背景

1.緩やかな景気拡大が続いた日本経済

2017年(平成29年)の日本経済は、緩やかな景気拡大が続いた。1-3月期の実質GDP成長率は前期比0.3%(年率換算1.2%)増、4-6月期が0.6%(同2.5%)増、7-9月期が0.6%(同2.2%)増、10-12月期が0.1%(同0.5%)増と、8四半期連続のプラス成長を維持した。結果、年間の実質成長率は1.6%増と、6年連続のプラス。景気の牽引役は設備投資と輸出だった。設備投資は5四半期連続のプラスと堅調に推移。輸出は、世界経済の回復や円安を背景に6四半期連続の増加と好調だった。一方、個人消費は、雇用環境の改善に伴い消費マインドは回復するも、天候不順の影響も受けて弱含み。住宅投資も住宅着工件数が貸家を中心にピークアウトしていることが影響し7-9月期から2四半期連続で減少、公共投資も前年度の補正予算の執行による押し上げ効果が一巡し10-12月期はマイナスとなった。
2017年のGDP成長率は、実質で1.6%、名目で1.4%だった。(2018年2月14日 四半期別GDP 1次速報より)

企業収益は好調。通期の最終利益は過去最高の見通し

上場企業全般として、収益は、円安と米国税制改革に伴い好調に推移したと言える。2017年4-12月期の全産業売上高(金融を除く)が前年同期比9.0%増、経常利益が19.5%増、最終利益が35.0%増と好調だった。最終利益は23兆6,364億円に達し、4-12月期として過去最高を更新。円安を追い風に特に製造業が好調、非製造業も健闘した。4-12月期の業績を受け、17年度通期(18年3月期)は全産業売上高が前期比6.9%増、経常利益が12.7%増、最終利益は30.1%増の見込み。最終利益は28兆6,810億円と過去最高となる見通し。(日本経済新聞社調べ 2018年2月16日朝刊)

雇用環境は改善が続く

雇用情勢はさらなる改善が続いた。2017年の年間平均の完全失業率は2.8%と前年に比べ0.3ポイント低下し7年連続で改善した。12月の完全失業者数は174万人で前年同月に比べ19万人の減少、91ヵ月連続の減少となった。一方、17年平均の有効求人倍率は1.50倍と前年比0.14ポイント上昇した。正社員の有効求人倍率は6月に1.01倍と調査開始以来、初めて1倍を超えた。6月以降は7ヵ月連続で1倍を超え、12月は1.07倍だった。

円安基調・株価好調・原油高基調

円相場は円安基調が続いた。年間を通して概ね110円台超で推移。最終日は112円64銭。
株価は好調。11月上旬には1992年1月以来、約26年ぶりの水準となり、バブル崩壊後の最高値を更新。12月25日には年初来最高値の2万2,939円を付けた。
原油価格は、主要産油国の協調減産が2017年1月から開始されたことで持ち直した。ドバイ原油価格は概ね50ドル台で推移。11月には60ドルを超えた。国内の石油製品も値上がりし、全国のレギュラーガソリンの平均店頭価格は、11月下旬以降は140~142円/リットル台と高い値動きとなった。

2.国内消費関連~インバウンド消費が再び増勢に

消費関連では、天災や将来不安などにより個人消費の伸びは弱含みだったが、好調な雇用環境を反映して消費マインドは2017年後半に持ち直した。○流通では、百貨店の年間売上高が前年比0.1%増と3年ぶりにプラスへ転じた。インバウンド消費が増加したうえに、株高などによる資産効果で高額品の売れ行きが好調だった。一方、スーパーは0.9%減と2年連続の前年割れ、天候不順で青果や衣料品などが低迷した。コンビニエンスストアは惣菜などが好調だったが、0.3%減と3年ぶりの前年割れとなった。○家電業界では、エアコンや洗濯機などが好調の白物家電の国内出荷金額が前年比2.0%増と伸長。一方、AV機器などの黒物家電は1.8%減となったが、4Kテレビは増加した。○自動車の国内新車販売台数は、無資格検査問題による出荷停止も影響したが、年間合計では前年比5.3%増の523万4,166台と3年ぶりに前年を上回り、500万台を超えた。特に、軽自動車が6.8%増の184万3,342台と持ち直した。○携帯電話端末は、年間の出荷台数が前年比3.6%増の3,735.4万台、このうちスマートフォンは8.7%増の3,199.4万台と過去最高を更新、フィーチャーフォンは19.3%減の536万台で過去最低となった。パソコン販売は、4-9月の出荷台数が前年同期比1.6%増の492.8万台と2年連続で増加。17年度通期は前年比2.0%増の1,031.3万台の見込み。タブレット端末も、年間の出荷台数が前年比1.4%増の863万台と前年の落ち込みから上向きに転じた。○デジタルカメラの年間の国内出荷台数は、レンズ一体型が前年比2.9%増、レンズ交換式が5.0%減、合計では前年水準にとどまったが、出荷金額ベースでは、レンズ一体型が8.1%増、レンズ交換式8.3%増と持ち直した。高機能機種が伸び、10万円超の高級ミラーレス一眼カメラの売れ行きが好調だった。○住宅着工戸数は、これまで順調だった持家が減少、貸家も伸び悩んだため、前年比 0.3%減と3年ぶりの減少。全国のマンションの発売戸数は、0.5%増と4年ぶりに増加した。○旅行は、日本人の国内旅行、海外旅行ともに好調。さらに、訪日外国人数は増加基調が続いており、2017年は19.3%増の2,869.1万人だった。インバウンド消費額は、1人あたりの消費額は減少したものの、円安を背景に全体では前年比17.8%増の4兆4,161億円となり、5年連続で過去最高を更新。○外食は堅調。年間売上高は3.1%増(全店ベース)と3年連続の増加だった。ファーストフード、ディナーレストラン、喫茶などが健闘。

3.ヒット・話題商品など

2017年のトレンドキーワードは、「インスタ映え」だった。思わず写真や動画で見せたくなる商品やサービスが急増、スタイリッシュなパッケージデザインを重視したチョコレートがヒットするなど、「インスタ映え」は様々なヒットやサービスを生み出した。また、前年に続き、未来志向の先進的な商品・サービスも人気を呼んだ。携帯機としても使える据え置き型ゲーム機のヒット、多くの来場者を集めたVR体験施設、客席が360度回転するシアターなど。さらに、完全ワイヤレスイヤホンも売れ行きを伸ばし、スマートスピーカーも年末までに有力メーカーから相次いで発売されるなど、注目を集めた。加熱式たばこもヒット商品が登場し、市場拡大が継続。そして、高齢化や長寿に留意した商品も話題となった。