AI MIRAIとは
2010年代前半から訪れた第三次AIブームは、ディープラーニングをはじめとする基礎技術の発展にとどまらず、既に様々な領域でビジネスに活用されはじめています。
それは単なる業務の効率化や予測精度の向上に加えて、さまざまな業種業界においてビジネスそのものの変革を可能にし、社会変化のきっかけになっています。
一方でAI関連技術が急速に、かつ広範に発達したため、技術そのものだけではなく、ビジネスのどの領域でどのようにAIを活用できるか、という「実践的な見きわめ」が重要になってきました。
電通の事業基盤とするマーケティング領域においてもAIの活用は確実に進んでいます。
電通のクライアントや各パートナーにおいてもAIによる事業変革・市場変化は訪れており、変化を続ける社会の中でクライアントの事業成長に貢献しつづけるため、電通としても多角的にAIの知見を蓄える必要があると考えました。
AI MIRAIは、最先端のAIに関するノウハウと、社内外のネットワークを結集した、AIに特化した全社横断プロジェクトチームです。
クリエイティブ・メディア・情報システム・働き方改革など、各領域のプロフェッショナルが結集し、加速するAIのビジネス応用を幅広い視点で推進するために結成されました。
40名以上(2017年末時点)のメンバーが情報交換をしながら、それぞれの視点のもとAIの活用を模索・開発し、AI開発の「実践知」を蓄積。
同時に、クライアントの事業成長に直結する実践的なAIソリューションの提案体制を整えています。
また、社外とのネットワーク構築・協業・事業提携にも積極的に取り組み、ソリューションの幅を広げています。
AI MIRAIの3つのサービス領域
AI MIRAIは注力領域として、以下の3つを掲げています。
- Marketing
- 電通の本業である広告・マーケティング領域でのソリューション開発です。クリエイティブ・デジタル・マスメディアなどさまざまな事業領域で、AI活用の可能性を探っていきます。また、そこで得た知見を活かし、クライアント課題を解決するための個別AIソリューション開発にも取り組んでいます。
- Business Development
- 他社と積極的に協業し、新しい事業創出を目指します。電通の幅広いネットワークを活かし、パートナーの技術資産やデータ・ノウハウに、電通ならではのアイデアをかけあわせ、社会を変革する新しい価値を築きます。
- Workstyle
- 働き方改革と、生産性向上に伴うビジネス改革を目指します。RPA(Robotics Process Automation)へのAIの組み込みや、非定型データの定型化を通して、現場業務を支援するだけでなく、業務の付加価値を高めることで時代に先駆けた事業変革を狙います。
上記を注力領域としつつ、各開発担当者をネットワークし、各方面でチャンスをうかがいながら柔軟に新しい取り組みを進めていく体制をとっています。
AIを活用した開発事例
事例1 テレビ視聴率予測システム「SHAREST_RT」

AIの学習手法のひとつであるディープラーニング(深層学習)を用いることで、高精度にテレビ視聴率を予測するシステムです。過去の視聴率データ、番組ジャンル、出演者情報、インターネット上のコンテンツ閲覧傾向などを教師データとしたモデル構築を行い、高速データ解析プラットフォーム内で予測視聴率を算出することで安定的な予測を実現しました。
2017年からβ版の提供をしていましたが、2018年にデータ投入量を強化し、本格稼働版「SHAREST_RT」をリリースいたしました。「SHAREST_RT」には、東阪名3地区へのエリア拡大や、タイムシフト視聴予測への対応、予測対象ターゲットの拡大などを盛り込んでいます。これにより、より高精度に放送前1週間のテレビ視聴率予測を安定的に行えるようになったほか、140を超えるターゲットセグメント別の予測、またタイムシフト視聴率の予測も可能になりました。あわせて、予測精度を向上させるためのデータベース基盤「RICH FLOW」の構築も行い、データベースの拡充を継続しています。
複数ブランドのCM素材を予測視聴率に基づいて広告枠に割り付ける場合、現在は視聴率の予測を人が行うケースがありますが、業務負荷が膨大になるという課題があります。SHARESTはすでにいくつかのチームで実際の素材配置策定に活用されており、業務量が大きく削減されただけでなく、広告配信精度の向上にもつながっています。
「SHAREST_RT」概念図
事例2 人工知能による広告コピー生成システム「AICO」(β版)

電通が静岡大学との共同で開発した、人工知能(AI)による広告コピー生成システムです。
電通は次世代型広告に関する研究を5年ほど前から行っており、その中で広告コピーの良し悪しによって広告効果がどのように変化するかの定量・定性的評価を行ってきました。今回、AIを用いた自然言語処理の急速な発達に際し、その研究をさらに発展させ、今回、静岡大学情報学部の狩野研究室※(狩野芳伸准教授)との共同開発により、今回のシステム開発に至りました。人工知能による広告コピー生成が実現すると、TPO に合わせてリアルタイムにメッセージを変化させることができ、インターネット広告や屋外・交通広告などでよりパーソナライズした次世代型の広告配信が可能となります。
電通と狩野研究室は、双方の知見・ノウハウ・データを組み合わせることで、「人工知能が書いたキャッチコピーによる新聞広告」を出稿しております。その実現に当たっては、実際に広告制作の実務に携わっている当社のコピーライターが人工知能の学習をサポートすることで、より人間に近いコピーの生成を可能にしました。本ツールは2017年10月から実践投入され、すでにコピーライターを中心に200名ほど(2018年1月時点)の社員が本ツールを活用しており、AIと協業した発想支援と学習データの拡充につなげています。
事例3 オンラインクリエイティブ評価・自動生成ツール
SNSをはじめとするオンラインプラットフォームでのクリエイティブを評価するツールです。
広告効果が可視化されるオンライン広告にあって、いままで、「どのようなクリエイティブが高い効果か」の知見は極めて暗黙的なものでした。それを可視化するため、過去のバナーをはじめとする広告クリエイティブを、AIを用いて要素分解し、広告配信結果と紐づけることで、どういった要素が広告効果を引き上げているのかの解明に取り組みました。
現状、各要素の広告効果との紐づけ、および効果予測については一定の成果を上げており、2018年の初旬よりシミュレーションツールとして、現場での活用を想定しています。その後は教師データをより拡充しつつ、高効果と判断された要素を組み合わせて広告クリエイティブを自動生成するツールの開発につなげ、クオリティの強化と生産性の向上につなげていきます。
関連リンク
サイバー和菓子
超未来型食体験を提案するOPEN MEALSが、気象データから季節の造形を生み出す「サイバー和菓子」をプロデュース
TUNA SCOPE
マグロの尾の断面から品質を判定するAI「TUNA SCOPE」を開発。
後継者不足が深刻な職人の「目利きの技」を、断面画像データのディープラーニングによって継承しました。
月刊電通報 2018年12月号
「今こそ、AIと向き合う」(2.39MB)
特集前半は、AI研究の権威である東京大の松尾豊特任教授、AI MIRAIプロジェクトリーダーの児玉拓也氏と共に、「AIと企業」について展望。後半は、マーケティング領域におけるAI活用の最前線を紹介しています。
AI Planners MAI & AICO
AIによるセレンディピティなアイデアに出会える、クリエイティブ支援ツールです。
関連リリース
- 2019年3月19日
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バナーを自動生成するAIツール「ADVANCED CREATIVE MAKER」(β版)を開発 - 2018年3月22日
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電通、ディープラーニングを用いたテレビ視聴率予測システム「SHAREST(β版)」を開発 - 2017年5月17日
電通、人工知能による広告コピー生成システム「AICO」(β版)を開発
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