背景

(1)日本経済は、物価高などもあったもののプラス成長

2023年の日本経済は、国内総生産(GDP)の実質成長率を四半期別にみると、1-3月期(前期比101.1%)、4-6月期(101.0%)とプラスになったものの、7-9月期(99.2%)、10-12月期(99.9%)と2期連続でマイナス成長となった。内需では、自動車販売の減少なども押し下げ要因となり、民間最終消費支出の10-12月期が前期比99.8%、民間企業設備投資も、99.9%と3四半期連続のマイナス。さらに半導体製造装置関連の投資や人手不足が響き、工場などの建設投資もマイナスとなった。
暦年ベースの実質GDP成長率は101.9%、名目GDP成長率は105.7%となった。
(2024年2月15日四半期別GDP 1次速報より)

企業業績、増収増益

上場企業の2023年度通期(2023年4月-2024年3月期)は、全産業売上高が前年度比103.1%、最終利益が112.4%の見通し。

雇用情勢は安定的

完全失業者数は、3月に195万人とやや高まるも概ね180万人前後で推移。完全失業率は2023年平均で2.6%と比較的低い水準が継続した。また、2023年平均の有効求人倍率は、1.31倍となり、前年の1.28倍から0.03ポイント上回った。

円安傾向、株価はバブル後高値を記録、原油価格上昇

2023年上半期は1ドル130円台で推移したものの、アメリカの利上げ継続見通しにより10月に1ドル150円台に達した。その後、日米金利差縮小を背景に緩やかな円高となり、最終日(12月29日)は前年より約9円安の141円40銭で取引終了した。

株価は、新型コロナ5類移行による経済活動の活性化、インバウンド需要の拡大、円安の進行による輸出銘柄の好調さなどが相まって、6月にバブル崩壊後の高値3万3,772円を一時的に更新。最終日(12月29日)の終値は3万3,464円と、2年ぶりの高値となった。

原油価格は、世界経済後退による需要減速を受け、サウジアラビアの減産延長やロシアの輸出削減維持などを理由に価格が上昇し、90ドル前後の高値圏で推移。国内レギュラーガソリンの店頭価格は、原油価格の上昇に伴い8-9月のピーク時には180円台後半まで上昇したが、9月から実施された新たな激変緩和措置により170円台まで緩和した。

(2)国内消費~人流回復で流通、旅行、レジャーが復活

●百貨店は、来店客数の増加に加え、高付加価値商材やインバウンド需要の復活がけん引し、2023年売上高(既存店ベース)百貨店売上高は前年比108.8%、2019年比でも94.2%の水準まで回復。●コンビニエンスストアも、人流の回復を受けて全店で104.3%、既存店で104.1%となり、2019年比でも全店、既存店ともにプラスとなった。●スーパーマーケット(既存店ベース)は、食品が堅調に推移したほか、猛暑を受けた夏物衣料や旅行・帰省関連などの好調な動きを受け、前年比102.2%となった。●白物家電(民生用電気機器)の年間国内出荷金額は前年比98.9%。金額に占める割合の大きいルームエアコン、電気洗濯機などは増加したものの、全体的には25カテゴリーのうち16カテゴリーで減少となった。●黒物家電<AV機器(民生用電子機器)>の年間国内出荷金額も全体的に苦戦。映像機器は前年比87.3%、オーディオ関連機器97.2%、カーAVC機器91.6%と調査対象カテゴリー全てで出荷額が減少となった。●国内新車販売は、477万9,087台と前年比113.8%。購買意欲の高まりに対して供給が追い付いていなかった市場に、半導体不足の解消や部品生産が回復したことによって新車販売台数が増加した。ドライブレコーダーの年間国内出荷台数は前年比78.1%。あおり運転の社会問題化に伴い特需が続いていたものの、法人車両を含めて装着が一巡し、出荷が大きく落ち込んだ。●デジタルカメラの年間国内出荷金額は旅行・行楽需要の回復を受け、レンズ一体型とレンズ交換式合計で103.7%となった。●住宅着工戸数は、前年比95.4%と3年ぶりの減少。持家は88.6%、貸家は99.7%、分譲は96.4%となった。●旅行業界は、国内旅行消費額が2023年1-3月期から7-9月期までを通して、前年同期比を上回った。訪日外客数は2019年の水準にはおよばないものの、前年比約6.5倍の2,507万人まで回復。出国日本人数は962万人と前年比約3.5倍の規模となった。●映画業界は、1996年に連載を終えたバスケ漫画がアニメ映画として26年ぶりに復活し、興行収入157億円を超える大ヒットとなった。また、国内外のアニメ作品も興行収入100億円を超えるヒット作がみられた。●テーマパークも前年に続き売上高が増加。新エリアが開業するテーマパークもあり好調を維持するとみられている。●外食業界は、2023年の売上高が前年比114.1%、2019年比107.7%と顕著に回復。需要回復が遅れていた「パブレストラン/居酒屋」は前年比134.9%と伸長率が高かったものの、コロナ禍前の水準までは回復しておらず、インフレによる食材や人手不足に伴う賃金の高騰など、厳しい状況が継続している。

(3)話題のイベントや商品など

2023年は新型コロナが従来の2類相当から5類へ移行し、コロナ禍前の日常へ回帰する事例が相次いだこともあり、その影響下から開放される1年となった。一方、前年より続くインフレによるコストプッシュ圧力が継続し、総じて物価が上昇。大企業を中心とした賃上げの動きもみられるが、生活防衛意識が高まる1年でもあった。
上記状況の中、2023年は前年に輪をかけて幅広いカテゴリーの消費が促進。その中でも最大の話題となったのが、対話型生成AIをはじめとする生成AIおよびAI関連商材・サービスであると考えられる。公開2ヶ月でアクティブユーザーが推定1億人を突破し、従来になかったレベルのスムーズさで自然言語を用いて対話できる体験が世界に大きな衝撃を与えた。IT大手からのサービスリリースラッシュもみられ、市場の活況は当面続くとみられる。
「コスパ(コストパフォーマンス)」がヒットにつながる事例は、従来みられなかったカテゴリーにも波及。“コンビニ感覚で通える「コンビニジム」”というコンセプトを打ち出した会員制ジムは、低価格で時間制限なく普段着のままでトレーニング可能な手軽さや、自由に利用できるセルフエステ機器・脱毛器を設置するなど、トレーニングに無関心な層も取り込み、開始から僅か1年2ヶ月で約84万人の会員を獲得した。
近年の気候変動に伴う「猛暑」対策用品について、高機能アイテムのヒットがみられた。2023年2月発売のノンガスミストタイプの日焼け止めは「外出時の塗り直し用」といった訴求が注目を集め、他の日焼け止めとの併せ買いでブランド全体の売り上げも大きく伸長した。また、男性用日傘の売り上げも大きく飛躍。高性能モデルが人気となり、市場最大手レイングッズメーカーの販売本数は2023年9月末に40万本を突破するなど、美容に関心の高い男性の間で使用されていたアイテムが、猛暑により一般男性にも広がりをみせた。
テレビCMなどテレビでの露出をきっかけにヒットした商品も複数みられた。「飲料・嗜好品」カテゴリーでは、2023年3月に発売されたプレーンサワーが、どんな食事にも合う飽きのこない味に加え、味の想像がつきにくいネーミングをテレビCMで強調したクリエイティブがトライアル需要を喚起し、ヒットにつながった。また、ふっくらした食感が特徴のおにぎり専門店は、テレビ番組に取り上げられたことで人気が過熱。多少高めでもそれ以上の満足度を得られる「格安プレミアム」商品として脚光を浴びた。