プロモーションメディア
プロモーションメディア広告費:2兆1,417億円(前年比99.1%)
ウェブとリアルのすみわけがはっきりし、PDCAに基づく使い分けが進んだ1年であった。リアルな体験を求める人が多いのか「展示・映像ほか」分野が伸長している点は興味深い。現在の「日本の広告費」の推定範囲に入っていない「サンプリング」や「ポップアップストア」などのリアルプロモーションも改めて注目された。
屋外広告 3,188億円(同100.5%)
広告板は、東北地区の復興需要、北海道・九州・関西地区への外国人観光客増に伴う出稿がけん引し微増。
ネオンは、改修・修理がメインで減少したが、独特の光をあえて活用する動きもあった。LEDは前年に引き続き大きく成長した。
ポスターボードは、安定した出稿業種にスマホアプリの出稿が加わり微増した。
屋外ビジョンは、官公庁による出稿の増加や金融、情報・通信などによる新規出稿の増加で堅調に推移した。外国人観光客を狙った取り組みが進展した。
スタジアム看板は、新規の掲出が少なかったこともあり、微減。
広告幕は、ポスターボードと同様の傾向にあり、微増。
商業施設メディアは、冬の風物詩であるクリスマス イルミネーション以外にも、年間を通して各種施設イベントで出稿がみられた。
交通広告 2,044億円(同99.5%)
車内や駅構内のデジタルサイネージは堅調に伸びた。特に、関西・中部地区では新規の設置があり、出稿が増加した。一方、中づり・まど上・ドア横などの車内メディアは前年に引き続き減少した。空港関連は、外国人観光客の増加が見込める空港において、伸長した。
業種別では、「飲料・嗜好品」「金融・保険」は堅調。「情報・通信」(SNSやゲームを主体としたスマホアプリ)は前年に引き続き増加した。
折込広告 4,687億円(同95.3%)
新聞の部数減に加え、折込枚数と用紙サイズの縮小に伴い、減少した。
年間を通して大きな出稿増につながる案件がなく、消費増税前の駆け込み需要による反動減も影響し減少が続いた。
スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアなど日常利用の多い業種は、伸長。前年まで増加傾向にあった求人は一部エリアでは好調であったものの、全国的にみると微減となった。不動産は、マンション・建売ともに大きく減少し、遊技場、健康食品、化粧品関連なども減少した。
地域別では、北海道が前年並みであった以外は減少した。
DM 3,829億円(同97.6%)
ウェブマーケティングを中心に展開してきた企業が、DMを積極的に活用するケースが目立った。
一方、もともとDM中心の企業がいったん全てをウェブ展開にしてみたものの、費用対効果の観点から、紙媒体のDMが有効と判断し使用するケースもあった。ウェブで獲得できる層とそうでない層を明確に分ける傾向にある。
無宛名便市場(宛名なしDM)は、前年に引き続き伸長した。「エリアマーケティング」の一手法として知名度とニーズがさらに高まった。
業種別では、Eコマース領域でDMを活用するケースが増え、「情報・通信」「金融・保険」「流通・小売業」などが増加した。
フリーペーパー・フリーマガジン 2,303億円(同99.4%)
全般に設置型は減少傾向。一方、ルート配布やエリアに特化したものは堅調に伸びた。地方では安否確認などを含む一定の需要がある。ウェブやイベント、カルチャー教室など、周辺事業も活発化した。
フリーペーパーは730億円(同96.8%)
北陸新幹線の開業があった信越・北陸地域では、価格競争の緩和や単価の上昇により堅調に推移した。
業種別では、求人情報、グルメ・飲食業、食品、薬品、化粧品が増加した。一方、美容関連、ショッピング関連といった業種の減少傾向がみられた。
地方創生が注目される中で、エリアマーケティングの一手法として、地域フリーペーパーを活用する動きもみられた。
フリーマガジンは1,573億円(同100.7%)
フリーペーパーと同様の出稿傾向がみられた。
幼稚園児を持つ親向けや高所得者向けなどの読者を限定したフリーマガジンは好調に推移。インバウンド需要に向けた多言語対応のフリーマガジンも出始めている。
業種別では、特に旅行、ホテル、自動車などの出稿が増加した。
ウェブマガジンのみだった会社が、紙媒体のフリーマガジンを出す動きもあった。
POP 1,970億円(同100.3%)
新しいタイプのデジタルサイネージやモニターを埋め込んだディスプレイなど、比較的制作費の高いPOPが増加し、前年を上回った。購買行動のオムニチャネル化が進む中、改めてリアルな店舗の重要性が高まり、商戦期の売り場づくりが活性化した。一方、紙からウェブへのシフトも高まっており、マイナス要因も顕著化した。
全体的にPOPが縮小気味の家電量販店でも、ヘッドフォン売り場や白物家電売り場では積極的なPOP展開がみられた。新しいカテゴリーの商品が登場するとPOPも活発化する傾向にある。ドラッグストアやホームセンターではモニターPOPが増え、流通全体では、前年並みまたは微減傾向。
業種別では、日用品まわり、自動車関連品などは堅調であったが、コモディティー化の進む家電は減少した。
POP自体が進化している中、予算をかけるPOPと、そうでないPOPの両極化が進展した。
電話帳広告 334億円(同80.1%)
発行周期の見直しに伴い発行がなかった電話帳もあり、広告費は減少した。しかし、表紙の刷新、年間行事カレンダーの追加や、全住戸・全事業所への配達に対応した新しいタイプの電話帳は、前年に比べ改善している。
「エリアマーケティング」の一手法として活用され、さらにウェブでの展開も新しく進化することで、紙とウェブの総合力が高まっている。
展示・映像など 3,062億円(同107.7%)
各企業のプライベートイベント、スマホゲームなどの特定ファン層イベント、下半期に増加した大型の展示会などで大きく伸長した。全般的に厳しい状況から脱しつつある。
東京オリンピック・パラリンピックの影響で、全体に東京一極集中の傾向が強いが、徐々に関西・北陸地域も増加した。今後は他の地域に拡大していくことが期待される。
業種別では、家電、自動車、ゲーム関連などが伸長した。一方、官公庁関連は横ばいだった。
映画広告(シネアド)費は、期待作品の増加に伴い伸長した。ソーシャル系の企業や官公庁などによる新規出稿がみられた。
<参考推定値>
2015年 商業印刷市場 2兆500億円(前年比101.0%)
そのうち、ポスター・チラシ・パンフレットは1兆2,680億円(同101.0%)
急速にデジタル化が進んできたが、全ての人にあまねく告知するにはやはり紙も必要であると感じられた1年ではなかっただろうか。ウェブと紙のハイブリッドな伝達手段はこれからも進化していく。デフレの歯止めと高齢化社会に対し官民一体となった利用促進が業界を押し上げていくだろう。