医薬品】では、高価格帯ながら速効性を前面に打ち出した「頭痛薬」が健闘した。【化粧品・トイレタリー】では、上下の唇を同時に塗ることができる「球状リップクリーム」が人気となったほか、男性需要を取り込んだシャンプーもヒットした。女性向けの制汗剤や、ミドル男性向けにシャンプーからスプレーまで揃えた脂臭対策シリーズ商品も好調。また、ジェル状衣料用洗剤がヒット。粉末でも液体でもない「第3の洗剤」として新カテゴリーを構築した。【精密機器・事務用品】では、「腕時計」が前年に続いて好調。購入意欲の高い外国人旅行者の増加が追い風となった。その他、消せる色鉛筆や小学生向け低価格の万年筆が若い女性に受け、ヒット商品となった。【家電・AV機器】では、マットもホースもなく靴も乾かせる布団乾燥機や、折り畳み式マッサージシート、本格的なティーメーカーや自動製麺機など斬新な発想の新製品が人気。さらに、高額ながら、きれいなカールを短時間でつくることができるヘアアイロンが女性層の支持を集めた。高音質の音源であるハイレゾがオーディオマニアを中心に浸透、ハイレゾ対応の携帯音楽プレーヤーや音楽配信サイトなども話題を呼んだ。また、4Kの試験放送もあって、4Kテレビ需要が拡大。【自動車】では、クロスオーバーSUVやクリーンディーゼルエンジン搭載車などが販売台数を伸ばした。燃料電池自動車も、ついに登場。【家庭用品】では、高機能マットレスが好調。【ゲームソフトなど】では、「妖怪ウォッチ」が大ブーム。3DS向けゲームソフトや関連玩具の「DX妖怪ウォッチ」、「妖怪メダル」が爆発的な売れ行きとなり、年末公開映画の前売り券も空前の販売を記録し、社会的現象となった。ゲーム機は、「プレイステーション4」が発売され、注目を集めた。【健康機器関連】では、「簡単・腹筋フィットネスマシン」がヒット商品となった。【情報・通信】では、「iPhone6」などが発売され、好調。また「格安スマホ」も、主婦やシルバー層などの支持を獲得した。オンラインゲームは、アクションRPGの「モンスターストライク(モンスト)」やディズニーストアのぬいぐるみ「TSUM TSUM」をモチーフにした「LINE:ディズニーツムツム」が大ヒット。このほか、著名作家の新作などを無料で読める「漫画雑誌アプリ」が人気を呼んだ。【映画】は、アニメ『アナと雪の女王』が興行収入254億円と歴代3位の大ヒット。歌も踊りもネット動画などで世界中に広まる話題作となった。