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 株式会社電通(本社:東京都港区、社長:榑谷 典洋)は本日、日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2021年 日本の広告費」を発表した。2021年(1~12月)日本の総広告費は、2020年から続く新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)拡大の影響が下半期にかけて緩和したことに加え、社会のデジタル化が進む中、好調なインターネット広告費の成長に支えられ、通年で二桁増の6兆7,998億円(前年比110.4%)となった。

図表1 日本の総広告費の推移

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(注)2019年からは、日本の広告費に「物販系ECプラットフォーム広告費」と「イベント領域」を追加、広告市場の推定を行っている。2018年以前の遡及修正は行っていない。

<2021年 日本の広告費の概況>
◆2021年の総広告費は、通年で6兆7,998億円(前年比110.4%)となった。上半期は、感染拡大に伴う緊急事態宣言・まん延防止等重点措置などに伴い、前年同様に新型コロナの影響を大きく受けた。下半期には、コロナ禍からの回復に伴う景況感や消費者心理の改善に伴い、テレビメディア広告費が回復し、インターネット広告費の成長が加速したことが広告市場の成長へつながった。また、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)」「東京2020パラリンピック競技大会」(以下、東京2020オリンピック・パラリンピック)が広告需要を後押しした。10月以降は、音楽・スポーツイベントやテーマパークなどで徐々に入場制限が解除され、人流や経済が戻ってきたことを受け、多くの広告媒体で回復が鮮明になった。リアルとオンラインをハイブリッドしたイベントも徐々に増加し、リアルイベント自体も感染対策を施される中で開催されるようになった。中でも大型のスポーツイベントの開催は、明るい兆しをもたらした。

◆インターネット広告費については、1996年からの実績について1997年に推定を開始して以来、継続的に高い成長率を維持し、2021年には2兆7,052億円、前年比121.4%となり、マスコミ四媒体広告費(2兆4,538億円、前年比108.9%)を初めて上回った。とりわけ映像系を中心に動画広告需要の高まりが顕著で、デジタルプロモーションの活用拡大も市場成長に寄与した。また、コロナ禍においては、その関連情報などをより幅広い層へ、より多くの方へ、過不足なく情報を伝える社会的需要が高まったことから、デジタルだけでなく、他の媒体活用も進んだ。

◆マスコミ四媒体の事業者が主体となって提供するインターネットメディア・サービスにおける広告費を意味する「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」が、2018年の実績推定の開始以来、3年連続で二桁成長を続け、初めて1,000億円を超えた。媒体社が持つ高い編集力や制作力でリッチなコンテンツが提供されるようになり、オンラインイベントや動画・音声配信など各種サービスが拡大した。

<媒体別広告費の概況>
 「日本の広告費」は、(1)マスコミ四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア広告費の合算、それぞれの広告費には制作費も含まれている)、(2)インターネット広告費(媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、制作費の合算)、(3)プロモーションメディア広告費(屋外、交通、折込、DM<ダイレクト・メール>、フリーペーパー、POP、イベント・展示・映像ほかの合算)に大きく3分類される。2021年の総広告費は、回復傾向のマスコミ四媒体広告費と好調なインターネット広告費がけん引し、大幅な増加となった。

(1)マスコミ四媒体広告費 2兆4,538億円(前年比108.9%)
 コロナ禍からの市況の回復により、「新聞広告費」「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」のすべてが増加した。特に「テレビメディア広告費」においては、巣ごもり・在宅需要なども影響し、前年比で二桁増となった。

(2)インターネット広告費 2兆7,052億円(前年比121.4%)
 社会の急速なデジタル化を背景に、前年比121.4%の成長となった。総広告費における「インターネット広告費」の構成比は39.8%となり、インターネット広告費が初めて推定された1996年実績以来、初めてマスコミ四媒体広告費を上回った。また、「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」は、2018年の実績推定の開始以来、高い成長を遂げ、わずか3年で1,000億円を超えた。中でもコネクテッドTV※1への成長の期待が高まる「テレビメディア関連動画広告」が、249億円(前年比146.5%)と大きく伸長した。また、「物販系ECプラットフォーム広告費※2」も巣ごもり・在宅需要の拡大に伴い、1,631億円(同123.5%)となった。
※1 インターネット回線へ接続されたテレビ端末。
※2 「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」とは、生活家電・雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うEC(電子商取引)プラットフォーム(これを「物販系ECプラットフォーム」と呼ぶ)上において、当該プラットフォームへ"出店"を行っている事業者(これを「店舗あり事業者」と呼ぶ)が当該プラットフォーム内に投下した広告費と定義。より広い意味での「EC領域での販売促進を図るインターネット広告費」全体を指すわけではない。

(3)プロモーションメディア広告費 1兆6,408億円(前年比97.9%)
 東京2020オリンピック・パラリンピックの開催をはじめ、各種イベントや従来型の広告販促キャンペーンも徐々に再開されたものの、新型コロナの影響は大きく、通年では減少した。ただし、厳しい中でも、大型で目立つデジタルサイネージなどインパクトがあるOOHの活用が進んだ「屋外」や巣ごもり・在宅需要などを取り込んだ「折込」「DM」は増加となった。

図表2 媒体別広告費<2019年~2021年>

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<媒体別広告費詳細>
(1)マスコミ四媒体広告費(業種別 マスコミ四媒体別広告費は添付PDFの図表7を参照)

①新聞広告費 3,815億円(前年比103.4%)
・新型コロナによる影響は継続したものの、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催、第49回衆議院議員総選挙などにより、通年では増加となった。
・業種別では、巣ごもり・在宅需要を背景に「化粧品・トイレタリー」は前年比112.0%となり、特に通販系化粧品が増加した。「流通・小売業」も通信販売が増加し、同107.8%となった。「交通・レジャー」は、旅行・宿泊関連の減少が見られたものの、レジャー施設・興行関連が増加し、同100.3%となった。「情報・通信」は前年の出稿増による反動減で、同96.3%となったものの、ウェビナー、リモートワーク関連、オンラインショップ(EC関連)などの需要は拡大傾向が続いた。

②雑誌広告費 1,224億円(前年比100.1%)
・紙の出版物推定販売金額は、前年比98.7%と17年連続のマイナスとなったが、その減少幅は2020年同様に小さかった。内訳は、書籍が同102.1%、雑誌が同94.6%。一方、電子出版市場は同118.6%と引き続き大きく伸長した。コミック誌では"縦スクロールコミック"がさらに浸透し、新たなターゲット層を取り込むことで、同120.3%と大きく成長した。なお、紙と電子出版を合わせた出版市場全体は同103.6%となり、3年連続で前年を上回った。(数字出典:出版月報2022年1月号)
・雑誌広告費は、1-3月期は広告宣伝費が落ち込んだが、4-6月期以降は徐々に回復し、通年では前年比100.1%となった。
・業種別では、「家電・AV機器」「案内・その他」など東京2020オリンピック・パラリンピックに関連する業種が前年対比で増加したが、雑誌広告費シェアの高い「ファッション・アクセサリー」「化粧品・トイレタリー」は前年に続き減少した。
 ※スマートフォンでの閲覧に特化した「縦スクロール」「オールカラー」のウェブコミック。

③ラジオ広告費 1,106億円(前年比103.8%)
・東京2020オリンピック・パラリンピックに関連した番組への出稿も寄与し、4-12月の期間では前年を上回り、通年で前年比103.8%となった。
・業種別では、巣ごもり・在宅需要もあり、「化粧品・トイレタリー」が前年比132.4%、「飲料・嗜好品」が同126.9%、SNSやアプリ、動画サブスクリプションサービスが増加した「情報・通信」が同112.9%などと大きく伸長した。

④テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)1兆8,393億円(前年比111.1%)
◇地上波テレビ 1兆7,184億円(同111.7%)
・新型コロナによる影響が前年と比較して緩和したことから、地上波テレビ広告費は1兆7,184億円(前年比111.7%)となった。
・番組(タイム)広告費は、「東京2020オリンピック・ パラリンピック」「FIFAワールドカップカタール 2022アジア2次予選」および「同 アジア最終予選」をはじめ、プロ野球、プロゴルフトーナメントなど、前年に見送られた大型スポーツ大会やイベントが、感染対策を講じた上で実施されたこともあり、大幅な出稿増となった。地域別に見ても、通期では基幹8地区全てで前年を上回った。
・スポット広告費は、前年から続く新型コロナの影響により1-3月期は低調であったが、4-6月期は、携帯キャリアの出稿が堅調な「情報・通信」に加え、スタートアップ、ヒューマンリソース領域の出稿がけん引し、好調に推移した。7-9月期には、巣ごもり・在宅需要による「飲料・嗜好品」業種の好調な出稿に加え、前年中止または延期となっていた映画作品の公開が徐々に始まり、「交通・レジャー」の出稿が復調した。10-12月期には、「情報・通信」「交通・レジャー」に加え、「外食・各種サービス」も好調となり、大幅な出稿増へとつながった。地域別に見ても、通期では基幹8地区全てで前年を大きく上回った。

◇衛星メディア関連 1,209億円(同103.1%)
・巣ごもり・在宅需要により、通販市況は好調に推移し、前年を上回った。
・前年にコロナ禍で中止となったスポーツイベントが開催されたことに伴い、放送収入が増加した。

(2)インターネット広告費

①インターネット広告媒体費 2兆1,571億円(前年比122.8%)
・新型コロナによる影響で消費の低迷と広告出稿が減少した前年からの反動で、前年比122.8%と大きく成長し、媒体費が初めて2兆円を超えた。
・緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が多くの地域で長期間適用されたことによる巣ごもり・在宅需要の継続や、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催などにより、動画配信サービスの利用者が増加し、動画広告は大きく伸長した。
・新型コロナの影響でオフライン販促施策が制限される中、大手プラットフォームが自社のポイントを活用したデジタル販促ソリューションを積極的に展開した結果、販促費の取り込みが進んだ。

マスコミ四媒体由来のデジタル広告費 1,061億円
(インターネット広告媒体費の一部、同132.1%)
・マスコミ四媒体由来のデジタル広告費は、初めて1,000億円を超え、前年に続く二桁成長となった。

・新聞デジタル 213億円(同123.1%)
前年より堅調な成長トレンドが続いた。上半期は、タイアップ記事やオンラインイベントなど予約型広告が増加したものの、運用型広告は減少した。7-9月期は、新型コロナの状況や東京2020オリンピック・パラリンピック関連ニュースのPV(ページビュー)数増に伴い、運用型広告は増加した。

・雑誌デジタル 580億円 (同130.0%)
雑誌由来の広告費が広告売上の過半を占める出版社もあった。引き続き主要ウェブメディアのPV/UU(ユニークユーザー)数、主要SNSの媒体アカウントなどは伸長した。ウェビナー企画やオンラインイベント、広告主のオウンドコンテンツ制作、動画制作・配信など、出版編集のコンテンツ制作力やコミュニティへの集客力を強みとした広告企画が定着し、出版系ウェブメディアおよび雑誌ブランド・コンテンツ事業の成長を後押しした。ファン・コミュニティの事業化、コミック事業の拡大、XR(クロスリアリティ)※1およびメタバース※2領域、NFT(非代替性トークン)を活用した価値の高いコンテンツの取引など、「出版IP(知的財産)」を駆使した様々な研究開発が進んでいる。
 ※1 現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術の総称。
 ※2 インターネット上に広がる三次元の仮想空間やサービスのこと。

・ラジオデジタル 14億円 (同127.3%)
Podcastをはじめとする音声メディアが引き続き注目を集め、radikoも含むラジオデジタルへ新規出稿と継続出稿が増加した。また、Spotifyユーザーにも接触するプレミアムオーディオ広告も好調に推移した。

・テレビメディアデジタル 254億円(同146.8%)
テレビメディアデジタルのうち、「テレビメディア関連動画広告」は249億円(前年比146.5%)と、前年に続いて急成長した。TVerは、再生数・ユーザー数ともに順調に伸長しており、コネクテッドTVなどテレビ受像機での視聴も拡大している。

②「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」 1,631億円(前年比123.5%)
・前年に続き、コロナ禍に伴う外出自粛により、生活者の身近な購買チャネルとしての物販系ECプラットフォームの利用が進み、高い成長率となった。
・在宅勤務や教育機関の休校・休園の影響もあり、日用品や食料品、生活家電だけでなく、生活必需品以外(衣類や書籍、おもちゃなど)の流通量も伸長した。
・特定の経済圏では、ポイント還元やディスカウントなどの生活者メリットによる購買行動が進んだことも物販系ECプラットフォーム広告費の成長を支えた。

③インターネット広告制作費 3,850億円(前年比113.2%)
・新型コロナの影響により冷え込んでいた生活者の消費マインドの回復と、オンライン消費スタイルの定着、また、企業のDX化が一層加速したことなどにより、インターネット広告の制作需要が拡大した。
・制作物の種類で状況を見ると、動画広告の伸長が顕著であった。動画広告にはブランドムービーからSNSでのバズ動画までさまざまな種類のものがあるが、中でもブランドムービーをはじめとするリッチコンテンツが大きく増加した。
 ※音声や音楽、動画、アニメーションなど、動的な要素を含むコンテンツ、制作物。ここでは、高品質な動画を指す。

(3)プロモーションメディア広告費

①屋外広告 2,740億円(前年比100.9%)
・緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の解除に伴い、外出自粛が緩和され人流が回復した。出稿控えも全体的に和らぎ、ファッション・医療・エンターテインメントなどの業種を中心に広告需要が回復した。
・長期看板は、繁華街に設置された大型媒体では需要があったが、それ以外の媒体では鈍い状況が続いた。
・短期看板や短期ネットワーク看板、屋外ビジョンは、繁華街において大型で目立つインパクト型OOH媒体に需要が集中し、増加した。特に、3Dコンテンツ放映が話題となった。
 ※大型サイネージ、大型ボード。

②交通広告 1,346億円(前年比85.8%)
・鉄道は、ポスター、デジタルサイネージともに、ネットワーク系媒体※よりも主要駅で人流が多いロケーションに設定された大型で目立つインパクト型OOH媒体に需要が集中した。駅構内は、全体的に減少したものの、全国的に大型デジタルサイネージは前年を上回った。車両内は、人流の減少に伴い、通常だと年間出稿の需要が多いステッカーは大きく減少したが、キャンペーンに合わせたスポット出稿は増加した。
・空港は、外国人入国制限により旅客数が回復しなかったこともあり、国際線は前年より減少した。国内線は、緊急事態宣言等に伴う移動制限が解除されてからは、わずかに回復した。
・東京2020オリンピック・パラリンピックは主に無観客開催となったものの、主要駅、競技場最寄り駅では出稿があった。
・業種別では前年同様、飲料系は減少しているものの、ゲーム、美容、SNS動画配信、クラウドサービス、デリバリー系は堅調だった。
・タクシー広告は、サイネージ搭載車の増加もあり、ラッピング広告を含め前年に続き増加した。
 ※全線中づり、主要駅の駅サイネージネットワーク、主要駅の駅ばりネットワーク。

③折込 2,631億円(前年比104.2%)
・新型コロナの影響があったものの、巣ごもり・在宅需要を後押しする媒体として活用され、主要都市圏を中心に増加し、前年を上回った。
・業種別では、スーパーやホームセンター、家電量販店を含む流通・小売による販促利用が回復した。サービス業も飲食・旅行・遊戯関連の出稿は減少が続いたものの、出前や食材宅配サービスでは増加、また買い取り事業者が好調だったことで、全体では増加した。その他、通販系の健康食品・化粧品が増加し、金融・保険に関しては大幅増となった。一方、教育・教養、不動産は新型コロナの影響とDXの加速もあり、それぞれ減少した。

④DM(ダイレクト・メール) 3,446億円(前年比104.7%)
・新型コロナの影響が大きかった前年から回復し、増加した。
・リモートワークの普及とリアルでの対面営業が難しくなったことを受け、保険営業などを中心にDMを積極活用するケースが増加した。また、デジタルマーケティングと連動したパーソナライズDMもさらに広く活用された。
・インターネット広告だけではカバーすることが難しいターゲット向けに、無宛名便DMの活用が増加し、そのDM市場が拡大した。

⑤フリーペーパー 1,442億円(前年比93.7%)
・前年に続き、新型コロナの影響や、一部発行紙の休刊、エリア統合、発行号の削減などを受け、前年比93.7%となった。特に駅などに設置するタイプは前年に続き減少した。一方で、第49回衆議院議員総選挙関連や新聞社発行のフリーペーパーは好調だった。
・地域情報を主体としたフリーペーパーでは、地域の広告主や自治体に対し、編集力やコンテンツ力などを生かしたウェブサイト編集、オンライン販促施策、動画制作などのサービス提供の動きも見られた。
 ※フリーペーパーは、タブロイド判タイプのフリーペーパー・雑誌タイプのフリーマガジン・電話帳の総称。

⑥POP 1,573億円(前年比94.9%)
・前年に続き各種集客イベントや店頭販促プロモーションが自粛となり、メーカー販促ツールの導入も見送られるなど、POP(店頭販促物)の減少につながった。
・一方で、店頭DX施策が数多く行われた。リアルな場での貴重な接点となる店頭では、さらなる顧客体験を高める手法として、デジタルサイネージの導入や、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を活用したPOPも見られた。
 ※タッチ&トライデータ、購買導線データ、AIカメラ等による視聴者数・属性調査など、データ取得や分析についての試み。

⑦イベント・展示・映像ほか 3,230億円(前年比93.0%)
・コロナ禍による影響が継続し、前年を大幅に下回った。
・「東京モーターショー」や「東京マラソン2021」の中止・延期などがあったものの、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されたこともあり、イベント領域は1,372億円(前年比126.0%)と増加した。
・展示領域では、文化施設や百貨店、オフィスの改装需要などが増加したものの、複合型商業施設、企業PR施設、テーマパークなどのエンターテインメント施設は、感染拡大に伴う経済活動の停滞により計画の見直しや集客関連の設備投資抑制を受け、大きく減少した。
・映像関連は、オンライン展示会やウェブ講演会・セミナーなどに付随する配信動画、商品サービス紹介などの制作需要が増大した。
・シネアド(シネマ・アドバタイジング)は、上半期は緊急事態宣言による休館などで低迷したが、下半期にはラグジュアリーブランドなどの需要が急回復した。

【その他、広告関連市場】※「日本の広告費」市場には含まれない
・商業印刷市場 1兆7,800億円(前年比101.7%)うち、ポスター・チラシ・パンフレットの印刷市場は、前年を上回る1兆700億円(同101.9%)となった。前年に続くインバウンド需要の減少や、ペーパーレス化の加速、商業施設・飲食業の休業など、印刷業界ではマイナス要因が拡大した。大手・中堅印刷会社は前年比100%前後、小規模印刷会社ではその多くが前年比90%程度の実績であった。

・ポスティング市場 1,283億円(前年比111.0%)
新型コロナの影響で全戸配布の社会的需要が高まり、市場は堅調に成長した。官公庁関連の配布物、公告などが増加。PCR検査やワクチン接種の案内チラシなどで、紙の利用価値も高まった。主要都市圏では、在宅でチラシを見る機会が増えたことも要因の一つ。また、地域の求人、不動産関連など、その土地ならではの情報をエリア限定でタイミングよく配布するタイプのポスティングも堅調だった。新型コロナの影響で厳しい外食・各種サービス関連においても、販促手段の一つとして利用価値が高まった。折込、DM、フリーペーパー広告市場の一部と重なるが、業界の垣根を超えた連携も始まった。また、データマーケティングの積極活用や最新のデジタル技術なども活用した、よりきめ細やかな配布も実施された。

・DM制作関連市場 1,071億円(前年比101.7%)
対人営業の代替手段やリモート営業の販促ツールとしてDMが活用され、企画制作作業が前年より増加した。さらに、データマーケティングをはじめとした作業運用費も増加した。

<業種別広告費(衛星メディア関連を除くマスコミ四媒体のみ)について>(添付PDFの図表6を参照)
「情報・通信」「精密機器・事務用品」「飲料・嗜好品」「家電・AV機器」「案内・その他」など16業種が増加。

<「インターネット広告媒体費」の内訳について>
株式会社CARTA COMMUNICATIONS、株式会社D2C、株式会社電通、株式会社電通デジタルの4社共同で、広告種別や取引手法別などの切り口で分析した「2021年 インターネット広告媒体費詳細分析」を3月上旬発表予定。

電通メディアイノベーションラボ 研究主幹 北原利行による「2021年 日本の広告費」の「ウェブ電通報」解説記事
はこちら:https://dentsu-ho.com/articles/8090



以上