加藤 剛輔

加藤 剛輔
トランスフォーメーション・プロデュース局

生活の中へのデジタルの浸透、特にスマートフォンの普及により、商品を所有してもらうことから、利用し続けてもらうことに、各企業の事業・マーケティングの在り方が変化しています。自動車でいえば、購入し所有するニーズから、都市部を中心にカーシェアリングへニーズがシフトし、音楽も、CDを購入するよりオンラインサービスで楽しむ人が増えています。所有から利用へと、ニーズが変化するケースが多くなっています。
その中で、事業・マーケティング戦略として、新しいサービスをつくり、継続的に利用してもらうためには、理想的な顧客体験を実現していくことがポイントとなります。

理想的な顧客体験を実現する上で必要なのは、お客さまを理解するためにその行動を的確にデータで捉えて、そのお客さまに適切なアプローチをすること。すなわち、「行動データを蓄積して、ひとりひとりのお客さまに適切な体験が提供できる基盤づくり」=デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が重要となります。

DXは、すでに多くの企業で、経営企画部門やIT部門でのトライアルの段階から、実際に事業を遂行する事業部での実行に移っており、事業変革を通じた市場創造や、事業成長に向けて実装していく段階となっています。デジタルを活用して新しいサービスや顧客接点をつくり、お客さまとダイレクトにつながりながら商品・サービスを提供する。新しいお客さまを獲得し、お客さまひとりひとりの体験価値を高めることが、DXを通じて実現されようとしています。

電通では、その顧客視点に関するDXを「マーケティングDX」と定義して、広義のマーケティングを革新していくための基盤化を集中的に支援しています。「マーケティングDX」において特に重要となるのは、①事業変革の背骨となる、デジタルやデータを活用した「新サービス開発」、②事業成長を支援するための「マーケティング基盤開発」、であると考えています。私たちは、これまで培ってきたインサイト深耕力やクリエイティビティを生かし、「どのようなサービス・体験を創造すれば、お客さま・生活者が動いてくれるのか?」を基点に、理想的な顧客体験を描き、実現に向けて、企業のデータ変革・システム変革・業務/人材変革等、事業全体のDXを推進しています。

マーケティングDX

昨年電通グループでは、DX診断(Dentsu Digital Transformation診断)というソリューションをリリースし、すでに数十社の企業に活用していただいています。この診断では、DX戦略、①顧客体験変革、②システム変革、③データ・人材変革、④組織・業務変革について分析して、各活動にフィードバックできるサービスを展開しています。ここでも、理想的な顧客体験を実現するために、各活動を評価して、変革していくことがポイントとなります。

実際に診断する中で、DXを進めているがうまくいっていない企業の多くは、データ活用やパーソナライズという手段が基点となり、「どうしたらお客さま・生活者が動いてくれるのか?」という顧客体験の設計図を十分に描けておらず、結果、サービス展開しても全く利用されない状況となっていることが分かりました。DXは経営戦略やサービス向上のための手段ですので、「DXのためのDX」に陥らないことが重要だと感じています。

また、DXを通じて構築したサービスやマーケティング基盤を、効果的に運営・運用していくことも、電通の得意領域です。理想的な顧客体験を実現していくために、KPIを設定して、顧客数の最大化と、ひとりひとりのお客さまのLife Time Valueの最大化に向けて、顧客体験を広告も含めて統合的にマネジメントしていきます。今まで広告で活用してきた、デジタルプラットフォーマーのデータや顧客接点でのデータを生かせるのも、電通グループの大きな強みです。

顧客企業の持続的な成長に向けて

顧客体験がうまくマネジメントできているサービスでも、長年実行していくと、徐々に施策の効果が弱くなっていくことが多々あります。そのとき、改善しながらサービスをマネジメントし続けるだけでなく、時には課題解決に向けた事業変革を通じて、サービスを大きくバージョンアップさせていくことも必要です。私たちは、継続的に広告も含めた統合的な顧客体験をマネジメントして、生じた課題に向き合い続けているからこそ、そのような大きな事業変革をもドライブすることができると考えています。

これからも電通は、企業の事業変革・事業成長に向けたパートナーとして、グループ各社と共にさまざまなサービスやソリューションを展開していきます。

Dentsu Digital Transformation診断へのリンク:
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0902-010124.html

執筆

加藤 剛輔

加藤 剛輔

トランスフォーメーション・プロデュース局
エグゼクティブDXディレクター

電通グループ横断でDXルームを立ち上げ、顧客体験デザインや営業プロセス革新に向けた新規サービスの企画・開発、マーケティング基盤構築、ソリューションプロデュースに携わるなど、企業のデジタルトランスフォーメーション推進に向けたコンサルティング・開発・運用業務に従事。ITソリューション企業とのアライアンスも推進。