新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費

マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む):2兆3,363億円(前年比100.9%)

新聞広告費:3,417億円(前年比97.3%)

  • 不透明な世界情勢や物価・人件費高騰などの影響も受け、新聞広告出稿は伸び悩んだ。パリ2024夏季オリンピック・パラリンピックなどの大型スポーツ大会や各種イベントの開催があったものの、広告費を押し上げるには至らず、通年では減少した。
  • 業種別では、前年は減少した「流通・小売業」が前年比106.9%と回復傾向がみられ、主に通信販売を中心に前年から増加した。一方で、「食品」は通販系サプリメントを中心に同84.7%と前年に続き減少し、コロナ禍から回復傾向にあった「交通・レジャー」も同98.9%となった。
  • 中央紙と地方紙で区分すると、減少傾向に差はなく、どちらも「食品」業種の減少の影響を大きく受けた。
  • 2025年は、第27回参議院議員通常選挙や大阪・関西万博の開催が予定されているものの、新聞広告出稿への需要は不透明。今後も宣伝予算のデジタルシフトの加速や、物価高などの影響を受けると予想されるが、社会課題解決に寄り添うメディアとしての機能や、新聞社の持つ資産を活用した施策の需要が高まっている。

雑誌広告費:1,179億円(前年比101.4%)

  • 雑誌広告費は7-9月期以降に復調し、通年では前年比101.4%となった。自然災害などのリスク要因はあったものの、景気や消費意欲の回復による需要増加を背景に、出版社の持つ読者に伝わるコンテンツ制作力や、ファンベースマーケティングの価値が広告主から評価された。特に出版社・雑誌アカウントでのSNSへの2次展開や広告主アカウントへのコンテンツ提供などの案件も増加した。出版各社はこうした施策を武器として、雑誌やコミックの価値や役割を最大限に生かし、広告主のニーズや課題の多様化に的確に応える施策を展開した。
  • 紙の出版物推定販売金額は減少し前年比94.8%となった。内訳は書籍が同95.8%、雑誌が同93.2%。一方で、電子出版市場は同105.8%と引き続き成長した。紙と電子出版を合わせた出版市場全体は同98.5%となった。(数字出典:出版科学研究所「季刊 出版指標」2025年冬号)
  • 業種別では、景気や消費意欲の回復に伴う需要の高まりで、「精密機器・事務用品」「飲料・嗜好品」が増加した。一方で、雑誌広告費シェアの高い「ファッション・アクセサリー」「化粧品・トイレタリー」は減少した。
  • 出版各社はIP(知的財産)コンテンツ(コミック、雑誌、文芸など)をパッケージとして販売する従来の事業を中核に据えながらも、デジタル化、グローバル展開、BtoB領域、動画制作など、さらなる事業多角化を加速していくと考えられる。

ラジオ広告費:1,162億円(前年比102.0%)

  • 様々な音声コンテンツを届ける音声メディアへの関心が高まり、radikoを含むデジタルオーディオ広告の増加とともに、地上波ラジオ放送における広告市場も、通年で前年を上回った。
  • 業種別では、日常シーンに溶け込みやすいラジオメディアの特徴を生かした広告が増加した「食品」(前年比117.8%)や、コロナ禍からの回復や外出・行楽需要が前年に続き高まった「交通・レジャー」(同116.6%)などが二桁成長となった。
  • ラジオ放送事業者主体のリアルイベントも多数開催された。番組コンテンツの人気の高まりを受けイベント規模が拡大しており、今後もそうした傾向が続くとみられる。

テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連) 1兆7,605億円(前年比101.5%)

地上波テレビ 1兆6,351億円(前年比101.6%)

  • 番組(タイム)広告費は、パリ2024夏季オリンピック・パラリンピックをはじめとした大型スポーツ大会や各種イベント開催に伴い好調に推移したものの、令和6年能登半島地震による被災や、世界情勢の混迷、物価・人件費高騰などの影響を受け、前年を下回った。
  • スポット広告費は、半導体不足の解消などにより「自動車・関連品」が復調したほか、インバウンド需要など消費行動の活性化も捉えた「薬品・医療用品」「化粧品・トイレタリー」や、コロナ禍からの回復により外出・行楽需要が前年に続き高まった「交通・レジャー」が好調に推移し、前年を上回った。
  • 2025年は、大阪・関西万博、東京2025世界陸上競技選手権大会をはじめとした大型スポーツ大会や各種イベント開催、インバウンド需要のさらなる増加による好調業種がけん引し、広告主各社のマーケティングコミュニケーション戦略の一層の活性化と相まって、引き続き好調に推移する見通し。

衛星メディア関連 1,254億円(前年比100.2%)

  • BSやCSにおける通信販売市場は堅調に推移し、前年を上回った。
  • BSはコロナ禍後も出稿業種の入れ替えで増加傾向を維持しているが、CSとCATVは緩やかな減少傾向が続いている。
  • 2025年は、通販市場は前年より若干の鈍化傾向が見込まれるものの、BSは引き続き好調と予測。CSは減少傾向が続く中、新たな収益源獲得に向け、事業・制作などの放送外収益の受注に注力している。
  • BSでは、2025年1月にBS10(ビーエステン)がリニューアル開局。BS松竹東急、BSよしもとを含む新3局は 2025年3月に開局3周年を迎える。

(億円、前年比%)

  2023年 2024年 前年比
衛星メディア関連 1,252 1,254 100.2
BS 954.0 977.1 102.4
CS 151.3 141.7 93.7
CATV 146.3 135.2 92.4

※衛星メディア関連(合計値)は、小数点以下を四捨五入。

マスコミ四媒体広告制作費:2,525億円(前年比99.6%)

(注)広告制作費は、衛星メディア関連を除く新聞・雑誌・ラジオ・地上波テレビの広告費に含まれている。

  • マスコミ四媒体広告制作費のうち最も大きい地上波テレビCM制作費は1,997億円(前年比100.8%)となった。個人消費やインバウンド需要も回復に転じ、加えてテレビ広告は人材確保のための企業広告や人材系業種の出稿が多くみられるようになった。テレビ以外の様々な動画・コンテンツ制作をテレビCMと同時に制作するケースもさらに加速している。結果、制作費全体の売り上げは維持しているものの、テレビ広告制作そのものに向けられる予算は減少傾向にある。加えてデジタル機器、ソフトの性能向上により、従来の編集スタジオを必ずしも必要とせず、パソコンによる編集も可能となりつつある。これらが制作単価の低下を招き広告制作費は四媒体全体では前年に続き、やや減少傾向となった。(なお、マスコミ四媒体広告制作費の内訳は、地上波テレビCM制作費以外は非開示)
  • 業種別では、前年の販売会社・メーカーの不祥事による自粛がひと段落したことで「自動車・関連品」がけん引し、企業広告が増加した「エネルギー・素材・機械」や「化粧品・トイレタリー」の2業種がそれに続き増加した。一方で、「教育・医療サービス・宗教」や「趣味・スポーツ用品」が大きく減少した。また「金融・保険」「官公庁・団体」「家庭用品」などもマイナス傾向となった。
  • 制作現場では外資企業からの受注が増え、発注単価も高いことから優秀なスタッフがフリーランスに移行する傾向がみられる。一方で、脱炭素などの新しい視点で制作会社を選定するケースもあり、取引慣習を欧米に適合するように変えようとする動きも生じている。

2024年 マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む)の四半期別伸び率

「マスコミ四媒体広告費」(衛星メディア関連も含む)を四半期別にみると、1-3月期、4-6月期はマイナス傾向となったが、7-9月期からプラスとなった。

(前年比、前年同期比、%)

マスコミ四媒体広告費
(衛星メディア関連も含む)
2023年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
96.6 96.3 96.8 96.2 96.5 96.3 97.3
2024年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
100.9 99.3 102.4 99.6 99.1 101.5 103.2
「2024年 日本の広告費」 報告書ダウンロード

注)本資料の内容、データを利用する場合は下記の出典明記をお願いいたします。
出典:電通「2024年 日本の広告費」

「2024年 日本の広告費」 動画(67秒)

「日本の広告費とは」 動画(30秒)