新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費

<新聞広告費>

2012年の新聞広告費は 6,242億円、前年比104.2%と推定される。
2012年前半は復興需要や消費マインドの復調がみられ、また震災の影響の反動から、新聞広告費は好調に推移し、前年比で10%近い大幅増となった。しかし、後半は円高や欧州危機などの下ぶれ要因が重なり、震災の反動効果も徐々に薄れていった。その結果、ロンドンオリンピックや衆院選などの下支え効果はあったものの、ほぼ前年並みで推移し、通年では4.2%増となった。
業種別にみると、21業種中15業種が前年比プラス、6業種が同マイナスとなった。特に伸びの大きかった業種は、「エネルギー・素材・機械」(前年比116.2%)、「飲料・嗜好品」(同116.1%)、「化粧品・トイレタリー」(同114.8%)、「官公庁・団体」(同114.6%)などが2ケタの増加となった。特に「飲料・嗜好品」「化粧品・トイレタリー」をはじめ、通販関連の商材が伸びをけん引した。また、構成比の大きい「交通・レジャー」「流通・小売業」「化粧品・トイレタリー」「食品」「飲料・嗜好品」も増加した。
こうしたなか、新聞各社はターゲットを絞った紙面・メディアの開発、デジタルを絡めた紙面企画、新しいクリエイティブの試みなど、これまでにない取組みがみられた。特にデジタル分野においては、主要紙の電子新聞が出そろい、タブレット端末やスマートフォンへの対応も進んだ。広告制作においては、映画やコミック、女性ファッション誌とのタイアップ、大型紙面での出稿など従来にない試みが他のメディアでも取り上げられるなど、注目を集めた。

<雑誌広告費>

2012年の雑誌広告費は 2,551億円、前年比100.4%と推定される。
2012年前半、特に4-6月期は好調だったが、後半は低調に推移して前年を下回った。
業種別にみると、21業種中11業種が前年を上回り、そのうち「薬品・医療用品」「飲料・嗜好品」「精密機器・事務用品」の3業種は、10%を超える伸長となった。雑誌広告で大きな構成比を占める「ファッション・アクセサリー」(前年比104.6%)、「化粧品・トイレタリー」(同100.1%)も順調に推移した。このほか、前年は震災の影響で大幅減だった「食品」(同109.3%)が、健康・美容食品の伸長に支えられ、復調に転じた。
ジャンル別にみると、女性誌、男性誌、ミセス誌など9ジャンルで前年を超えた。特に「女性誌」と「アダルト男性誌」が大幅に伸長した。創復刊点数は98点で、100点を割る低調ぶりだった。
主な創刊誌は女性誌の「and girl」(エムオン・エンタテインメント)、「Richesse」(ハースト婦人画報社)であった。アラサー世代女性向けの「BAILA」(集英社)や、「女性・母・妻の3役」を提唱する30代女性向け「VERY」(光文社)の広告集稿は、前年比30%以上の伸長をみせており、大型創刊誌が少ないなかでも健闘した。
休刊誌は152点で、前年とほぼ同水準にとどまった。主な休刊誌は、通販誌「Look!s」(スタイライフ)、料理男子向け「男子食堂」(ベストセラーズ)。また、定期誌が本誌点数を減らす一方で、創刊リスクの少ない不定期誌刊行に力を入れる傾向は拡大した。創刊/別冊刊行は、不定期誌で4,832点(前年比101.5%)、ムックで9,087点(同103.8%)と増加した。

<ラジオ広告費>

2012年のラジオ広告費は1,246億円、前年比99.9%と推定される。
業種別にみると、21業種中12業種が前年を上回った。「精密機器・事務用品」(前年比148.6%)など3業種が2ケタ増、「自動車・関連品」(同109.7%)も大きく伸長した。さらに、ロンドンオリンピック効果もあり、「食品」「外食・各種サービス」も前年を上回った。一方、ラジオ広告費において比較的シェアの高い「飲料・嗜好品」については、特に業界市況の煽りを受けたアルコール系で出稿に低下傾向がみられた。また衆院選による大量出稿はあったものの、前年に大量出稿があった広告団体の影響で、「官公庁・団体」は前年割れとなった。
radiko.jp(ラジコ)については、各種タイアップキャンペーンによる認知拡大や番組予約システムの構築等による番組の積極聴取を促す施策や、ラジオNIKKEI第一・第二での全国配信の開始、南海放送・琉球放送の参加等により、前年に引き続き活動が活発化した。
コミュニティ放送の広告費は、わずかながら増加した。地域別では関東、東海、北陸で減少したが、その他の地区、特に東北は前年を大きく上回った。広告主の減少や予算の縮小で減少傾向にある放送局がある一方で、自治体等の獲得、地域密着型イベント、震災復興支援、メディアミックスの取り組みで増加した放送局も多くみられた。

<テレビ広告費>

2012年のテレビ広告費は 1兆7,757億円(前年比103.0%)と推定される。
2年ぶりに前年を上回った。
内訳は、番組広告費が7,195億円(前年比103.1%)、スポット広告費が1兆562億円(前年比103.0%)である。
スポット広告費は、3年連続で増加した。1-3月期は、前年の震災やタイ洪水に伴う影響からの反動で回復基調となり、「食品」「化粧品・トイレタリー」が好調を維持した。また、「金融・保険」などの業種による積極的な出稿もあり、前年同期比104.1%の成長となった。4-6月期は、前年に震災の影響で大きく落ち込んだことによる反動増や「自動車・関連品」のエコカー補助金関連の大型出稿などで同119.0%と活況を呈した。しかし、8月以降は低調な海外景気などに伴う業績見通しの悪化や消費低迷によって減速し、7-9月期は同96.4%となった。10-12月期も減速感は衰えず、「飲料・嗜好品」「化粧品・トイレタリー」「情報・通信」などが大きく落ち込み、同94.8%となった。
番組広告費は、2006年以来6年ぶりに前年を上回った。四半期別では、レギュラーやスポーツ番組等に広告主の年度末予算が投入された結果、1-3月期は前年比106.3%と増加した。また、震災からの回復基調も好影響を与え、4-6月期は同104.2%、さらにロンドンオリンピック効果も相まって、7-9月期は同104.2%と夏までは堅調に推移した。しかし、10月以降その勢いは弱まり、10-12月期は同98.1%となった。
テレビ広告費を業種別にみると、21業種中16業種で前年を上回った。「自動車・関連品」(前年比133.5%)「情報・通信」(同115.2%)など5業種が2ケタ増、構成比の大きい「食品」(同106.5%)「化粧品・トイレタリー」(同103.5%)も増加した。

●2012年 マスコミ四媒体広告費の四半期別伸び率

2012年(1-12月)のマスコミ四媒体広告費を四半期別にみると、年前半は高い伸びだったが、年後半は景気後退感が強まり、マイナスに転じた。

(前年比、前年同期比、%)

  2012年
1-12月
1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
マスコミ四媒体
広告費
102.9 107.8 98.3 105.2 110.6 98.8 97.8

<マスコミ四媒体広告制作費>

(注:広告制作費は媒体別広告費に含まれている)

2012年のマスコミ四媒体広告制作費は 2,911億円、前年比104.0%と推定される。
そのうちテレビCM制作費は1,990億円、前年比105.1%。
年前半は、移動体通信サービス、エコカー減税関連の出稿で、ロンドンオリンピックまでは好調に推移したが、その後、外需不振により、「家電・AV機器」「自動車・関連品」などの状況が悪化し、広告制作費も縮小傾向となった。年初の予想よりも大きな下振れとなり、結果として予想よりも低い伸びにとどまった。