「電話リレーサービス」とは

「電話リレーサービス」は聴覚や発話に困難のある人(以下、きこえない人)ときこえる人(聴覚障がい者等以外の人)をオペレータが通訳して電話でつなぐサービスです。一般財団法人日本財団電話リレーサービスが、法律にもとづく公共インフラとしてサービスを提供しています。きこえない人と、きこえる人との会話を、通訳オペレータが「手話や文字」と「音声」を通訳することにより、電話で会話することができます。
令和2年6月、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律(令和2年法律第53号)」が制定(同年12月1日施行)され、公共インフラとしての電話リレーサービスが制度化されました。
このサービスは、令和5年2月末現在で約1万2000人の方が登録されており、緊急通報機関への連絡、仕事の相手先へ電話、病院の予約、店舗の予約、学校や塾との連絡、家族・友人とのコミュニケーションなど、さまざまな場面で活用が始まっています。

サービスの課題は認知度

「電話リレーサービス」は活用されれば、きこえない人にとってもきこえる人にとっても、コミュニケーションを格段に便利にするものです。しかし、実際の活用環境には若干の課題もありました。きこえる人のところに「電話リレーサービス」を介して電話がかかってくると、通訳を介した会話に慣れていない場合は、一瞬、間違い電話のような感じがする人もいるということです。「電話リレーサービス」の認知度が全体として上がらないと、とまどって電話を切ってしまう人もいるのではという懸念がありました。
今回、電話リレーサービスという「名称」と「サービス内容」の認知を上げることが、ひいてはサービスそのものの利便性を上げることに直結すると考えました。

「広告戦略会議」を結成

プロジェクトを進める“体制”に関しては、広告や表現に知見のある当事者らと構成した「広告戦略会議」を立ち上げ、コンセプトワークに取り組みました。
会議には、石川絵理さん(TA-net事務局長、ダイアログ・イン・サイレンスアテンド)、今井ミカさん(映画監督、サンドプラス代表)、江副悟史さん(トット基金日本ろう者劇団代表)、大橋弘枝さん(俳優)、志村真介さん(ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ理事)、松森果林さん(聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐUDアドバイザー、ダイアログ・イン・サイレンスアテンド)などが参加し、ともに作り上げていきました。

このサービスは「きこえない人のため」だけのものではない

実際のコミュニケーションプランを考える上で、私たちは大きな方針を立てました。電話リレーサービスは「きこえない人のため」のサービスと思われがちですが、本来は「きこえない人ときこえる人のため」のサービスです。きこえる人も含め、トータルの認知を上げなければなりません。きこえる人がサービスを利用する際に耳にする、「こちらは電話リレーサービスです」という通訳オペレータの第一声を、「あ、聞いたことがあるぞ」という人を増やしていくことが一番重要であると考え、耳に残るサウンドロゴ開発に取り組みました。
サウンドロゴの作曲を依頼したのは、いきものがかりの水野良樹さんです。後ほど紹介するCMやウェブ動画の冒頭にサウンドロゴが入っているので、ぜひ聞いてみてください。

認知を上げていくこととともに重要なのは、サービス内容の理解促進です。このサービスは、具体的な仕組みがわかることで理解が進み、活用されていくと考えられます。キーコンセプトを「はじめてした電話をおぼえていますか?」と定め、広告を制作していきました。TVCMは2本作っており、「とまどう」篇は先ほど触れた「きこえる方がサービスを知らずに最初はとまどう」内容になっています。

CM「つながる」篇

CM「とまどう」篇

ウェブ動画は、YouTubeチャンネルの「かなたいむ。」を運営する奏太さんと制作しました。きこえないお母さまがはじめて「電話リレーサービス」を利用する様子を伝えました。その内容をもとにした新聞広告も元日に掲載。じっくり読める時期だからこそ、電話リレーサービスを深く理解していただく記事にしました。

ウェブ動画

新聞広告

https://nftrs.or.jp/library/

世の中に選択肢を増やす活動

プロジェクトを振り返って、広告戦略会議の皆さんと並走しながら、一緒に作れたのは大きかったと感じています。「共創」という言葉がキーワードとなって久しいですが、そのど真ん中にいることができたと感じています。「電話リレーサービスってこういうことだったのか!」という書き込みをSNSで見かけたり、サービスを利用される方から「こういうことを言ってほしかった」というコメントも届いており、本当にうれしく感じています。

電話リレーサービスは、世の中に選択肢を増やすサービスだと思います。きこえない方ときこえる方が電話するという選択肢があることで、世界に新しい広がりが生まれます。同じように世の中に選択肢を増やそうと活動している方はたくさんいますので、これからもコラボレーションを模索し、広げる力になれたらと思っています。

関連リンク

「電話リレーサービス」

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担当者:電通 阿部 広太郎、遠藤 道夫