インターネット

インターネット広告費は8,062億円、前年比104.1%と推定される。
インターネット広告媒体費は、6,189億円(うちモバイル広告費1,168億円、検索連動広告費(PC領域のみ)2,194億円)、前年比101.8%。2010年に堅調な伸びを示したインターネット広告媒体費は2011年に入っても伸長を維持していたが、3月の東日本大震災の影響により市場が一部停滞し、さらにモバイル広告市場においてはスマートフォン向け広告が拡大する半面、フィーチャーフォン(スマートフォン以外の携帯電話)向け広告が縮小したこともあり、市場全体としては前年をやや超える規模に留まった。
PCインターネットにおける広告であるウェブ(PC)広告は5,021億円(前年比103.0%、検索連動広告を含む)。震災前までは前年同様に順調に市場が拡大していたが、震災の影響で特にディスプレイ広告においては自動車・家電といった業種を中心に広告キャンペーンの中止や後倒しが相次ぎ、また年末にはタイの洪水の影響等もみられた。しかし、市場全体としては緩やかに回復して情報通信・金融など従来からの主力業種を中心に再び拡大基調に戻っている。手法としては、ポータルサイトを活用した展開だけでなく、リッチコンテンツやソーシャルメディアの活用、行動ターゲティングやアフィリエイトなどに加えて、さらに近年ではアドエクスチェンジといった新しい技術を活用した新手法も脚光を浴びており、このように技術の進化によって手法がますます多様化しつつあることが、市場全体の継続的拡大を支えている。また、ウェブ(PC)広告のうちの検索連動広告については震災の影響は軽微に留まり、伸びは前年よりも鈍化したものの、金融やeコマースなどの業種を中心に基本的には堅調に推移して2,194億円(前年比107.8%)となった。
モバイルインターネットにおける広告であるモバイル広告は、1,168億円(前年比97.3%、モバイル検索連動広告を含む)。前年までの拡大傾向から一転して市場が微減した背景には、震災の影響や、スマートフォン向け広告の成長の半面、フィーチャーフォン向け広告が減少したことなどがある。なお現時点では、一部の費用はスマートフォン向けの媒体費でなくアプリの開発費に流れるなど、従来のフィーチャーフォン向け媒体費が必ずしもスマートフォン向け媒体費にそのまま移行しているわけではない面もある。スマートフォン向け広告は337億円(そのうち検索連動広告は208億円)と、急増するユーザー数や注目の高まりに応じて急激な拡大をみせた。その一方でスマートフォン向け広告については市場基盤の整備が今後さらに進めば、引き続き拡大していくことが期待される。また、フィーチャーフォンとスマートフォンを合わせたモバイル検索連動広告は463億円(前年比162.5%)となった。

インターネット広告制作費は、1,873億円、前年比112.2%。企業のキャンペーンやプロモーションにおいてインターネット(PC、モバイル)を連動させる企画・展開は前年からさらに増加傾向となってきている。広告主企業はインターネット広告の予算を増やす傾向にある一方で、制作作業は領域が拡大し、かつ内容が細分化されつつある。大小さまざまな規模で案件数が増えていることなどから、相対的に1件あたりの単価は低下傾向にある。
前年からの復調傾向のなかで2011年に入って好調な伸びをみせていたが、3月の東日本大震災の影響は大きく、特に3月および4~7月に企業のデジタルコミュニケーションは鈍化し、キャンペーンやプロモーションの中止や延期、規模縮小などを決断する企業が多数あったため、インターネット広告制作費も大きな影響を受けた。特に自動車などの製造業、食品業などにおいて停滞傾向は顕著だった。しかしその後は経済の回復とともにデジタルコミュニケーションの動きも再び活発化した。停滞していた食品業はこの時期に復活した感があるが、自動車などの製造業には一部に停滞感が残った。
夏以降は、震災影響が残る企業を除いて、各社とも前年同期を上回る勢いでキャンペーンやプロモーションが展開されていった。しかしながら7月に発生したタイの洪水は日本経済にも大きな影響を与え、タイからの製品や部品の供給に支障が出たことにより、自動車などの製造業の一部においてキャンペーンやプロモーションの中止や延期、規模縮小を余儀なくされた例もあった。
年間を通してみると、携帯電話キャリア、食品、飲料などのキャンペーンは前年と同様に増加傾向にあった。また、震災の影響や節電への取り組みの拡大などもあり、エコ・節電関連のキャンペーンやコンテンツが各業種の企業において一層増加した。
スマートフォン端末やタブレット端末などの急速な普及により、スマートフォン用サイトやアプリの制作案件が前年に比べて急増した。さらに、TwitterやFacebookなど様々なSNS施策の活用は前年よりも積極・拡大化の傾向にある。また、デジタルコミュニケーションの多様化により、システム開発まで領域が拡大する案件も多数発生していることから、インターネット広告制作費は増加傾向となった。