プロモーションメディア

プロモーションメディア広告費:1兆6,850億円(前年比101.0%)

屋外 2,889億円(前年比100.8%)

  • ラグジュアリーブランド、飲料、コンテンツ、人材系を中心に多くの業種で屋外広告が活用され、前年に続き増加した。インバウンド需要の高まりに伴い、関連業種での広告出稿が目立った。
  • 短期看板は、人通りの多い繁華街に設置された大型ボードの需要が堅調であった。屋外ビジョンは、渋谷、新宿、表参道などの都心部で需要が高まり、販売価格の値上げなどもあり成長した。
  • ネットワーク型のデジタルOOH媒体は、位置情報などのデータを活用したプランニングと広告配信が可能な媒体として定着し、多様な業種での活用が拡大し成長した。ターゲットオーディエンスが多い時間帯や気温・天気などの外部条件と連携して最適なタイミングで放映する取り組みも増加し、市況回復の一助となった。
  • 2025年には、テレビやインターネット広告との統合メディアプランニングにおいて、認知系・リーチ系メディアとしてのデジタルOOHアドネットワークの需要が高まると予想される。新たなデジタルOOH媒体の設置も予定されており、インパクトのあるメディアを含め活用がさらに進み、市場の拡大につながると考えられる。
  • 日本において継続的にOOH広告業界の共通基盤となる接触者に関する計測データを提供し、業界の発展に寄与するべく、日本版OOHメジャメント標準化検討準備委員会の活動が本格化、2025年度の実装を予定している。

※キャンペーンの目的に応じて柔軟な配信が可能なデジタルサイネージネットワーク。

交通 1,598億円(前年比108.5%)

  • 鉄道は、車内ビジョン、中づり、ステッカーなどの車両内の媒体が前年から大きく伸長。駅媒体も、新規大型媒体の新設、大型サイネージや大型ボードなどのジャック系媒体への高い需要もあり堅調に推移した。飲料、コンテンツ、ファッションなどの業種で積極的な出稿もあり、全体を底上げした。2025年は、テレビやデジタルとの統合メディアプランニング実現の期待感も高まり、デジタルOOHアドネットワークを中心とした認知系・リーチ系メディアへの需要が予想される。また、屋外広告と同様、ターゲットオーディエンスが多い時間帯や気温・天気などの外部条件と連携して、最適なタイミングで放映する取り組みも増加し、市況回復の一助となった。媒体社自らがオリジナルコンテンツを制作し放映する取り組みが本格化。人気コンテンツも誕生するなどメディア自体の注目率向上に繋がっている。
  • 空港は、インバウンド需要の高まりにより、デジタルサイネージを中心に前年を上回った。2025年もこの流れが続くものと想定され、堅調に推移すると予想。
  • タクシー広告は、一部媒体の値上げや新たな媒体メニューの新設が売り上げに一定寄与したものの、BtoB企業の予算規模縮小に伴い、前年を下回った。コンテンツタイアップ型などの広告商品も一層定着した。2024年後半では、高級消費財を中心としてBtoC商材の活用も増えてきており、2025年は堅調に推移すると予想される。

折込 2,442億円(前年比94.8%)

  • 新聞購読率の減少や経費高騰に伴う販促費の抑制により出稿が減少し、前年を下回った。
  • 物価高の影響で節約志向が高まり、流通業を中心に生活支援策を訴求する媒体として活用された。また、10月は第50回衆議院議員総選挙に伴い、出稿が増加した。
  • 業種別では、スーパー、家電量販店、ファミリーレストランなどが増加。サービス業では、旅行・宿泊業や買い取り業者が好調に推移した。一方、百貨店や教育・教養は減少した。
  • 地域別では、北関東、首都圏、中部が出稿量上位となった。一方、沖縄、九州、北海道など地方圏で減少し、地域差が顕著となった。
  • 媒体環境では、新聞購読率の減少を補完するため、ポスティングとの併用やデジタル連携が加速。新聞販売店によるポスティングサービスの整備が進み、規模が拡大している。

DM(ダイレクト・メール) 2,863億円(前年比92.3%)

  • 印刷資材などの制作費高騰による広告主のマーケティング予算の見直しや、2024年10月の郵便料金改定などの影響もあり、前年を下回った。大量発送型のDMから、購買決定に対する効果の高いDM需要への変化により、発送数などが絞られ減少傾向が継続している。
  • 顧客データを活用したパーソナライズDMや、CRM(顧客関係管理)などのデジタル施策と連動したDMへの需要は高い。無宛名便DMは、不動産業などでエリアマーケティング効果が評価され、従来の折込から移行する動きもあり、増加している。
  • DM制作関連市場(参考:「日本の広告費」関連市場を参照)との合計では3,982億円となる。

フリーペーパー 1,306億円(前年比96.5%)

  • グルメ・飲食、求人情報、住宅・不動産、ショッピングなどの業種が回復したものの、依然として物流費や原材料などの高騰が影響し、発行部数や発行頻度、広告主数などが減少したため前年を下回った。
  • 地域密着型フリーペーパーの需要は引き続き高く、地域産業活性化のためのメディアとして活用する傾向がみられた。制作・取材力をもって行政・自治体からの広告獲得拡大を図るため、体制強化に取り組むフリーペーパーも増えてきている。
  • デジタル印刷や他メディアとの連携などの施策も定着し始めた。

※フリーペーパーは、タブロイド判タイプのフリーペーパー・雑誌タイプのフリーマガジン・電話帳の総称。

POP 1,483億円(前年比101.5%)

  • コロナ禍以降の人流回復に伴うリアル店舗でのコミュニケーションの必要性が前年に続き高まった。また、デジタルプロモーションが進化することに伴い、リアル施策との掛け合わせがさらに加速。一方、業界の売り上げに関しては、以前のようなPOPの大量生産ではなく、顧客体験の充実や高度化が求められており厳しい市況が続く。
  • ECとリアル店舗の使い分けが進み、リアル店舗では「商品を体験する場」「商品を受け取る場」「接客を受ける場」という認識が増え、商品体験を重視する売り場やPOP広告が増加。また、ブランドコミュニケーションをより加速させる施策として、ポップアップストア・スペースの引き合いが増加し、売り上げをけん引している。
  • 新しい商業施設の開業も増え、インバウンド需要もありドラッグストアなどの小売の売り上げが増加傾向となっている。また、ドラッグストア商材(ヘルスケア・美容)やアパレルなどでは、店頭POPのニーズが増え、より顧客に合わせた情報提供が求められるようになってきた。一方、家電や通信など商品・サービスがコモディティ化(一般化)してきた業界では、店頭POPのニーズは減少し、接客や実演などリアルな場を活かしたコミュニケーションが活発化してきている。
  • 今後は、製品プロモーションの潮流としてIP(アニメ・キャラクター・音楽)コラボ施策が伸長し、店頭に新たな年代を呼び込んだり、商品購買点数を増やす効果が期待できると予想される。また、店頭POPとIPは相性が良く、グラフィック面を大きくとることで、定番化したサービスや商材にも新たなスポットが当たるなどの効果が見込まれる。
  • 環境に配慮した施策は、企業によって取り組みへの温度差があるが、年々増加傾向にある。今後、法改正など外的要因により一気に加速する可能性もあるため、注視されていくと考えられる。

イベント・展示・映像ほか 4,269億円(前年比111.0%)

  • イベント領域は、メーカーの販促イベントや周年イベントなどが活発化したものの、大規模イベントが開催されなかったこともあり、1,656億円(前年比97.2%)と前年を下回った。
  • 2025年は大阪・関西万博をはじめとした大規模イベントの開催年であるため売り上げの増加が見込まれる。また、イベントの質的にも演出や運営面でのDX化が加速し、新たな手法の開発、実施が求められるようになってきている。
  • 展示領域では、テーマパークの大型投資が続き、専門店市場の海外アパレルブランド、ホテル、企業PR施設、自動車関連店舗の新装・改装需要やインバウンドなどの拡大が追い風となり、需要が回復した。また、大阪・関西万博に向けて博覧会関連市場も増加した。一方、複合商業施設市場や博物館・美術館などの文化施設は大型案件が減少した。
  • 都市再開発やインバウンド関連などの需要は堅調であり、投資が継続すると考えられるものの、物価高の長期化による消費マインドの悪化、深刻な人手不足や物流コストの増加などによる供給制約、米国の通商政策の行方、国際情勢の緊迫化などが懸念される。
  • 多くの地方自治体は、行政が主導する形で都市再生整備計画などを展開し、中心部で公共公益施設の誘導・整備が進められており、地域や施設の特性を踏まえた新たな魅力や賑わいを形成している。
  • 映像関連は、AIやDXなどの技術革新により企業のマーケティング・プロモーションの活動における動画映像の重要性が増しており、オンライン展示会やウェブ講演会・セミナーなどに付随する配信動画、商品サービス紹介動画などの制作需要が前年に続き高まった。動画を活用した教育やエンターテインメント分野でも動画映像が拡大傾向にある。技術進歩によりさらに多様化しており、新たなビジネスチャンスを生む市場になることが予測される。
  • シネアド(シネマ・アドバタイジング)は、邦画アニメを中心に話題作が多く公開され、映画業界が比較的好調だったこともあり前年を上回った。ラグジュアリーブランドの広告出稿は前年に続き堅調で、ゲームやコンテンツ系をはじめ、様々な業種での活用が進んだ。この傾向は2025年も続くと予想される。

参考「日本の広告費」関連市場

※「日本の広告費」推定範囲と重複する市場領域もあるため、「日本の広告費」には含まれない

商業印刷市場 1兆7,600億円(前年比98.3%)

  • デジタル化による紙離れや郵便料金の値上げ、配送コストの上昇などがマイナス要因で、デジタル印刷技術の進化とともに様々なビジネスモデルの登場が相まって小ロット・カスタマイズ印刷の需要へのシフト。これらのマイナス要因・市場の変化によって前年を下回る結果となった。
  • 2025年は大阪・関西万博開催による需要拡大が期待されるが、業界全体としては厳しい市場環境と予想。価格転嫁、DX化の推進、市場の多様化、提案型への変革、付加価値化といった課題に取り組むことで様々な分野で新たな機会を生み出し、印刷業界の発展に繋がると思われる。

ポスティング市場 1,481億円(前年比100.6%)

  • 市場全体は堅調に推移し、前年を上回った。大都市圏を中心に新聞折込の代替として官公庁・自治体関連の全戸配布などの需要は前年に続き堅調で、手軽なスポーツジムやインドアゴルフなどが増加した。買い取り業者も増加傾向にある。一方で不動産、金融関連は減少している。地域的には関西の落ち込みが目立った。
  • 提案力・営業力の強い事業者が元請けとして広域の業務を受注して、実際の配布は各地域の事業者に委託するというビジネス構造へ変化がみられるとともに、事業者再編の動きも出てきている。またGPSを利用した配布状況の管理や、配布員のビブス着用義務など、信頼性の向上にも積極的に取り組んでいる。

DM制作関連市場 1,119億円(前年比100.4%)

  • DMの発送数は減少しているものの、印刷資材などの高騰によるコストの増加に加え、より効率的なDM活用のためのデータマーケティングやレスポンス測定のためのツールの導入といった企画制作費などが増加した。よりクリエイティブで訴求効果が高いBtoB向けDMの需要が継続していることに加え、顧客獲得型DMでは、ハガキのQRコードなどでサイト誘導を図るなど、マーケティング全体の中でのより効果的な活用が進む。全体としてデジタル施策との連動や効果の可視化への要求は高くなっている。

(億円、%)

  2021年 22年 23年 24年
広告費 前年比 広告費 前年比 広告費 前年比 広告費 前年比
商業印刷市場 17,800 101.7 17,750 99.7 17,900 100.8 17,600 98.3
  ポスター・チラシ・パンフレット 10,700 101.9 10,650 99.5 10,600 99.5 10,400 98.1
ポスティング市場 1,283 111.0 1,387 108.1 1,472 106.1 1,481 100.6
DM制作関連市場 1,071 101.7 1,103 103.0 1,115 101.1 1,119 100.4

媒体別構成比

媒体別構成比のイメージ
「2024年 日本の広告費」 報告書ダウンロード

注)本資料の内容、データを利用する場合は下記の出典明記をお願いいたします。
出典:電通「2024年 日本の広告費」

「2024年 日本の広告費」 動画(67秒)

「日本の広告費とは」 動画(30秒)