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SIPS ~来るべきソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念~

(※)本レポート内容、および電通モダン・コミュニケーション・ラボのメンバーは2011年1月時点のものです。

(※)「AISASはなくなるのか」「マスメディアはいらなくなるのか」というお問い合わせがあるので、簡単に冒頭で書いてみたい。
まず、AISASはなくならない。SIPSはあくまでもソーシャルメディアが十分に浸透した時点での、ソーシャルメディアに関与が深い生活者の行動モデルの考え方であり、AISASにとってかわるモデルではない。
また、マスメディアは、以下の(6)でも言及したが、ソーシャルメディア時代、いまよりもより力を強めると考えている。ソーシャルメディアとマスメディアは対抗軸ではなく、相乗作用で高めあうものと考えている。

電通モダン・コミュニケーション・ラボ
佐藤 尚之、金田 育子
京井 良彦、信澤 宏至、茂呂 譲治
橋口 幸生、宮林 隆吉、貝洲 岳洋

1)はじめに

ここ数年、ソーシャルメディア(Twitter、Facebook、mixiなど、人と人のつながりによって出来上がるメディア)の普及が世界的に進み、日本でも無視できない存在になってきた。また、スマートフォンの普及により、モバイル環境でのネット活用、特にソーシャルメディアの活用が伸びている。
今後、日本でもこのままの勢いでソーシャルメディアが普及し続けた場合、コミュニケーションの方法も大きく変化していくことが予想される。
次世代のコミュニケーションを考察する場である「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」(※1)では、これからのソーシャルメディアが主流となる時代の生活者消費行動を『共感する : Sympathize → 確認する : Identify → 参加する : Participate → 共有・拡散する : Share & Spread』とシンプルに整理し、その考え方を略して「SIPS」と名付けた。


S(Sympathize : 共感する)  (※2)
I(Identify : 確認する)
P(Participate : 参加する)
S(Share & Spread : 共有・拡散する)

SIPS

この生活者行動モデルへの変化により、広告は共感(Sympathize)を重視する方向へと変化していくであろう。また、購買行動を広く企業の活動への参加(Participate)と考えること、そして情報伝播の変化を拡散(Spread)と捉えるのもこの考え方の特徴である。

2)背景 ~ソーシャルメディアが広告コミュニケーションにもたらすふたつの大きな変化

ソーシャルメディアの普及はふたつの大きな変化を広告コミュニケーションに及ぼすだろう。

① 情報の伝わり方の変化

マスメディア全盛の時代は、新聞・雑誌・ラジオ・テレビに加えて屋外交通広告・チラシ・店頭媒体など利用することで、発信者サイドのメッセージを生活者へ届けるシンプルな構造であった。
しかし今日、インターネットの普及拡大によりその構造が変化した。インターネットにより、視聴者は主体的に情報を検索したり共有発信することが容易にでき、マスメディアに加えてもうひとつの情報入手経路を得たことになる。
あらゆる伝送路・コンテンツ・デバイスがデジタル化し、インターネットが双方向の情報のやり取りを可能にしたことが相まって、生活者が日常触れる情報量は幾何級数的に拡大したのである。

マスメディア全盛の時代、情報は「お茶の間」というプラットフォームを通じて男女全世代に伝播した。
家庭のお茶の間に老人から子供まで男女全世代が集い、そこがクチコミ源となった。マスメディア、特に新聞とテレビは、お茶の間に情報を伝え、男女全世代はそこで同じ情報に触れ、意見交換が行われた。そしてその情報は、各世代の外での「つながり」(会社、学校、井戸端など)に一気に拡散した。

都会を中心にお茶の間が崩壊するに従い、その構図も崩れ始めた。
生活者は、男女そして各世代ごとに細かく分かれ、それぞれ個別に違う情報に触れるようになった。インターネットの登場はそれを助長した。情報は各世代用に最適化され、メディアの細分化・セグメント化が進んだ。ネット上ではコミュニティが形成され、同じ趣味や考えを持つ同士の集まりができるようになったが、それらが交わることはほとんどなかった。情報が広く共有されることが減り、個々に別々の情報を持って情報洪水の世の中を渡り歩いて行かざるを得なくなった。

ソーシャルメディアの出現はそれを根本的に変えようとしている。情報伝播のコアが、世代から「友人・知人とのつながり」へと移行し始めているのである。

ソーシャルメディアには「友人・知人とつながりやすい」という特徴がある。人々は現在属している組織の友人・知人だけでなく、以前の組織、たとえば卒業した学校の友人などとも手軽につながれるようになった。また、同じ趣味を持った人同士、同じ興味をもった人同士なども簡単につながれるようになった。スマートフォンの普及によるモバイル環境でのソーシャルメディア利用が増えてきたのもその流れを助長している。

もともと、リーマンショック以降の長く続く不況、ロハスやエコ、サステナブルな生活などの浸透も相まって、人々は経済的幸せから人間的幸せを求める方向へと変化しつつあった。
そこにソーシャルメディアが現れ、友人・知人、または同好の士などとつながりやすくなった結果、人々は「人と人とのつながり」という古くからあった関係性に戻ろうとしている。リアルな友人・知人、そしてネット上でつながっている人々と有益な情報などを共有することに幸せを見出すと同時に、彼らの共感や信頼の獲得も求めるようになった。そしてその延長線上で、コミュニティへの貢献意識も強くなった。

つまり、男女各世代バラバラに分かれていた人々が、「つながり」で再編成されようとしているのが、ソーシャルメディアによる大きな変化のひとつめである。これにより性・年齢別にセグメントされ訴求されてきたマーケティングは大きく変化せざるをえないだろう。

また、多くの人がリアルな友人・知人関係をソーシャルメディア上に持ち込んだことにより、人々はネット上でも(リアルとあまり変わらない)社会的行動を取るようになった。これによりネットは「ネガティブな言動をしやすい場所」から「ポジティブな行動を取るべき場所」へと変化しつつある。このことが(いままでネガな評判を怖がっていた)企業の参加を容易にしたのも広告コミュニケーションにとっては大きな変化のひとつである。

② 伝わるためには「共感」が必要になった

ソーシャルメディア上で人々は「共感」でつながっている。(※3)
たとえばTwitterのRT(リツイート)も、Facebookの「いいね!」ボタン、mixiの「イイネ!」ボタンも、共感しないと押さない。共感された価値ある情報のみが広まっていく。友人や知人の共感フィルターを通ることで、より「自分に有益である可能性が高い情報」が選別され、デスクトップやラップトップ、スマートフォンなどで受動的に読んでいるだけで様々な情報が飛び込んでくるようになる。つまりネットは能動的に情報を取りに行く場所から受動的に情報を受け取る場所になりつつある。
そういう意味において、ソーシャルメディアは「友人・知人とつながる場所」だけでなく、「自分に有益である確率が高い情報に受動的に出会う場所」になっていく。これは従来マスメディアが担っていた役割であり、情報取得の順番や質が大きく変化することを示している。

また、ソーシャルメディアの圧倒的な情報伝播力も忘れてはならない。
それまでのウェブは発信者と受信者が比較的分かれていて、影響力ある発信者(インフルエンサー)の発言が受信者に広がる、という構造を持っていたが、ソーシャルメディアの登場により、受信者であった大勢の生活者がRTや「いいね!」ボタンなどで同時に情報発信者になることが可能になった。これにより「受信者=発信者」である強力な情報伝播の場が出来上がったのである。情報が発信の連鎖に乗って波紋のように広がり、一瞬にして数百人から数万人、数十万人に伝わる強力なインフラの出現である。メディアの激増&メディア接触の分散化によりマスメディアの「大勢に伝えるチカラ」が相対的に弱まっていたこともあり、この、波紋のように広がっていく情報プラットフォームが世の中に大きな影響を与えるようになってきたのである。

そして、その「情報伝播プラットフォーム」での流通貨幣が「共感」である。
共感した情報のみ、人は友人・知人に教えようとする。また、共感できる発信元(友人・知人)のリコメンド(推薦)が大きな力を持っているのもこの時代のポイントである。
加速する情報洪水のせいで情報それ自体は価値を失いつつある。また、超成熟市場のせいで同じような商品が店に溢れ、どの商品が本当に自分に有益か、人々は判断がつきにくくなってきた。そんな中、ソーシャルメディア上での(特に実名の)友人・知人のリコメンド(推薦)がいかに有益で便利かに、人々が気づき始めたのである。
いままでも、友人・知人のリコメンドは、マスメディアの情報を補完し、「クチコミ」として大きく機能してきた。それと趣を異にするのは、これまではインフルエンサーによる一般的影響力のあるリコメンドが力を持っていたのに対し、「友人・知人による親身で等身大のリコメンド」の価値が増大したことである。リアルな友人・知人関係が持ち込まれ、誰でも発信者になれるインフラが整ったことで、よりクラスターの近い人々、同じコミュニティ(同じ組織、同じ趣味など)の人々の意見を簡単に聞けるようになった。そしてその方が自分に有益かつ便利(情報摂取までの時間が早い)なことに人々は気づき始めたということである。

このことは「検索」の価値を相対的に低めてしまうことになるかもしれない。情報をフラットに扱う検索は、情報を得たあとに「自分に有益かどうか」を判断しなければいけないが、友人・知人のリコメンドは、クラスターなどが近い分、「自分に有益である確率が高い情報」であることが多い上に、それを友人・知人と共有する楽しさもあるからである。

3)「共感する」(Sympathize)

これらの変化により、アテンション中心だった従来の広告はやり方を大きく変えなければならなくなるだろう。

マスマーケティングは大勢の人を相手にする。
なるべく多くの人に伝えて売ることが目標である。100万人、1000万人、5000万人、1億人に伝えるためにどうすればいいか。最小の予算で効率的にそれをおこなうにはどうすればいいか。それを考え、実行していく、大きな生活者の塊に向けてのマーケティングである。そして、そのとき最も効率がいいのがマスメディアを使うことであった。
マスメディアにおいては「注意をひいて気付かせること」(アテンション)が大切である。インパクトが強い広告を作って目立ち、生活者の「アテンション」を喚起しないと、もともと広告など見たくないと思っている彼らに興味を持ってもらえないし、たくさん出稿される広告の中に埋もれてもしまう。まずアテンションありき。大勢の人々に興味を持たせ、買いたくさせるための大切な入り口をアテンションは担っている。

だが、ソーシャルメディア上において、まずはアテンションが大切、という図式は考え直さなければならない。
ソーシャルメディア上では、企業からの一方的なリコメンド(自社の商品を「これがいいよ!」と勧め、口説くこと)はほとんど価値を持たない。友人・知人の客観的なリコメンドの方が圧倒的に信用できるからである。価値を持たないどころか邪魔な存在になる。ましてや大声でアテンションを喚起してリコメンドするとなると反感すら抱かれかねない。友人・知人のつながりの中に土足で入り込んで自社製品名を大声で叫ぶことに等しいからである。

では、どうすればいいのかというと、「共感」がキーポイントになる。

共感には2種類ある。
ひとつは「発信元への共感」だ。企業の場合、それは普段からの企業活動や社会貢献活動、PR活動などによって出来上がる企業イメージがキーポイントになるだろう。またはブランド(商品)に対する共感もそれに当たる。商品力はもちろん、普段からどんな広告・広報活動をしているかも大きく作用するだろう。そして、その情報を広めている個人への共感も大きな要素だ。信用できる友人・知人・有識者・有名人など、「誰がその情報を語っているか」も大きな力を持ってくる。

もうひとつは「情報そのものへの共感」である。企業発・ブランド発の情報を生活者に受け取ってもらうには、ソーシャルメディア上での流通貨幣である「共感」を纏っていなければいけない。いかに彼らに共感されるかが、アプローチ、そしてクリエーティブ表現のキーポイントになるだろう。

特に、企業やブランドに深く共感した生活者による強いリコメンドは、発信元への共感と情報そのものへの共感の両方を纏う分、友人・知人に広がりやすい。広がる力はより加速する。
そのとき発信元となる生活者は、その企業およびブランドのファン(応援者)・ロイヤルカスタマー(支援者)・エバンジェリスト(伝道者)となり、積極的に友人・知人にその情報を広めようとする。いかに企業の応援者・支援者・伝道者になってもらえるかこそ、ソーシャルメディア時代のコミュニケーション成功の鍵となる。

これは大勢に一気に伝えるマスマーケティングとは根本的に異なっている。
まずは深い共感を得て応援者・支援者・伝道者を作り、彼らが積極的に友人・知人に伝え、そこからまた友人・知人発の情報として伝わっていくような波紋型コミュニケーションである。それはたとえば100万人に一気に伝えるマスマーケティングとは異なり、100人にまず伝え、それがまた100人に伝わっていき、それがまた100人に伝わっていき、100×100×100=100万人になるようなコミュニケーションとなるだろう。

ここにおいて、SIPS概念の「Participate」がクローズアップされる。

4)「参加する」(Participate)

SIPSモデルにおいての共有行動は必ずしも購買を伴う必要はない。

購買まで至らなくても、「ちょっといいかも」と思ったり「とりあえず友人に伝えよう」と考え、RTや「いいね!」ボタンなどで軽い気持ちで友人・知人に広めることが、友人・知人の購買につながる場合もある。これは結果的に企業の販売活動に「参加」していることになる。
また、単にブランドサイトやブランド発のアプリなどで遊ぶことも、その行動がソーシャルメディア上で共有された場合(共有されるように作られていることが多い)、友人・知人の興味喚起につながることになり、これも「参加」と捉えることができる。
さらに、応援者・支援者・伝道者も(それぞれの分析は後述する)、必ずしも購買を伴う必要はない。たとえばソーシャルメディア上でブランド批判を擁護したり応援コンテンツを作ったりなど、必ずしも購買を伴わない応援・支援・伝道行動をすることがある。

これらの購買を伴わない行動、そして購買行動を合わせて、SIPSでは「参加する」(Participate)と呼ぶ。

前項で述べた通り、応援者・支援者・伝道者の積極的行動はソーシャルメディア時代のコミュニケーション成功の鍵である。彼らを味方につけ、友人・知人のつながりの中で広めてもらうことが何よりチカラを持つからである。一方で単なる参加者(パーティシパント)の軽い気持ちでの参加行動も企業やブランドの情報を広めるためには欠かせないものである。

つまり、SIPSモデルにおいて、いかに「参加」してもらうかは、いかに「共感」してもらうかに次ぐ重要な要素なのである。

SIPSモデル

※もちろん、批判的な参加者もいる。ネガティブに企業やブランドを責める参加もあるだろう。ただ、(2)の背景で述べたとおり、ソーシャルメディアでは比較的ポジティブな意見が出がちであること、そしてこの概念は「生活者が消費するときの行動モデル」であることから、ここではその分析に深く踏み込むことはしない。

この、参加者 → 応援者 → 支援者 → 伝道者と経ていく過程は、企業やブランドのライフタイムバリュー(生涯顧客価値)を高めていく過程と重なる。

広く伝え新規顧客をより多く獲得する、という従来のマーケティングから、一度獲得した顧客と「長い関係性(ロング・エンゲージメント)」を築き、ライフタイムバリューを高めていくというマーケティングへ、意識転換が急務となっていくだろう。
また、応援者・支援者・伝道者から友人・知人のつながりへ広めてもらうマーケティングも重要になってくるだろう。

5)「確認する」(Identify)

さて、「共感」したらすぐ「参加」するかと言うとそうでもない。

情報洪水と成熟市場により、生活者はかつてよりはるかにクレバー&疑い深くなっている。また、ロハスやエコ意識の高まり、サステナブルな生活の浸透、長い不況なども相まって、余計なものを買ったりすることに慎重になっている。
そうなると、共感を覚えた情報や商品が本当に自分の価値観であっているかどうか、本当に自分に有益かどうか、を、検索だけでなくあらゆる手段を用いてチェックするようになる。チェックする手段は、友人や知人の意見、専門家の言葉、専門誌、マスメディアなど、多岐に渡るようになるだろう。そしてその情報や商品が自分の価値観に合い、有益であることが確認(Identify)されて初めて「参加」へと進むのである。

そのときの「確認」(Identify)行動は、機能や価格などの客観的・相対的な比較・検討よりも、より主観的かつ感情的である。
なぜならSIPSモデルは、ソーシャルメディア上の「共感」という主観的かつ感情的な出発点を持っているからである。また、友人・知人の「好み」という主観もそこに入り込んでいるからである。

また、であるだけに、「確認」の結果、何らかの不正やウソが発覚してしまうと、もともと「共感」を持っていただけに反動が大きくなる。
これは企業・商品イメージが大きく損なう危険性を秘めている。ソーシャルメディア時代、企業は常に透明性を保ち、不正やウソのない誠意あるコミュニケーションを生活者としていかなければならない。生活者の「確認」に耐えうる価値を提供するために、企業はブランドの開発からコミュニケーションまでトータルに設計することが重要になってくるだろう。

6)Share & Spread(共有 & 拡散する)

ソーシャルメディアの特徴のひとつに「リアルの友人・知人を見つけやすい」ということがあるのは(2)の背景で書いた。これは、当たり前だが、「リアルの人間関係そのものをソーシャルメディア上に持ち込みやすい」ということにつながっていく。

従来のネット上では、生活者が属している「つながり」が交わり合うことはめったになかった。サッカー好きはサッカー好きだけで集まり、食べ好きは食べ好きだけで集まった。だが、ソーシャルメディアは複数の「つながり」が交わりやすい構造を持っている。これはリアルな人間関係が持ち込まれているからである。これが「ソーシャルグラフ」である。

たとえばあなたはリアルでいくつもの「つながり」を持っているだろう。「会社のつながり」「地域のつながり」「大学時代の友人のつながり」「サッカー好きのつながり」「食べ好きのつながり」・・・。それぞれにつながっている相手は別である。人はいくつもの「つながり」を持ち、複層的に使い分けているのである。

たとえば「サッカー好き」から回ってきたサッカーの情報をRTしてサッカー好き仲間と共有しようとしたとする。しかしこのRTはサッカー好きのみに広がるわけではない。あなたが属している他のコミュニティにも自動的かつ無自覚的に広まってしまう。これが「拡散」(Spread)である。SIPSにおいて、この「拡散」もとても重要な概念である。

「確認」を経て「参加」したいろんなレベルの生活者は、その参加活動や情報を友人・知人と主にソーシャルメディア上で「共有」しようとする。しかし、それは上記のような「拡散」を自動的かつ無自覚に伴うのである。

もちろんサッカー好きによるサッカー情報が「拡散」しても、食べ好きたちの興味を惹かないかもしれない。しかし、食べ好きたちは「情報そのもの」ではなく、「発信元である友人のあなた」に共感する。その情報はあなたという発信元への「共感」を纏って伝播していくのである。

そして、その「共感を纏った情報」は、SIPSの冒頭の「S」、すなわち「共感」(Sympathize)である。食べ好きたちは「へー」と思って「確認」に行き、自分に有益だったりおもしろいと思ったら「参加」行動を起こす。
こうして「S→I→P→S」の繰り返しが起こり、冒頭の「S」の母数が乗数的に拡大し、情報が世の中に広く知れ渡っていく。
この母数拡大ループこそソーシャルメディア時代のキャンペーンのキーポイントであり、母数を増やすことが結果的に購買の増大につながっていくであろう。

ちなみに、この「拡散」は、お茶の間がプラットフォームだった時代の拡散力に似て、強力な力を持つだろう。各世代がお茶の間で交わったように、各つながりがソーシャルメディアで交わり、「拡散」が自動的かつ無自覚に行われる。この意味において、マスメディア(特にテレビ)による集中的な大量出稿がふたたび効果的になると思われる。集中的な大量出稿によってどこかの「つながり」のコアに偶然伝わった情報は、それが共感を伴っていさえすれば、違う「つながり」に自動的かつ無自覚に拡散しやすいからである。

また、共感をともなって拡散していくときに、応援者・支援者・伝道者たちがマスメディアによる集中的な大量出稿でその商品・ブランドを再認知することは、彼らの中に強い満足感を生む。そしてこれらコアの人々による共有行動(リコメンドなど)を後押しする。この点においてもマスメディアは有効な手段になるであろう。

7)おしまいに

来るべきソーシャルメディア時代の広告コミュニケーションは、「つながり」と「共感」をキーポイントに大きく変化していくだろう。

ただ、「つながり」のコアにいる応援者・支援者・伝道者にアプローチをしていく必要があるという意味で、クロスメディア、コンタクトポイント設計、SEM、コンテンツ・コミュニケーション、エスノグラフィなどの「生活者本位のアプローチ」はこれまで通り重要なものになるし、「拡散」を加速させるという意味において「マスメディアによるアプローチ」も大切になってくると思われる。
つまり、まったく違うものに変化するというよりは、「いままでの手法を合体させ、時系列で組み合わせていくコミュニケーション・デザイン」になっていくのではないだろうか。

ソーシャルメディアの登場により、コミュニケーションは以前にも増して複雑化しており、「S→I→P→S」とリニアに捉えられるほど単純ではなくなるかもしれない。ただ、物事を一度シンプルに捉え、整理することは、日々の企画作業・提案作業においてぜひとも必要なことである。そういう意味もあって、あえてシンプルに考え方を整理してみたのがこの概念である。

また、この考え方を元にしたコンタクトポイント構造、来るべきソーシャルメディア時代の共感クリエーティブのあり方、リアルタイムウェブの浸透によるマスメディアの変化など、波及的に論じられることもいろいろあるが、それはこのリリースの目的ではないので省きたい。

以 上
(文責 : 電通モダン・コミュニケーション・ラボ)

 

(※) 「SIPS」と「AISAS®」の関係性
電通では、2004年から「AISAS®」という消費行動モデルを提唱している。
インターネットの普及を背景に、消費者が自ら情報を収集し、発信し、他者と共有するという行動を踏まえて、「Attention(気づく)⇒Interest(興味をもつ)⇒Search(情報収集する)⇒Action(購入する)⇒Share(情報共有する)」というモデルとして、捉えたものである。
全ての人が瞬時に情報にアクセスでき、自由に共有できるインターネット社会において、今後も電通では、「AISAS®」を、コミュニケーションの土台となる重要な消費行動モデルとして、グローバルで提唱していく。
「SIPS」は、進化したソーシャルメディアの視点を重視して、生活者の行動を深掘りした概念である。この考え方を元にして、よりきめ細かく的確なソリューションを提供していく。

(※1) 電通モダン・コミュニケーション・ラボ
元電通社員の佐藤尚之(通称:さとなお)が主宰する、生活者視点の次世代型ソリューションを提供しているユニット。SIPS概念研究メンバーは、佐藤尚之、金田育子、京井良彦、信澤宏至、茂呂譲治、橋口幸生、宮林隆吉、貝洲岳洋。

(※2) 共感
「Sympathy」より「Empathy」の方がふさわしいという説もあるが、ネイティブチェックでも意見が分かれたので、ここではより日本人に親しみのある単語「Sympathy」を使うことにした。動きやニュアンスも含めて動詞で使用した。

(※3) 共感でつながっている
ここで言う共感とは広い意味合いを持たせている。「わかる」「あるある」という同意的な共感から、「笑える」「泣ける」「美しい」などの感情的な共感、「有益だ」「多くの人が知るべきだ」といった情報価値的共感、そして「尊敬できる」「助けたい」などの称賛・支援的な共感などをひとくくりにして「共感」と呼んでいる。

 

【本件、リリースに関するお問い合わせ先】
電通コーポレート・コミュニケーション局 市川、林田
TEL : 03-6216-8041

【本件、内容に関するお問い合わせ先】
電通モダン・コミュニケーション・ラボ 金田育子、佐藤真奈
TEL : 03-6216-8707 (ビジネス・クリエーション局 ビジネス・デザイン室)

 

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