「2014年 日本の広告費」は6兆1,522億円、前年比102.9%

● 総広告費は6年ぶりに6兆円超え
● インターネット広告費が初の1兆円超え
● 21業種中14業種が前年を上回る

株式会社電通(本社:東京都港区、社長:石井 直)は2月24日、わが国の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2014年(平成26年)日本の広告費」を発表した。
2014年(1~12月)の日本の総広告費は6兆1,522億円、前年比102.9%と、消費税率引き上げの影響はあったものの、通期では3年連続で前年実績を上回った。

2014年(平成26年)の広告費の特徴
1.2014年の総広告費は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要やソチオリンピック2014などで伸長した後、消費税率引き上げによる反動などがあったものの、2014 FIFAワールドカップ ブラジル大会などにより緩やかに成長を続け、通年では6年ぶりに6兆円超の市場規模となった。
2.媒体別にみると、「新聞広告費」(前年比98.2%)、「雑誌広告費」(同100.0%)、「ラジオ広告費」(同102.3%)、「テレビメディア広告費」※(前年比102.8%、地上波テレビと衛星メディア関連の合計)。結果、「マスコミ四媒体広告費」は同101.6%となった。「インターネット広告費」(同112.1%)は、スマートフォン・動画広告・新しいアドテクノロジーを利用した広告が伸び、初の1兆円超え市場となった。さらに、「プロモーションメディア広告費」(同100.8%)も3年連続で前年を上回り、全体の押し上げに寄与した。
3.業種別(マスコミ四媒体、ただし衛星メディア関連は除く)では、全21業種中14業種が前年を上回った。
・主な増加業種は、「情報・通信」(同107.2%、衛星放送、携帯電話料金サービス、スマートフォン向けサービスなどが増加)、「家電・AV機器」(同107.1%、電気掃除機、電気冷蔵庫、液晶テレビなどが増加)、「化粧品・トイレタリー」(同105.6%、シャンプー&リンス・コンディショナー、通販系女性用ラインナップ化粧品などが増加)、「自動車・関連品」(同103.4%、ワゴン、輸入SUVなどが増加)、「飲料・嗜好品」(同102.0%、国産ビール、発泡酒などが増加)など。
・主な減少業種は、「趣味・スポーツ用品」(同92.1%、ゲームソフト、オーディオソフトなどが減少)、「教育・医療サービス・宗教」(同95.6%、専門学校・各種学校、通信教育など教育関連が減少)、「食品」(同96.8%、健康食品、即席麺類、スナック菓子などが減少)、「ファッション・アクセサリー」(同97.0%、婦人服、紳士・婦人靴などが減少)など。
※2014年より区分を変更し、「地上波テレビ+衛星メディア関連」をテレビメディア広告費とした。

1.総広告費の推移
2014年の総広告費は、6兆1,522億円、前年比102.9%と、3年連続で増加した。

2.媒体別広告費の概要
「マスコミ四媒体広告費」(衛星メディア関連を含む)は、2兆9,393億円、前年比101.6%。うち「テレビメディア」(地上波テレビ+衛星メディア関連)は、同102.8%となった。
「インターネット広告費」は、1兆519億円、同112.1%と好調に推移した。また、「プロモーションメディア広告費」も、2兆1,610億円、同100.8% と、3年連続で前年を上回った。
なお、「マスコミ四媒体広告費」(衛星メディア関連を含む)を四半期別にみると、4月以降はやや弱い伸び率であったものの、年間を通しプラスで推移した。

媒体別の状況は、次のとおり。

<新聞広告費:6,057億円(前年比98.2%)>
・消費税率引き上げ前には大きく伸長したものの、4月以降は景気の落ち込みから回復しないまま推移した。ソチオリンピック2014や衆議院選挙などプラス要因もあったが、通年では前年比プラスに至らなかった。
・「精密機器・事務用品」(腕時計)、「エネルギー・素材・機械」(B to B広告が顕著)、「薬品・医療用品」、通販タイプの「食品」(健康食品)と「飲料・嗜好品」(健康飲料)で、出稿が増加した。一方、「ファッション・アクセサリー」「情報・通信」は減少。

<雑誌広告費:2,500億円(前年比100.0%)>
・依然業界を取り巻く環境は厳しいが、広告費が伸長する業種もあり、前年並みとなった。
・シェアの高い「ファッション・アクセサリー」、「化粧品・トイレタリー」は堅調に推移し、「自動車・関連品」や「交通・レジャー」も活発だった。

<ラジオ広告費:1,272億円(前年比102.3%)>
・首都圏では横ばい、関西・中部・北海道・九州では引き続き増加傾向がみられ、全体を底上げした。
・オフィス事業者向けの広告需要の高まりでラジオの活用が進んだ「精密機器・事務用品」や、住宅取得や建て替え需要の伸びにより活用が進んだ「不動産・住宅設備」、国産車のみならず輸入車の出稿が増えた「自動車・関連品」が好調だった。
・radiko.jp(ラジコ)のユニークユーザー数は月間1,300万人、また2014年4月にスタートしたラジコプレミアム(エリアフリー有料サービス)は、17万人の会員を獲得した。

<テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連):1兆9,564億円(前年比102.8%)>

【地上波テレビ】は、1兆8,347億円(同102.4%)
・番組(タイム)広告(同101.2%)は、「ソチオリンピック2014」「2014 FIFAワールドカップ ブラジル大会」「アジア大会2014韓国仁川」など、スポーツ番組の好調やレギュラー番組の堅調を受けプラスに推移した。
・スポット広告(同103.2%)は、1-3月は消費税率引き上げ前の駆け込み需要で大きく伸長し、4月には前年実績割れするも、5月以降は再び市況が活発化し、年末まで好調を維持した。業種別でみると、「情報・通信」(スマートフォン関連、ゲームアプリなどで大きく増加)、「化粧品・トイレタリー」(シャンプー&リンス・コンディショナーなどが増加)、「薬品・医療用品」(DTC〈Direct to Consumer〉広告、ドリンク剤などが増加)などの業種が増加した。

【衛星メディア関連】は 、1,217億円(同109.6%)
・上半期は二桁成長、下半期も好調に推移した。
・業種別では、年間を通して総合通販、健康食品、金融・保険、美容関連、飲料などが好調であった。消費税率引き上げ前には「自動車・関連品」「家電・AV機器」も増加。

◆BS 放送は831.5億円(同112.8%)
・話題のスポーツ番組が多く編成され、初出稿の広告主が増加。また、メディア認知の高まりで、首都圏以外の広告主も増加した。

◆CS 放送は212.0億円(同104.5%)
・スポーツ、映画、地上波キー局系チャンネルなどの出稿が好調に推移。

◆CATV 放送は173.2億円(同103.4%)
・コミュニティチャンネルへの出稿が増加。

<マスコミ四媒体広告制作費:3,121億円(前年比101.0%)>(衛星メディア関連は除く)
注)新聞・雑誌・ラジオ・地上波テレビの広告費には、広告制作費が含まれている。

・このうち地上波テレビCM 制作費は、2,170億円(同101.1%)。
・ソチオリンピック2014と消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動から、4月以降にやや弱含んだ場面もあったが、下半期は徐々に回復し、前年を上回った。
・業種別では、「自動車・関連品」と「金融・保険」が堅調であった。

<インターネット広告費(媒体費+広告制作費):1兆519億円(前年比112.1%)>

【インターネット広告媒体費】は、8,245億円(同114.5%)
・このうち、運用型広告費は、5,106億円(同123.9%)
・インターネット広告媒体費を市場全体でみると、スマートフォン市場の成長や動画広告、新しいテクノロジーを活用した広告配信の浸透が下支えし、前年を上回る伸び率を示した。市場の内訳をみると、枠売り広告やアフィリエイト広告が堅調に推移し、運用型広告は大きく伸長した。
・枠売り広告は、ポータルサイト中面のターゲティング商品が運用型広告に代替される動きが進んだものの、自社のブランディングを目的にした広告主のニーズに応える大型広告やリッチ広告の活用に加え、スマートフォン広告の活用、キュレーションメディアなどの新たなメディアの出現もあり、前年を上回った。また、マーケティングニーズの細分化、ユーザーの接触メディアの分散化を受け、ジャンルを特化した各種専門サイトの活用が拡大。従来型タイアップに加え、ネイティブ広告、コンテンツマーケティングといった手法も根付き始めた。さらに、PC、スマートデバイスともに動画広告の活用など、多くの新しい動きが本格化した。
・運用型広告費の多くを占める検索連動広告の市場は、PC検索の伸びが落ち着きを見せた中、スマートフォンやタブレット検索は大きく伸長し、全体では堅調に成長した。また、大きく伸びた領域のひとつに、DSP(広告主側からみた広告効果の最大化を支援するシステム)が挙げられる。リアルタイムの入札形式で、広く効率的に広告配信するこの手法が浸透した。
・DSPやSSP(媒体社側からみた広告効率の最大化を支援するシステム)などの普及・拡大により、各サイトが持つ広告在庫を広告主側に活用してもらいやすい環境も整った。さらに、DMP(蓄積したさまざまなデータを分析・加工し、広告配信を最適化するシステム)を用いてDSP配信するなど、新たな取り組みも進んだ。
・動画の運用型広告は、広告主によるブランディング目的での活用を中心に拡大した。

※運用型広告とは、膨大なデータを処理するプラットフォームにより、広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法のこと。検索連動広告や一部のアドネットワークが含まれるほか、新しく登場してきたDSP/アドエクスチェンジ/SSPなどがその典型例として挙げられる。なお、枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは、運用型広告には含まれない。

【インターネット広告制作費】は、2,274億円(同104.4%)
・案件数は増加したものの、前年に引き続き、大型キャンペーンの減少や制作単価の低下がみられたことから、成長率は前年の106.2%に比べ鈍化した。
・スマートフォンのさらなる普及などにより、コーポレートサイト・ECサイト・会員サイトは、前年に引き続き成長した。

<プロモーションメディア広告費:2兆1,610億円(前年比100.8%)>
・3年連続で増加。
・「屋外広告」「交通広告」は、SNSでの情報拡散を狙ったイベント展開やデジタルサイネージなどで増加。
・無宛名便(宛名のないメール便)が活発化している「DM」、紙とネットのコラボが話題になった「フリーペーパー・フリーマガジン」、消費者一人一人の目線に立った「POP」といったメディアは堅調であった。また、開発に伴う商業施設におけるディスプレイ広告が伸長した「展示・映像他」が全体の押し上げに寄与した。

◆「屋外広告」は、3,171億円(同103.3%)
・広告板は微増であったが、建築資材費・工事費などの製作費上昇で前年を上回った。
・ネオンは改修・修理により減少傾向にあるが、LEDは伸長した。
・ポスターボードは、「飲料・嗜好品」、「自動車・関連品」(輸入車など)、「金融・保険」、楽曲・番組・映画などの業種で積極的に活用された。
・大型ビジョンは、「飲料・嗜好品」の出稿が好調。また、航空会社やゲームソフト、ゲーム機器の出稿が増加。
・スタジアム看板は、新規掲出は少ないが、プロ野球オールスターゲームやクライマックスシリーズなどに伴うスポット出稿が好調だった。
・広告幕は、一部ビルの改修工事などで減少したが、地域によっては好調なところもあった。
・商業施設メディアは、年間を通し、各種施設イベントに合わせた出稿がみられた。

◆「交通広告」は、2,054億円(同102.5%)
・車内や駅構内でデジタルサイネージの新設・増設が続き、好調に推移。一方、中吊り・窓上・ドア横などの車内メディアは減少した。
・空港関連が伸びており、2020年を見据えた動きが活発化している。
・業種別では、「飲料・嗜好品」、「金融・保険」、「情報・通信」(スマホアプリ)などが堅調。

◆「折込広告」は、4,920億円(同96.4%)
・1-3月は、「自動車・関連品」(販売店)、「流通・小売業」(小型スーパー)、住宅リフォーム、求人、健康食品などで消費税率引き上げ前の駆け込み需要があったが、4月以降は減少が続いた。
・特に、大型家電量販店やGMS(大型スーパー)、「ファッション・アクセサリー」、学習塾・予備校、不動産販売は減少が目立った。
・折込枚数と用紙サイズは引き続き縮小傾向にある。
・地域別では、東北地区を除き、前年を下回った。

◆「DM」は、3,923億円(同100.8%)
・個人情報の取り扱いなどで慎重な動きが見られたものの、既存顧客に効率的かつ個別にアプローチできる広告媒体として認識され、微増した。
・また、高齢化社会を見据えた紙媒体でのマーケティング活動が改めて見直され、特に地方においてカタログ販売や通販系などで需要が高まった。

◆「フリーペーパー・フリーマガジン」は、2,316億円(同101.2%)
〇フリーペーパーは754億円(同101.1%)
・「不動産・住宅設備」などの高額商品・サービスを中心に、駆け込み需要があった。また、求人情報や病院情報なども増加した。

〇フリーマガジンは1,562億円(同101.2 %)
・首都圏ではウェブへの移行進展で減少したが、地方都市では観光誘致も含めたフリーマガジンの発行が脚光を浴び、増加した。

◆「POP」は、1,965億円(同100.6%)
・消費税率引き上げ前の駆け込み需要と年後半の消費回復傾向により、微増となった。
・業種別では、「不動産・住宅設備」「自動車・関連品」「金融・保険」などが堅調。

◆「電話帳広告」は、417億円(同92.1%)
・都市圏では減少したが、地方では地域密着メディアとしての需要が根強い。

◆「展示・映像他」は、2,844億円(同106.1%)
・ゲームショーなどのコンテンツ系展示会をはじめ、大型商業施設の開発に伴うディスプレイ広告の好調が大きく寄与し、増加。資材費の上昇なども広告費の増加要因となった。

3.業種別広告費(21業種、マスコミ四媒体〈衛星メディア関連は除く〉のみ)の概要

2014年は全21業種中14業種で広告費が増加、7業種で減少となった(2013年は8業種で増加、13業種で減少)。

増加業種(14業種)は、「精密機器・事務用品」(前年比107.6%、腕時計などが増加)、「官公庁・団体」(同107.3%、広告関係団体などが増加)、「情報・通信」(同107.2%、衛星放送、携帯電話料金サービス、スマートフォン向けサービスなどが増加)、「家電・AV機器」(同107.1%、電気掃除機、電気冷蔵庫、液晶テレビなどが増加)、「化粧品・トイレタリー」(同105.6%、シャンプー&リンス・コンディショナー、通販系女性用ラインナップ化粧品などが増加)、「家庭用品」(同105.6%、家庭用計量器、機能性マットレスなどが増加)、「自動車・関連品」(同103.4%、ワゴン、輸入SUVなどが増加)、「エネルギー・素材・機械」(同102.8%、ガソリン、電力などが増加)、「不動産・住宅設備」(同102.6%、賃貸用住宅、住宅リフォームなどが増加)、「飲料・嗜好品」(同102.0%、国産ビール、発泡酒などが増加)、「外食・各種サービス」(同101.9%、法律事務所、宅配・引越サービスなどが増加)、「薬品・医療用品」(同101.7%、総合保健薬、ドリンク剤などが増加)、「交通・レジャー」(同100.9%、レジャーランド・テーマパーク、各種イベントなどが増加)、「流通・小売業」(同100.5%、通信販売などが増加)であった。

減少業種(7業種)は、「趣味・スポーツ用品」(同92.1%、ゲームソフト、オーディオソフトなどが減少)、「案内・その他」(同92.7%、案内、臨時ものなどが減少)、「教育・医療サービス・宗教」(同95.6%、専門学校・各種学校、通信教育など教育関連が減少)、「食品」(同96.8%、健康食品、即席麺類、スナック菓子などが減少)、「ファッション・アクセサリー」(同97.0%、婦人服、紳士・婦人靴などが減少)、「出版」(同97.6%、婦人・家庭誌、語学教材などが減少)、「金融・保険」(同98.1%、通販系保険、住宅ローンなどが減少)。


電通総研 メディアイノベーション研究部 研究主幹 北原利行による「2014年(平成26年)日本の広告費」のウェブ電通報解説記事はこちら:http://dentsu-ho.com/articles/2225