2020年、新型コロナウイルス感染症感染拡大の中、大阪マラソンを主催する大阪マラソン組織委員会は、第10回記念大会となるはずだった大会の開催を断念しました。
9年前、2011年に第1回が開催されて以降、初の中止となったのです。

大阪マラソン以外の大会も軒並み中止となり、ランナーたちは走る目標や楽しさを見失っていました……。
それでもオンラインマラソン大会という新たな形で各地の大会が開催され、多くのランナーが参加し始めていましたが、その多くはただ黙々と1人で走り、記録を提出するという、本来の市民マラソンの魅力からはかけ離れたもの。これがマラソン業界全体の大きな課題となっていたのです。
大阪マラソンの本来のパーパスは、「大阪の都市の魅力発信」や「ランナーに大阪人の熱さや温かさを感じてもらうこと」。コロナ禍においてもそれらをかなえる方法はないものか、われわれ電通を含むプロジェクトチームは日々模索しました。そしてついにたどり着いたのが、ユニークなランニングエンターテインメントアプリ「妄走 -MOUSOU-」だったのです。

精神高揚系ランニングアプリ 「妄走 -MOUSOU-」 とは……

「妄走 -MOUSOU-」 とは、株式会社MOUSOUが配信するスマートフォンランニングアプリ。イヤホンをつけて走るだけで、自分が主役のバーチャルなマラソン中継がスタート。GPS連動による実況・解説・歓声がランナーを追いかけてきます。ランナーはそれらを聞きながら一流選手気分、人気選手気分になり、気持ちよく走ることができるという、他に類を見ないユニークなサービスです。

このアプリとタイアップできれば、大阪マラソンのコース沿道の景観・歴史・文化、さらには大阪弁の声援やヤジまで巧妙に再現できるかも!さっそくプロジェクトチームは同社に話を持ち掛け、大阪マラソンに特化したオリジナルコンテンツの開発作業が始まったのです。
開発目標は、とにかく「大阪らしく、おもろいアプリであること」。
「エンターテインメント性」「大阪マラソンらしさ」をふんだんに盛り込むというユーザー体験構築方針を打ち立てて、コンテンツ開発を進めていきました。

エンターテインメント性の向上でさらなる没入感を!

ユーザーが大会参加気分を高揚させやすいよう、さまざまな仕掛けを組み込みました。まず、最初にユーザー名を登録しておけば実況・解説ではもちろん、沿道からの歓声でも自身の名前が呼ばれる。ただ走っているだけでは味わえないエモーショナルなランニング体験を演出します。

さらに実況には、箱根駅伝を担当したこともある元日本テレビの山下末則アナウンサー、解説にはマラソン界のレジェンド・瀬古利彦氏をお迎えし、テレビ中継さながらの本格的な音声を準備しました。加えて、大阪マラソン100万人の応援団長・森脇健児氏からもハイテンションな応援が。

大阪マラソンらしさの注入で、さらなる臨場感を!

ランナーの耳には、走っている自身の走行距離に応じて、大阪マラソンのコース沿いの名所に関する実況が聞こえてきます。

リアルな大阪マラソンのように沿道からの声援は鳴りやむことなく、しかも当然、関西弁!厳しくも愛のあるヤジや思わず笑ってしまうボケなど、ランナーを飽きさせずフィニッシュへ導きます。

こうして、渾身(こんしん)の面白コンテンツはでき上がっていったのです。
しかし、コンテンツができただけでは大きな大会を実現することはできません。当然のことながら、リアル大会が中止となったことで、主催する大阪マラソン組織委員会のランナー参加料収入はゼロ。スポンサーとなっていただける企業のサポートがあってこそ、より本格的なイベントにできます。しかしそのためには、ご参加いただく企業サイドにも魅力的なものでなくてはなりません。プロジェクトチームは、スポンサー企業にも共感していただける要素を加えられないか検討しました。このコンテンツは、マラソン大会本番がなくても、「大阪」を発信できるコンテンツです。今まで見たことのないユニークな世界観とユーザーの体験価値によって、これまでにないユニークなスポンサーメリットも生み出せるはずだ。私たちプロジェクトチームは、コンテンツにさまざまなアイデアを加えるために知恵を絞ったのです。

① ランニング中の実況・解説音声に、商品ブランド名が出てくるシンプルな音声広告

インフォマーシャルのようにナチュラルにランナーの耳になじむ広告です。

② リアルマラソン大会でもおなじみの完走者「号外」新聞をデジタル版にアレンジ

5㎞達成ごとにダウンロードできるスポーツ新聞風の号外に広告枠を設定しました。自身の写真も入った号外は、SNSにもきわめてフレンドリーで広い拡散も期待できます。

③ 走っている途中で沿道の応援団から不定期にもらえるタスキクーポン(将来的に実装予定)

スポンサーが提供するデジタルのクーポンはもちろん、コンビニや自動販売機との連動も想定しています。

結果、これらのメリットに理解を示していただいたOsaka Metro様には冠協賛を、その他数社の企業様にも協賛していただくことができました。特にOsaka Metro様の場合は、最も大阪マラソンのコースと親和性の高い業態であることが後押しとなりました。

開催された、大阪マラソン2020

そして、いったんは中止が決定され、幻となりかけた大阪マラソンが、開催されることとなったのです。
大会名を「大阪マラソン2020 VIRTUAL supported by Osaka Metro」に変えて。
バーチャルマラソンイベントは、16日間にわたって「静かに」そして「にぎやかに」開催されたのです。参加者は1万人を超え、さらにアプリのダウンロードは続きました。

主催する組織委員会(大阪府・大阪市・大阪陸上競技協会)が強い思いを持つ大阪の都市の魅力・歴史・文化の発信に、大阪マラソンのコースの地下に張り巡らされた鉄道を持つOsaka Metroが強く共感して実現したこの大会。Osaka Metro様からは、自社事業の歴史を語り継ぐとともに最新のサービスやグループ会社の商材をPRするのにうってつけのコンテンツであるとの評価をいただきました。加えて、大阪マラソンの実績スポンサー各社からも、大阪マラソンの新たなチャレンジ、「走ることが楽しくなる」このコンテンツの目指す姿に絶大なサポートをいただいたのです。
結果として、多くのメディアにも好意的に報じられ、そして何より、参加者のみなさまからは、たくさんのうれしい声・評価(抜粋)をいただきました。

  • 中止になったけど、バーチャルで参加できてうれしかった
  • マラソンメダリスト瀬古利彦さんの解説、マラソン中継番組でおなじみのアナウンサー山下さんに実況してもらえてうれしかった
  • 自分の名前が呼ばれ、応援されている気分になり、モチベーションが上がったし、いつもより走れた
  • 沿道から飛んでくる大阪弁の声援・やじで、2019年の大阪マラソンがよみがえった
  • 一緒に走れなかった友達をライバル設定したら、追い抜かれてしまい、悔しかった
  • SNSフレンドリーなデジタル号外

「妄走 -MOUSOU-」 の行き先

「実況・解説・声援」で気分を盛り上げて、いつものランニングが、より楽しく、より頑張れるという「妄走 -MOUSOU-」のオリジナリティー、ユニークネスを中心に据えながら、多くのランナーが憧れる大阪という大都市を走り抜ける大阪マラソンと組み合わせたコンテンツを開発したことが、今回の企画の強みのコアとなりました。
街の魅力、歴史を余すところなく伝えられるという他のランニングアプリにはないエンターテインメント性は、コロナ禍に1人で走ることさえもおっくうになっていた人々に新たな体験価値を提供し、マラソン初心者や未経験者へも楽しみの裾野を広げることができると期待しています。

今後も、アプリ自体にさらなるブラッシュアップ(他のランニングアプリや異業種アプリなどとの連携、多言語対応など)を施しながら、他マラソンへの展開も視野に入れ、映像コンテンツやランニングマシーンとのシンクロにより至高の体験を提供できる装置として新たな収益モデルを模索していきたいと考えています。

関連リンク

妄走 -MOUSOU- ホームページ

「大阪マラソン2020 VIRTUAL supported by Osaka Metro」に関するお問い合わせは、最下部「お問い合わせフォーム」から本件担当者名を明記の上、お願いします。
担当者:電通 関西支社 ソリューション・デザイン局 寺田、村塚

E-Mail:marathon-projects@dentsu.co.jp