背景

(1)減速懸念強まるも、緩やかなプラス成長を維持した日本経済

2018年(平成30年)の日本経済は、景気の減速懸念が強まったものの、緩やかな拡大基調を維持した。1-3月期の実質GDP成長率は前期比0.2%(年率換算0.9%)減、4-6月期が0.6%(同2.2%)増、7-9月期が0.7%(同2.6%)減、10-12月期が0.3%(同1.4%)増だった。2月の大雪、7月の西日本豪雨、9月の台風21号、北海道胆振東部地震など度重なる自然災害に加え、米中貿易摩擦による中国経済の減速などにより、GDP成長率は不安定に推移した。景気の減速感が懸念されたものの、通年でみるとプラス成長となった。7-9月期のマイナス成長は自然災害による一時的な落ち込みで、10-12月期はその影響が解消に向かい、復興を目的とした第1次補正予算による公的支出が増加し、個人消費や設備投資も反動増で回復。内需を中心に、日本経済は緩やかなペースながらも成長を続けた。
2018年のGDP成長率は、実質で0.7%、名目で0.6%と7年連続のプラス成長となった。(2019年2月14日四半期別GDP1次速報より)

企業業績、売上は増加も利益は減少傾向

上場企業の収益は、18年度通期(19年3月期)は全産業売上高が前年同期比5.1%増、経常利益が同2.0%増、最終利益は同1.4%減の見込み。最終利益は3期ぶりに減益に転じる見通し。

雇用情勢はさらに改善

雇用情勢はさらに改善した。 2018年の年平均完全失業率は2.4%と前年を0.4ポイント下回った。さらに12月完全失業者数は159万人と前年同月比で15万人の減少、103ヵ月連続の減少となった。また、2018年平均の有効求人倍率は1.61倍と前年平均を0.11ポイント上回り、9年連続の上昇。1973年(1.76倍)以来45年ぶりの高水準となった。

円安基調・株価後退・原油安傾向

円相場は円安基調。ただし、 12月は米国経済の減速懸念から、やや円高傾向となり、最終日(12月28日)は前年末より約2円高い110円39銭で取引を終えた。
株価は、10月2日にはバブル後最高値圏の2万4,270円をつけたものの、米中経済問題などから、下落傾向に転じ、最終日(12月28日)の終値は2万14円77銭と、前年末の終値(2万2,764円94銭)を2,750円(約12%)下回った。年末終値の前年割れは2011年以来、7年ぶり。
原油価格は、主要産油国の協調減産やアメリカのイラン経済制裁の再開決定を背景に10月頃まで上昇基調で推移したが、アメリカがイラン産原油の禁輸制裁で日本などを一時的に適用除外したことなどにより、11月からは下落に転じた。国内石油製品価格もこれに連動。全国のレギュラーガソリンの平均店頭価格は10月下旬に160円/リットル台まで上昇したが、その後は値下がりし、12月中旬から下旬は147円前後の値動きとなった。

(2)国内消費関連~白物家電やドライブレコーダーが好調。訪日外国人数が3,000万人突破

●百貨店は、インバウンド消費は堅調だったものの、自然災害の影響により、前年比0.8%減と2年ぶりのマイナス。●スーパーマーケットは、同0.2%減と3年連続の減少。●コンビニエンスストアは、同0.6%増と2年ぶりのプラス。●白物家電(民生用電気機器)の年間国内出荷金額は同4.1%増と好調。記録的な猛暑により、エアコンが同9.4%増と絶好調。電気洗濯機も同6.1%増と伸び、電気冷蔵庫も前年を上回った。●AV機器(民生用電子機器)の年間国内出荷金額は同1.1%増と2年ぶりに前年超え。●国内新車販売は年間合計で同0.7%増の527万2,067台と2年連続で前年を上回った。●自動車関連では、前年のあおり運転事故の影響によりドライブレコーダーの需要が急増。1-9月の出荷台数は前年同期の2倍超えだった。●携帯電話端末は、年間国内出荷台数が前年比6.3%減。スマートフォンは同2.6%減の3,116.7万台。●パソコンは4-9月の出荷台数が前年同期比6.4%増の524.3万台と3年連続で増加。法人向けが好調。●タブレット端末は年間国内出荷台数が前年比5.7%減の814万台と2年ぶりにマイナスとなった。●デジタルカメラの年間国内出荷金額は、全体で同13.9%減と低調。ただし、レンズ交換式は、大型画像センサー搭載のフルサイズと呼ばれる高級ミラーレスカメラが人気を博した。●住宅着工戸数は、貸家の減少が影響して年間合計で同2.3%減と2年連続の減少となった。●マンションの全国年間発売戸数は、同3.7%増と2年連続で増加。●旅行(日帰りを含む)は、国内旅行が相次いで発生した自然災害により低迷したが、海外旅行は堅調だった。年間の出国日本人数は同6.0%増の1,895万人と過去最高となった。訪日外国人数は9月に台風や北海道地震の影響で前年を下回ったが、増加基調を維持。年間では同8.7%増の3,119万人と史上初めて3,000万人を突破した。●外食市場は堅調。全店ベースの年間売上高は同2.3%増だった。特にファーストフードやディナーレストランが好調、ファミリーレストランや喫茶も健闘。低迷していたパブレストランや居酒屋も回復傾向が見られた。

(3)イベント・話題商品など

2018年は「第23回オリンピック冬季競技大会(2018/平昌)」「平昌2018パラリンピック冬季競技大会」と「2018 FIFAワールドカップ ロシア大会」などの国際スポーツイベントが大きな注目を集めた。また、平成を賑わせた商品やサービスなどが人気を呼んだ。その象徴が平成の歌姫こと「安室奈美恵」。ラストアルバム、ファイナルツアーとそのDVD・ブルーレイなどが軒並み記録的な大ヒットとなるなど、一大ブームを巻き起こした。12年ぶりに復活・販売された犬型ロボット「aibo」、1990年代に流行したユーロビートのカバーソング「U.S.A」、20年ぶりにフルモデルチェンジした軽四輪SUV「ジムニー」などもヒットした。一方、新時代感覚の新商品やサービスも人気を呼んだ。AIスピーカーが販売を伸ばし、好きな音楽に合わせて15秒の口パク動画などを投稿できるSNSアプリ「TikTok」、YouTube上で動画などを配信する架空のキャラクター「バーチャルユーチューバー」、世界初のデジタルアートミュージアム「チームラボボーダーレス」が話題を集め、「スマートフォン決済サービス」や「eスポーツ」も広がりを見せた。また、製作費が300万円という低予算のインディーズ映画「カメラを止めるな!」が興行収入31億円超の異例の大ヒットを飛ばした。さらに、健康志向を追い風に「サバ缶」が大ブームとなった。