サウジアラビアにおける初の日本アニメEXPOをプロデュース

世界中で人気を誇る日本のアニメコンテンツ。今やアニメは子どもだけのものではなく大人にも多くのファンが存在する、というのは日本だけではありません。中東・西アジアに位置するサウジアラビア王国も例外ではないのです。しかしこれまで、イスラム教の聖地を擁する同国において、日本のアニメコンテンツは、その厳格な解釈により、正規IPホルダーからのコンテンツ供給が困難な状況にありました(実際は、海賊版が市場に出回ってしまっており、潜在的なアニメファンは既に多く存在していました)。そのような環境の中、電通がプロデュースを担ったのが「SAUDI ANIME EXPO 2019」です。

石油依存社会からの脱却と産業の多角化へ ~サウジアラビアの課題

サウジアラビアは、石油依存型社会からの脱却を命題に、国家戦略「ビジョン2030」に取り組むなど激動の改革が行われています。長年禁止されていたエンタメの解禁をはじめ、産業の多角化を目指した活動が政府主導により始まりました。それでも、他国からのコンテンツ流通に関してはハードルが高く、実際の流通量は非常に少ないのが課題でした。そこで、「ビジョン2030」の実現に向け、エンターテインメント産業を成長分野のひとつと位置づけ、禁止とされていた映画館の復活やテーマパークの開発構想など、開放へと大きく路線を変えています。ムハンマド皇太子は日本アニメの大ファンということもあり、強力な後押しもありました。

サウジアラビアにおける、初の日本アニメーションEXPOプロジェクトが始動

そのような環境の中、サウジアラビア政府と政府出資の半国営企業から、国家戦略であるエンタメの解禁を実現させる施策として、「本物のアニメショーを実施したい」という相談を頂きました。元々電通は、サッカーをはじめグローバルスポーツ領域において、サウジアラビアとビジネス関係を築いてきました。そして今回はその延長線上で、アニメビジネスにまで領域を広げた相談を頂けたのはうれしいことでした。しかし、相談からイベント実施まで約半年という短期間で、このプロジェクトを実現する必要があったのです。

全社・グループ会社横断プロジェクトによる実施部隊

本イベントで電通は、イベントコンテンツ企画からマネジメント、日本国内のIP(知的財産)ホルダーへの出展交渉も含め、トータルでプロデュースさせていただきました。実施まで十分な時間がない中、社内の組織を超えたプロジェクトチームを立ち上げ、作業のスピードアップを図りました。コンテンツ・ビジネス・デザイン・センターとグローバルスポーツ局を中心に、出版社とのリレーションを持つ出版ビジネス・プロデュース局、海外でのビジネスソリューションにノウハウを持つグローバルビジネスセンター、音楽著作権やアーティスト管理などを主業とする電通ミュージック・アンド・エンタテインメント、大規模イベントの実施・運営に幅広い経験がある電通テック、電通ライブ、電通イベントオペレーションズの他、電通イージスネットワークのドバイ拠点などを合わせ、それぞれの知見と実行力を結集させることで、イベント実現に向けて一気に準備を進め、さまざまな場面で発生する課題にも機敏に対応していくことができました。

異文化間のギャップを越え、実施へ

そして2019年11月、「SAUDI ANIME EXPO 2019」は無事開催を迎えることができました。
オープニングセレモニーでは、サウジアラビア政府関係者によるあいさつの後、両国の著名人が数多く登壇し、日本のアニメを通じて両国の文化交流が深まることへの期待が語られました。メインステージでは、アニメをテーマとしたライブやトークショー、パフォーマンスが実施され、エキシビションエリアには41社に上る日本企業が展示を繰り広げました。その他、コスプレエリアやムービーシアターエリアなど、さまざまな体験が出来るエリアを設け、アニメの世界を多角的に楽しむことができる総合イベントとなりました。3日間の会期に3万7800人の来場者が訪れ、予想を上回る大盛況のうちに閉幕を迎えたのです。

しかし、この実施に至る過程では、思わぬハードルも数多く存在しました。厳格な戒律のもと、独特の判断基準があり、例えば、肌が多く露出しているなどで展示許諾がとれないコンテンツも多々ありました。また、新しい産業を推進するといった急激な舵切り時期では、明文化されたルールがないなど、手探りしながらプロジェクトを推進するという状況もありましたが、電通グループ各社の知見を総動員しながらイベントを無事実施につなぐことができたのです。

日本コンテンツの海外新興市場ビジネス開拓に向けて

今回のプロジェクトでは、エンターテインメントコンテンツの未開拓地であるサウジアラビアをはじめとする中東・北アフリカ地域と、日本のIPホルダーとをつなぐという命題に対して礎を築くことができました。サウジアラビア国内における興味喚起だけでなく、日本のアニメ業界全体にも、中東へのコンテンツビジネス開拓という面で、大きな意識の醸成ができたと考えています。
電通は今後も日本のコンテンツという優れた資産を活用して、さらに新しいチャレンジをグローバルに展開していきます。

【「SAUDI ANIME EXPO 2019」概要】

開催日時:2019年11月14日(木)~16日(土)
会場:Riyadh Front Expo Land
主催:サウジアラビア王国政府エンタテインメント省(GEA)/SELA SPORT
共催:SAUDI ANIME EXPO 2019 実行委員会(GEA+SELA SPORT+電通)
後援:日本動画協会
出展社:41社

「SAUDI ANIME EXPO 2019」に関するお問い合わせは、最下部「お問い合わせフォーム」から本件担当者名を明記の上、お願いします。
担当者:電通 柿崎、谷、石渡