並河 進

並河 進
カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター

貝塚 康仁

貝塚 康仁
データマーケティングセンター

New CX――狭義のCXから、広義のCXへ。

いま、CX(Customer Experience)が、狭義のCXから、広義のCXへと変わろうとしています。
かつては、CXといえば、カスタマーセンターの顧客対応、いわばお客さまの困り事の解決などの「既存顧客のごく一部の体験」を表していました。
でも、お客さまから見たら、例えば、ある商品のことを知って、だんだん好きになって、初めて購買し、また、他の人にも薦めるようになる、という行為は、シームレスな一連の流れで、本来一つとして捉えるべきもの。広義のCXには、広告も、販売チャネルでの体験も、既存顧客への対応も、ブランドが提供する全ての顧客体験が含まれます。

CXを、広義のCXと捉えると、マーケティングにおけるその効果の範囲も広がります。新規顧客獲得のファネルと、既存顧客育成のファネル、この両方のファネル(=デュアルファネルと電通グループは呼んでいます)を横断したCXの構築・改善は、CRMの領域だけにとどまらず、例えば、よりファンになっていただけるLTVの高いお客さまを見つけ出し、育成し、マーケティングROIを向上していく、といった事業そのものの成長を推進するエンジンになるのです。
さらに、もっと視野を広げると、そもそもお客さまは、お客さまである前に、一人の「人間」です。お客さまと商品の関係だけを見るのでは足りない。かなえたい夢をもって、日々暮らしの中で成長していく、一人一人の人の人生という体験の中で、CXがどうあるべきかを考えることが大切になってきます。

かつての狭義のCXから、これからの広義のCXへ。
CRM領域だけのCXから、事業成長をドライブさせるCXへ。
困り事を解決するCXから、一人一人の人生の夢をかなえるCXへ。

広告とCRMの領域はもちろん、ブランドの在り方の再定義や、商品やサービスそのものの強い体験の発案と実装、さらには、人と社会と企業がつながる体験の創造など、この広義のCXを、電通は、自分たちの経験を生かしながら、さらに進化させ、リードしたいと考えています。
当然、広義のCXは、広告の領域と地続きであり、電通には積み重ねてきた強みもあります。
ですがそれ以上に、電通は、今までもずっと広告というテーマを、単に広告と捉えず、企業の課題の解決、という視点で取り組んできました。なにより、ユーザーのインサイトと、それに基づくクリエイティビティを大事にしてきました。

企業の課題解決の鍵を見つけ出す「左脳力」と、インサイトからクリエイティブへとジャンプする「右脳力」。

これらが、広義のCXにおいても最重要な力となるからこそ、私たちは、CXを自分たちの力が発揮できる場所だと捉え、この二つの力をNew CXへと拡張し、アップデートすることに、電通の800人以上のストラテジックプランナーと800人以上のクリエイター一人一人が日々挑戦しています。

CXとは?

CXに、進化した左脳力を。

お客さまの困り事に対応する、狭義のCXであれば、既存顧客のデータに基づくシステムとオペレーションがあれば十分かもしれません。ですが、広義のCXでは、それでは不十分です。
広告でのデータ、販売チャネルのデータ、既存顧客のデータ、それらの一見バラバラのものに見えるデータを統合し、そこから、お客さま一人一人の心理と行動を変える鍵となる体験を発見する「コンシューマーインテリジェンス力」が必要なのです。

2017年に、電通グループは、People Driven Marketingを発表しました。これは、電通グループが保有するあらゆるマーケティング手法を「人基点」で結集・高度化した統合フレームワークです。
かつてのアスキングベースの顧客分析やアイデアブレストによるスタティック(静的)な仮説探索的アプローチから脱却し、顧客データや電通オリジナルデータに基づく分析・発見、顧客ごとのカスタマージャーニーに沿った体験設計、モーメント設計、施策の高速PDCAによる実践知などのコンシューマーインテリジェンス力を鍛え上げてきました。
さらに、データマーケティングセンターというデータドリブンな顧客マネジメントを実装する専門チームも2019年に発足させ、それらの分析~実施~PDCAを仕組み化し、事業の持続的な成長につなげていくCXソリューションへと進化させています。
例えば、大規模ID×行動ログデータの中からAIを駆使し潜在顧客の興味関心が高まる予兆を競合他社に先駆けて動的に捉えるトリガーモーメントアプローチ※1や、膨大な顧客接点データから高度なアルゴリズムに基づきファン化や有望顧客化するメカニズムを解明していくトリガー体験アーキテクト※2などの電通のデータドリブンな次世代型CXソリューションは、事業成長につながるあらゆる顧客体験を最適化することで数多くの事業グロース達成実績を有しています。

トリガーモーメント
トリガー体験アーキテクト

CXに、進化した右脳力を。

電通のクリエイターと聞くと、どんなイメージでしょうか。テレビCMに強い?アイデアや発想が上手?そうしたイメージをお持ちだとしたら、(とてもありがたいと思いつつも)半分だけ正解です。今、電通のクリエイターは、発想力、クラフト力を武器に、能力の大きな拡張を進めています。360度あらゆるCXを生み出せるクリエイターへの進化です。
CXは、かつては、システム中心でした。でも、CXが、顧客の全ての体験を表す言葉になったとき、クリエイティブこそが鍵を握るはず。なぜなら、体験は、人が触れるもの、人が感じるもの、右脳の領域に他ならないからです。
電通のクリエイターがCXにおいて生み出せることが3つあります。

  1. 新しいブランドストーリーを生み出すこと。----社会全体の変化やトレンドから、次の時流、人の変化を描き、その中で、ブランド体験がこれからどうあるべきかを再定義する。その大きなストーリーが、全ての体験づくりの出発点になる。
  2. 愛される手触りを生み出すこと。----お客さまが触れる表現やインターフェースは、クラフト力が問われる領域。高いクラフト力があれば、ペインポイントを解決することにとどまらず、「触れてみたい」「使ってみたい」「使い続けたい」UX/UIをつくりだすことができる。
  3. 一人一人に合わせた、もてなしを生み出すこと。----顧客データを活用し、一人一人にカスタマイズしたコンテンツや体験を届けようとすれば、そのパターンは膨大な数になる。分析や生成を行う人工知能と、クリエイターの協業、そしてその相互作用による進化こそが解決策になる。

電通では、2021年1月に、100名規模のCX専門クリエイターチーム、カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センターも発足させました。また、CXにおける右脳力は、クリエイターだけにとどまらず、電通の全てのストラテジックプランナーにも。過去の分析に終わらない、未来を洞察するクリエイティビティを発揮しています。

電通のクリエイターは、360度あらゆるCXを生み出すクリエイターへ。

アートとテクノロジー、だからCXは面白い。

私たちは、CXにわくわくしています。右脳と左脳。アートとテクノロジー。マジックとロジック。愛されることと正しいこと。そのどちらかだけではなく、その両方が求められるからです。
ストラテジックプランナーも、ロジカルに考えるだけではなく、右脳的なアプローチも必要。逆に、クリエイターも、右脳的な発想だけではなく、左脳的なアプローチをすることも。
そして、BXも、DXも、AXも、考えてみれば、結局、より良いCXを実現するためのもの。CXこそは、企業がお客さまと社会に約束すること、そのものです。
人を見つめ、一人一人の夢をかなえ、社会をより良くしていくNew CXへ。電通は、Integrated Growth Partnerとして、クライアントの皆さまと伴走していきたいと思います。

執筆

並河 進

並河 進

カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター長
エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

1973年生まれ。2017年、電通デジタルに、AI/データとクリエーティビティの融合を目指した「アドバンストクリエーティブセンター」を立ち上げる。
2021年1月、電通に、新たに発足したカスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センターのセンター長に。
著書に、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)『Communication Shift』(羽鳥書店)他。
読売広告大賞、広告電通賞など受賞多数。東京ビエンナーレ2020/2021 エクスペリエンスクリエイティブディレクター。

貝塚 康仁

貝塚 康仁

データマーケティングセンター 局長

購買データやWEBログ等の各種ビッグデータの統計解析を通じたビジネスコンサルティングに加え、DMPをはじめとするBIツール・アドテクノロジーとAIを駆使した全数IDベースの顧客マネジメント基盤構築やマーケティングプロセス改善、アルゴリズムベースの体験設計・KPIマネジメント実績は多数。