
電通の海外本社Dentsu International (電通インターナショナル)は世界のCMO(最高マーケティング責任者)を対象とする調査を行っています。2018年に調査を開始し、以後毎年、世界主要市場のCMOに対してアンケート調査を実施し、調査結果を発表しています。
CMO調査 2020
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世界主要市場のCMO(最高マーケティング責任者)を対象とする調査:2020年5~6月実施
主なファインディングス
- CMOにとって現在の最大の課題は、コロナ禍が生活者の消費行動にどのような恒久的な変化をもたらすかを理解・洞察すること。
- CMOの約3分の2(62%)が、調査時期から12カ月間はマーケティング予算を削減あるいは横ばいにする見通しを示しており、これによりCMOの直面する課題がさらに困難なものになると考えていること。
- 新しい戦略的思考が不十分であるため、CMOの約半数(49%)が過去の不況時に採用したアプローチに基づく回復戦略を策定しており、新たな戦略を検討しているのはCMOの10人に1人にとどまること。
- その一方で、「フロンティアCMO」とも言うべきCMOが台頭し、特に商品・サービスの開発を通じて、変わりゆく時代の中で変わらない理念を体現する「戦略的なマーケティングアジェンダ」を実現する動きが生まれてきていること。
上記のとおり、CMOが直面している最大の課題は、コロナによって生活者の消費行動がどのように変化し、コロナ後に、どのような消費行動が失われるかを洞察することにあります。「CMO調査2020」の結果は、生活者ニーズの変化とそのスピードに合わせてビジネスを調整していくことの難しさと、生活者による支出の減少によってその調整がさらに困難になっていくであろうことを示唆する一方で、「フロンティアCMO」と名付けた新たなリーダーシップスタイルのCMOが回復を主導していく可能性を示唆しています。
そして、その「フロンティアCMO」が追究する戦略には次の5つが含まれていること、および「フロンティアCMO」には他のCMOよりもデジタル・トランスフォーメーションを管轄するケースが非常に多く、ビジネスや業界の未来を先導する能力や経営層への影響力が大きいことが分かりました。
「フロンティアCMO」が追究する5つの戦略
- ハイパーエンパシー(超共感):優れた消費インテリジェンス(データ分析を通じ、生活者による消費行動を統合的に理解する能力)の開発
- ハイパーアジリティー(超機敏):新たなメッセージ、製品やサービスの迅速な開発
- ハイパーコラボレーション(超連携):マーケティングミックスのすべての要素の統合化
- ハイパーコンソリデーション(超整理統合):ブランド統合やM&Aを通じた回復力の構築
- ハイパートランスパレンシー(超透明):事業のあらゆる側面でマーケティングの目的を浸透
電通インターナショナルは、「CMO調査2020」の詳細レポート(英語のみ)を無償で提供しており、下記URLからダウンロードすることができます。
https://www.dentsu.com/sg/en/reports/cmo_survey_2020_31eb6f5<調査概要>
「CMO調査2020」は、2020年5~6月に、世界の主要12市場、1,361名のCMO(最高マーケティング責任者)または同等の役職者を対象に実施(各市場で100名以上)。対象市場は、日本、オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、ロシア、スペイン、英国、米国。
CMO調査 2019
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世界主要市場のCMO(最高マーケティング責任者)を対象とする調査:2019年実施
CMOにとって短期的な指標達成の重圧は大きいものの、彼らはマーケティングの力点を、デジタルトランスフォーメーションを本格的に推進することに移しつつある。
- CMOの約8割は、デジタル化の進展に伴い、ビジネスを単に最適化するだけでなく、ビジネスそのものを変革しなければならないと認識しており、将来のイノベーションのためには、マーケティングが果たすべき責任がより重要になると考えている。
- しかしCMOにとって、ビジネスの「変革」と製品・サービスの「イノベーション」は、企業のマーケティング機能における役割の中で、優先順位が低く位置付けられている。
- 将来のビジネスの成功に必要と考えているマーケティング能力と、現在実際に備えている能力との間には大きなギャップが生じており、その中でもデータの収集・管理・分析における理想と現実の隔たりが顕著な課題となっている。
トランスフォーメーションとイノベーションは、企業として取り組むべきマーケティング機能の中で優先順位が低い。
将来的に重要とされるマーケティング能力と、実際のパフォーマンスとの間には大きなギャップが存在している。
短期的指標とマーケティングに対する投資の制約が、変革に対する障壁である。
- 長期的な投資を確保できないことが、CMOの50%における関心事(上位3回答計)に挙げられており、マーケティング戦略を実践する上で最も重大な障壁となっている。
- CMOの64%が、目に見える短期的な成果を上げることへの圧力がさらに高まると予想しており、半数近くが、短期的目標に焦点を当てたマーケティング戦略を立案している。
- 今後1年間の見通しでは、CMOの64%が企業収益の増加を見込んでいるが、収益は増加するにもかかわらずマーケティング予算は横ばいまたは減少すると予測しているCMOの割合は41%に達している。
今後のマーケティング予算における投資の増加は、あまり大きくは見込まれていない。
CMOは、短期的指標が及ぼすマーケティング予算に対する制約の中で、顧客を中心に据えたマーケティング機能の実現のために、ビジネスの最適化、デジタルトランスフォーメーション、長期的なブランド構築におけるバランスをとる必要に迫られている。
<調査概要>
調査対象国:オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、スペイン、英国、米国の10市場
調査対象者:CMO(最高マーケティング責任者)または同等の役職者1,000名(各国100名)
CMO調査 2018
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世界主要市場のCMO(最高マーケティング責任者)を対象とする調査:2018年実施
データの利活用の進化に伴い、世界市場におけるマーケティングに対する投資は増加する。
- CMOの約3分の2が、今後1年間でマーケティング予算は増加すると予測している。テクノロジー業界をはじめとして、多くの市場・業種で予算は増加傾向にあるが、食品・飲料、自動車業界では予算削減の可能性が高い。
- 短期的な予算は一般的に増加傾向にあるが、長期的な投資を確保することが、CMOの戦略の実践にとって最も重要な課題である。
- ターゲットとなる人々の把握においてデータを有効的に活用することは、最も有力な戦略的機会であるが、その一方で、データ侵害、情報漏洩は最も大きなリスクである。
- CMOの60%は、GDPR(EU一般データ保護規則)が、消費者と直接的な関係を築くことをより困難にすると考えている。また、CMOの61%は、より多くのデータが入手できるようになったものの、そこから適切な洞察を導き出すことは難しいと考えている。
- イノベーションをマーケティングの主要な役割と位置づけているCMOは全体の3分の1に過ぎず、デジタル経済に必要なマーケティング能力がリスクにさらされている。
多くのCMOが、今後1年間でマーケティング予算は増加すると予測している。
現実の人々を把握するためのデータの活用が、CMOにとって最も大きな戦略的機会である。
データ侵害が、CMOにとって最も大きな戦略的リスクである。
CMOは、新たな能力を磨いて自らの役割を強化する機会と、データとデジタル経済がもたらすリスクと課題とのバランスをとるという、大きな課題に直面している。成長の原動力となるデータの重要性の高まりを反映して、デジタルメディアへの投資、マーケティングの内製化、専門家の役割の拡大は、いずれも投資優先順位の上位に位置づけられている。
<調査概要>
調査対象国:オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、スペイン、英国、米国の10市場
調査対象者:CMO(最高マーケティング責任者)または同等の役職者1,000名(各国100名)