新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費

<新聞広告費>

2011年の新聞広告費は5,990億円、前年比93.7%と推定される。
東日本大震災直後、新聞社は編集優先の臨時報道体制をとったため、広告枠が消失した。とりわけ被災県の地方新聞社は、物資の確保やインフラの整備などの復旧対応に追われた。一方、広告主は、自粛意識や物品等の供給停止によるサプライチェーンの寸断により、広告出稿やイベントをキャンセルしたり延期せざるを得ない状況となった。その後は各紙で震災お見舞い広告の出稿や震災復興支援企画が実施されたものの、予定されていた通常出稿やイベントなどの中止分をカバーするまでには至らなかった。広告主の自粛意識による広告出稿の敬遠は、4月中旬あたりから企業広告を中心に徐々に緩和されていったが、商品の供給不足による商品広告出稿の延期は7月頃まで続いた。特に、自動車メーカー各社や飲料メーカー各社の新聞出稿の回復は遅かった。新聞広告費の増加要因となったトピックスとしては、節電、なでしこジャパン、世界陸上、地デジ完全移行などが挙げられ、各紙が新聞社企画を立ち上げ、広告出稿の呼び水となった。これらのトピックスは震災以降落ち込んでいた広告費の回復に寄与したものの、震災の影響をカバーするには至らず、2011年全体としては前年比93.7%と前年を割る結果となった。
業種別では21業種中15業種でマイナスとなり、マイナス業種がプラス業種を上回った。特に新聞広告で構成比の高い「交通・レジャー」「出版」等の広告費の減少が大きく影響した。一方、構成比の高い「流通・小売業」「食品」「情報・通信」等の広告費が増加し、なかでも通信販売がプラスに寄与した。
こうした状況下において、新聞各社は引き続き経営合理化に取り組む動きが見られた。特筆すべきは、新聞社間相互の記事提供・委託印刷・共同輸送等の業務提携や、相次ぐ夕刊の廃止等である。一方で、新聞社事業の拡大による新収益確保の動きも継続した。その一例としては、2011年4月に導入された新学習指導要領対応としての子ども新聞創刊・子ども向け紙面の拡充、スマートフォン・タブレット型PC対応の電子新聞サービスや、新聞社資産を活用したアプリケーションの開発等が挙げられる。

<雑誌広告費>

2011年の雑誌広告費は2,542億円、前年比93.0%と推定される。
業種別動向をみると、21業種のうち11業種が前年比90%超えとなり、うち6業種は前年を上回った。特に雑誌広告で大きな割合を占める「ファッション・アクセサリー」は、前年比100.3%と堅調であった。
ジャンル別では、前年比100%を超えたのは「アダルト男性誌」のみだったが、「育児誌」「番組・都市型情報誌」「スポーツ誌」「パソコン誌」以外のその他のジャンルも、前年比90%台であった。主な創刊誌は、コミック誌『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ発行/小学館クリエイティブ発売)、『最強ジャンプ』(集英社)、女性誌『Lips』(マガジンハウス)、エンタテインメント情報誌『ウレぴあ』(ぴあ)、男性向け料理誌『男子食堂』(ベストセラーズ)など。コミック誌『月刊ヒーローズ』『最強ジャンプ』は、ともに30万部の大型創刊であった。広告集稿に強い女性誌の大型創刊はほとんどなかったが、既存誌の中でも『steady.』(宝島社)、『BAILA』(集英社)といった部数を伸ばしている雑誌での広告集稿が好調で、大型創刊誌がないなかで健闘した。
休刊誌は、前年より50点以上少なかったが、『ぴあ』(ぴあ)、『スーパージャンプ』(集英社)、『PS』(小学館)などの有名雑誌の休刊が相次いだほか、20代向けファッション誌『PopSister』(角川春樹事務所)が1年半足らずで休刊するなど厳しい状況に変わりはない。創刊点数は119点で前年より9点増加、休刊点数は158点で前年より58点減少となった。

<ラジオ広告費>

2011年のラジオ広告費は1,247億円、前年比96.0%と推定される。
東日本大震災による消費意識の低下・自粛ムードを受けたこともあり、引き続き厳しい状況となった。業種別にみると、「化粧品・トイレタリー」「家電・AV機器」の出稿は引き続き好調だったものの、エネルギー系企業の出稿減が相次いだこともあり、全体としては前年比でマイナスとなった。震災の影響を受けた出稿の顕著な例として、節電キャンペーンなどの官公庁関連の出稿や、保険・金融系の「被災地向け広告」、携帯電話・通信系企業の緊急出稿、予定されていたCMを放送できないための差し替えとして継続して放送されたACジャパンの出稿が増加したことが挙げられる。
また、インターネットでラジオ放送を聞けるradiko.jp(ラジコ)は、震災支援プロジェクトで大きな役割を果たした。被災地の福島・岩手・茨城・仙台エリア放送局の放送がパソコン、iPhone及びスマートフォン(アンドロイド端末)から聴取可能となり、アンドロイド型携帯電話についてはダウンロードによる聴取が可能となった。また、サイト上から首相官邸ホームページにアクセスできるバナー広告が掲載され、被災地の現状の随時把握、被災地支援の意識向上を多くのリスナーに向けて発信し大きく貢献した。聴取可能エリアの拡大も着実に進行し、7月20日に広島、10月30日に静岡・長野・石川・鹿児島で聴取可能となった。これにより2011年は全放送局100局のうち10地区48局がradiko.jpに参加する形となった。
コミュニティ放送(253局)は、厳しい社会情勢にもかかわらず、広告費はほぼ前年並みとなった。年前半は震災の影響で広告・イベントの中止・縮小が相次いだため減少したが、後半には復興支援広告などもあって回復した。伸び率は関東地区でやや高かったが、地域別には顕著な差がなかった。放送局別では、出稿スポンサーの減少や予算の縮小で減少傾向にある放送局が多いものの、IT企業など新規スポンサーの出稿や他の媒体・イベントとの組み合わせなどで伸びた放送局もみられる。

<テレビ広告費>

2011年のテレビ広告費は1兆7,237億円(前年比99.5%)と推定される。
内訳は、番組広告費が6,979億円(前年比97.9%)、スポット広告費が1兆258億円(前年比100.7%)である。
スポット広告は2010年からの活況を受け、1月、2月と順調に推移していたが、東日本大震災による影響は大きく、消費意欲の減退などを背景に5月までは厳しい状況となった。
「流通・小売業」「化粧品・トイレタリー」など回復の早い業種を中心に6月以降は徐々に前年並みを確保するようになり、年後半には減産の影響を受けていた「自動車・関連品」も復調に転じた。11月にはタイの洪水被害による「精密機器・事務用品」などの出稿差し控えがあったが、他の業種がカバーする形となり、全体的には堅調な動きとなった。
番組広告については、震災発生時にはすでに4月改編の大枠が固まっていたこともあり、それほど大きな影響はなかった。7-9月期には2008年以来、12四半期ぶりに前年比増となり、スポットの早期回復が10月改編にも好影響を与える形となった。番組広告のスポットへのシフト化による一時的な低下傾向には、一定の歯止めが掛かったと考えられる。
前年に続いてスマートフォンやSNS関連各社に加え、飲料などにも活発な動きをする広告主が多く、懸念されていたCM単価の低減に下げ止まりの傾向がみられた。なお、アナログ停波による視聴率への大きな影響は今のところ現れていない。

●2011年のマスコミ四媒体広告費の四半期別伸び率

2011年(1~12月)のマスコミ四媒体広告費を四半期別にみると、4-6月期に大幅に減少したが、年後半にかけて回復基調が強まり、10-12月期はプラスに転じた。

(前年比、前年同期比、%)

  2011年
1-12月
1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
マスコミ四媒体
広告費
97.4 94.9 99.8 98.0 91.7 99.3 100.2

<マスコミ四媒体広告制作費>

(注:広告制作費は媒体別広告費に含まれている)

2011年のマスコミ四媒体広告制作費は2,800億円、前年比99.1%と推定される。そのうちテレビCM制作費は1,894億円、前年比101.3%。
「自動車」の減税キャンペーンなどで好調な滑り出しであった2011年は、3月の東日本大震災の後、ユーロ圏での金融不安や急激に進行した円高の影響で景気が悪化して、予定されていた広告キャンペーンは、全体的に縮小・中止が相次ぎ、厳しい状況が続いた。
スマートフォンの普及やゲームコンテンツの拡充によって、広告制作には復調の兆しもあったが、全体を押し上げるほどの活況には至らなかった。7月の地上波完全デジタル化移行に伴う拡大も期待されたが、震災での減少を補うほどの効果はなく、前年を下回る結果となった。