背景

1.持ち直しつつある日本経済

当初予定されていた2017年4月の消費増税前の駆け込み需要はなくなったものの、大変緩やかではあるが景気は持ち直し続けた。2016年1-3月期の実質GDP成長率は前期比0.6%(年率換算2.3%)増、4-6月期は0.4%(同1.8%)増、7-9月期は0.3%(同1.4%)増、10-12月期は0.2%(同1.0%)増と、4四半期連続でプラス成長を維持した。先行き不透明感により個人消費、企業の設備投資ともに伸び悩んだ。一方、住宅投資は堅調に推移した。また、輸出は円高や中国経済の減速などで4-6月期は落ち込んだものの、それ以降は持ち直した。自然災害などの影響もあり、農作物の価格が高騰するなど家計にインパクトのある状況が続いた。年末にかけては、アメリカ大統領選に伴う保護主義の台頭が世界経済の行く末に不確定要素の多い時代の予感をもたらした。政府は約28兆円の経済対策を行っており、公共投資の増加による景気押し上げファクターとなった。
2016年のGDP成長率は、実質で1.0%、名目で1.3%だった。(2017年2月13日四半期別GDP1次速報より、年率換算)

企業収益は減益傾向

企業収益は、全般に円高による減益傾向であった。
好調が続いた企業業績は悪化した。上場企業の収益は、2016年4-9月期の全産業売上高(金融を除く)が前年同期比6.3%減、経常利益が12.3%減、最終利益が10.9%減。円高の影響で製造業を中心に低迷した。

雇用環境はさらに好転

雇用情勢は一段と改善した。月平均完全失業率(季節調整値)は1月から6月にかけて3.2%前後、7月から11月にかけては3.0~3.1%で推移。11月の完全失業者数は205万人と低水準を維持した。有効求人倍率も1月の1.28倍から改善が続き、11月には1.41倍にまで上昇、1991年7月以来、25年4ヵ月ぶりの高水準となった。就業者数、雇用者数ともに増加傾向だった。また、雇用者報酬も実質プラスで推移した。

円高基調・株価軟調・原油高傾向

円相場は、アメリカ大統領選後の円安を除いては通年で円高基調であった。年平均で約108円程度。
株価も大統領選後上昇したものの、年末終値(12月30日)は前年末比80円高の1万9,114円。
原油価格は緩やかに持ち直し傾向にあり、一時110円~120円で推移したレギュラーガソリンの全国平均価格(店頭価格)も年末(12月26日)には年間での最高値となる130.3円となった。

2.国内消費関連~消費マインドは低迷、住宅着工は好調

消費関連では、将来不安などの影響もあるためか消費マインドの低迷が続いた。○流通でみると、百貨店の年間売上高が前年比2.9%減(既存店ベース)と2年連続の前年割れ。宝飾品などの高額品や衣料品などが低調、訪日外国人客向けの免税売上高も減少した。スーパーも0.4%減となり、2年ぶりにマイナス。食料品は好調だったが、衣料品などが苦戦した。一方、コンビニエンスストアは0.5%増と2年連続のプラス。コンビニの総菜類などが健闘した。○家電業界では、主力のエアコン、電気冷蔵庫、電気洗濯機の増加で白物家電の国内出荷金額は4.6%増と堅調に推移。4KテレビやカーAVCを含むAV機器も、4-12月の国内出荷金額は前年同期比3.5%増だった。○自動車の国内新車販売台数は、年間合計で前年比1.5%減の497万260台だった。東日本大震災があった2011年以来5年ぶりに500万台を下回った。前年に引き続き軽自動車が9.0%減の172万5,462台と低迷。○携帯電話端末は、4-9月の出荷台数が前年同期比10.9%減の1,518.8万台、このうちスマートフォンは8.4%減の1,216.8万台、フィーチャーフォンが19.7%減の302万台だった。パソコン販売は、4-9月の出荷台数は2.3%増の485.2万台だったが、2016年度通期では前年度比1.0%減の980.2万台の見込み。タブレット端末は4-9月の出荷台数が13.0%減の388万台、年度通期で3.7%減の870万台の見通し。○デジタルカメラも1-11月の国内出荷台数は、レンズ一体型が前年同期比32.9%減、レンズ交換式が23.6%減、全体で29.8%減と大幅に減少した。○住宅着工戸数は、住宅ローン金利の低下を追い風に増加傾向が続いた。新設年間着工戸数は前年比6.4%増と2年連続のプラス。特に貸家が10.5%増と好調。相続税対策に加えて、低金利が続くなかでの投資先として注目された。一方、マンションの発売戸数は都市圏を中心に価格上昇などが響いて低調。○旅行は、1回あたりの平均消費額は減少したものの国内旅行、海外旅行のいずれも堅調に推移した。円安で伸び悩んでいた海外旅行者数が円高で増加。訪日外国人数は前年比21.8%増の2,403万9千人と過去最高を更新した。○訪日外国人の国内消費額は円高の影響などで一服し、年間国内消費額は3兆7,476億円と過去最高となったものの、増加率は7.8%増と前年(71.5%増)を大きく下回った。○外食は堅調。年間売上高は2.8%増(全店ベース)と2年連続で増加した。低迷続きのファストフードが洋風、和風ともに回復、ファミリーレストランと喫茶が安定した売上げを確保し、ディナーレストランも好調を維持。○映画は興行収入が8.5%増の2,355億円となり、3年連続の増加。2000年以降では最高となった。大ヒットした「君の名は。」や「シン・ゴジラ」など邦画の好調が目立った。

3.ヒット・話題商品など

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