背景
(1)日本経済は、好調な個人消費に支えられプラス成長
2024年の日本経済について、国内総生産(GDP)の実質成長率を四半期別にみると、1-3月期(前期比99.5%)はマイナス成長となったものの、個人消費の伸長や自動車購入の回復などが寄与し、4-6月期(100.7%)、7-9月期(100.4%)、10-12月期(100.7%)と3期連続で増加した。
暦年ベースの実質GDP成長率は100.1%、名目GDP成長率は102.9%となった。
(2025年2月17日四半期別GDP1次速報より)
企業業績、増収増益
上場企業の2024年度通期(2024年4月-2025年3月期)は、全産業売上高が前年度比 103.5%、最終利益が106.2%の見通し。
雇用情勢は前年並
完全失業者数は、7月に187万人と高まるも年間を通して概ね170万~180万人前後で推移。完全失業率は年間を通して2.5%前後と比較的低い水準が継続した。一方、2024年平均の有効求人倍率は、1.25倍となり、前年の1.31倍から0.06ポイント下回った。
一時円高進むも円安傾向、株価は前年に続き上昇し史上最高値、原油高も継続
2024年上半期は1ドル150円台で推移したものの、日銀総裁の円安容認発言などを受け6月に一時1ドル160円台まで進行。その後、アメリカの景気悪化懸念の影響により急激な円高となり9月の終値は142円台となった。12月以降はアメリカ大統領選挙や日銀の利上げ見通しの不明瞭さなどを要因とした円安が進行し、最終日(12月30日)は前年より約16円安の157円 89銭で取引終了した。
株価は、新NISAによる新規層の流入や好調な米国株式市場などの影響により上昇基調で推移し、7月に一時42,426円77銭の史上最高値を記録した。8月の日銀の利上げ観測などで株価が大幅下落するなどの値動きがみられたものの、最終日(12月30日)の終値は3万9,894円と、年末値として35年ぶりに最高値を更新した。
原油価格は、年始より中東情勢の悪化などの理由で上昇を続けたものの、その後は世界的な原油需要の伸び悩みもあり下落傾向となった。国内レギュラーガソリンの店頭価格は「燃料油価格激変緩和補助金」により年間を通してリッターあたり175円前後で推移した。
(2)国内消費~インバウンド需要で流通、旅行、レジャーが回復
●百貨店は、訪日外国人客を中心とした免税売上高が市場をけん引し、2024年百貨店売上高(既存店ベース)は前年比(以下、略)106.8%、2019年比も103.6%まで回復。●コンビニエンスストアは、物価高に対応したキャンペーンを実施し、全店で101.2%、既存店で101.1%となり、2019年比でも全店、既存店ともに前年を上回った。●スーパーマーケット(既存店ベース)は、年間を通して買上点数が減少したものの、店頭価格の上昇や農産品の相場高で食料品の売り上げが伸長。住宅関連用品も堅調に推移し、102.7%となった。●白物家電(民生用電気機器)の年間国内出荷金額は101.4%。猛暑の影響によりルームエアコンが伸長した。高性能製品人気、インバウンド需要などの要因で電気シェーバー、ヘアドライヤーも好調に推移した。●黒物家電<AV機器(民生用電子機器)>の年間国内出荷金額は、オーディオ関連機器92.1%、カーAVC機器84.4%と減少したものの、薄型テレビが全体の出荷額を押し上げ、映像機器が102.8%とカテゴリー中唯一前年を上回った。●国内新車販売は、92.5%の442万1,494台となった。認証試験での不正が発覚したことによる生産停止が影響し、販売台数が伸び悩んだ。ドライブレコーダーの年間国内出荷台数は、コンシューマ用は99.6%と健闘するも、業務用は38.5%と大きく減少し、全体では86.0%となった。●デジタルカメラの年間国内出荷金額は、レンズ一体型・交換型ともに金額・数量が前年同期を上回り、合計では金額が115.8%、数量では111.0%となった。●住宅着工戸数は、96.6%と2年連続の減少。持家97.2%、貸家99.5%、分譲91.5%と、いずれも減少となった。●旅行業界は、国内旅行消費額が年間を通して前年を上回った。訪日外客数は前年比約1.4倍の3,687万人となり、過去最高を更新した。出国日本人数は前年比約1.3倍の1,300万人となり前年を上回ったものの、2019年の水準には至らなかった。●映画業界は、人気推理漫画とバレーボール漫画の国内アニメ作品2本が興行収入100億円を突破。一方、洋画実写は低調で、年間興行収入ランキングのトップ10にランクインした作品はみられなかった。●テーマパークは、パーク一体型ホテルが併設された新エリアオープンに伴い、宿泊客や有料券利用の増加などで客単価が向上し、前年に続き売上高が増加。●外食業界は、店舗数が99.7%と減少したものの、インバウンド需要の好調もあり売上高108.4%、利用客数104.3%、客単価103.9%と、いずれも前年同期を上回った。
(3)話題のイベントや商品など
2024年は6月に実質賃金が27ヶ月ぶりに増加に転じるなど、前年と比較して物価高の影響が低減したことも手伝い、個人消費が緩やかな持ち直しをみせた。一方、1月1日に能登半島を中心に発生した令和6年能登半島地震や8月8日に発生した日向灘地震を受けた南海トラフ地震臨時情報の発令、8月末~9月に能登半島を再度苦しめることになった台風・豪雨被害などの自然災害の頻発で防災意識が高まる1年でもあった。
近年の物価高により、消費者の生活防衛意識が高まる中で大きな話題となった新NISAは、2024年1月のルール改正により投資枠が大幅拡充となったことや、2024年3月に日経平均株価が初めて4万円台に達するなどの好条件もあり、初心者や若年層の新規開設が増加。ルール改正後6ヶ月で口座数が約300万を超え、買付額は半年で10兆円を突破するなど、日本人の意識を「貯蓄」から「投資」へと変えた。また、2023年7月に日本に上陸した中国の越境ECサイトは、低価格に加え、ファッションの他にも家電やデジタル機器、家具、オフィス用品など幅広い商品を展開する利便性が受け急激に利用者が増加。2024年5月の利用者は約3,106万人に達した。
定番をアップデートさせた結果、ヒットに繋がった商品もみられた。6月に発売されたレモンサワーは、プルタブを開けるとスライスレモンが浮かび上がる新規性や、時間の経過でスライスレモンから味が染み出すことで熟成する新体験が話題となり、レモンチューハイとしては高価格にも関わらずヒット商品となった。従来の商品にはなかった生活しながら肩こり治療ができる高周波治療器は、羽織るだけで治療が可能という仕組みが「ながら」需要とマッチし、計画の5倍の売り上げを記録。また、商品を購入することで寄付ができ、日本の風物詩の保全に貢献できるビールは、4月の発売開始3ヶ月で年間販売目標の約7割を突破した。
自然災害が毎年のように起こる中、防災意識の高まりにより新聞紙を燃料にできる炊飯器の売り上げが伸長、キャンプ用やギフト需要として人気を博した。電源が不要でコンセントを占有せずに使用できる設置型蚊取りも手軽さから支持を獲得した。

「2024年 日本の広告費」 動画(67秒)
「日本の広告費とは」 動画(30秒)