プロモーションメディア

プロモーションメディア広告費:1兆6,408億円(前年比97.9%)

屋外 2,740億円(同100.9%)

  • 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の解除に伴い、外出自粛が緩和され人流が回復した。出稿控えも全体的に和らぎ、ファッション・医療・エンターテインメントなどの業種を中心に広告需要が回復した。東京2020オリンピック・パラリンピック需要も一定程度みられた。一方、都市圏以外のOOH事業においては製作費比率が高いこともあり、新型コロナの拡大による資材高騰などの影響を受けた。2022年は新型コロナの拡大次第ではあるものの、引き続き堅調に推移すると期待される。
  • 長期看板は、繁華街に設置された大型媒体では需要があったが、それ以外の媒体では鈍い状況が続いた。
  • 短期看板や短期ネットワーク看板、屋外ビジョンは、繁華街において大型で目立つインパクト型OOH媒体に需要が集中し、増加した。特に、3Dコンテンツ放映が話題となった。平面画面媒体に比べ、より3Dに見えるL字型画面媒体の登場などにより、広告主からの3Dコンテンツ放映の問合せが急増した。しかし、3Dコンテンツ制作費が高額なため実施数としては少なかった。3Dコンテンツ制作費の圧縮はすぐには難しいかもしれないものの、長期契約放映で制作費分を回収できるようにするなどの契約方法により、今後の新規需要掘り起こしが期待できる。
  • デジタルOOHでも、位置情報データを活用しインプレション数でセールスする手法も定着しつつある。

※大型サイネージ、大型ボードなど。

交通 1,346億円(同85.8%)

  • 鉄道は、ポスター、デジタルサイネージともに、ネットワーク系媒体よりも主要駅で人流が多いロケーションに設定された大型で目立つインパクト型OOH媒体に需要が集中した。駅構内は、全体的に減少したものの、全国的に大型デジタルサイネージは前年を上回った。車両内は、人流の減少に伴い、通常だと年間出稿の需要が多いステッカーは大きく減少したが、キャンペーンに合わせたスポット出稿は堅調であった。
  • 空港は、外国人入国制限により旅客数が回復しなかったこともあり、国際線は前年より減少した。国内線は、緊急事態宣言等に伴う移動制限が解除されてからは、わずかに回復した。
  • 東京2020オリンピック・パラリンピックは主に無観客開催となったものの、主要駅、競技場最寄り駅では出稿があった。
  • 業種別では前年同様、飲料系は減少しているものの、ゲーム、美容、SNS動画配信、クラウドサービス、デリバリー系は堅調だった。
  • タクシー広告は、サイネージ搭載車の増加もあり、ラッピング広告を含め前年に引き続き増加した。
    タクシービジョンは2022年もサイネージ搭載台数の増加もあり、BtoB広告を中心に更に拡大していくと期待される。今後はBtoC広告の需要拡大も課題である。

※全線中づり、主要駅の駅サイネージネットワーク、主要駅の駅ばりネットワークなどを指す。

折込 2,631億円(同104.2%)

  • 新型コロナの影響があったものの、巣ごもり・在宅需要を後押しする媒体として活用され、主要都市圏を中心に増加し、前年を上回った。
  • 業種別では、スーパーやホームセンター、家電量販店を含む流通・小売による販促利用が回復した。サービス業も飲食・旅行・遊戯関連の出稿は減少が続いたものの、出前や食材宅配サービスが増加。また、買い取り事業者が好調だったことで、全体では増加した。その他、通販系の健康食品・化粧品が増加し、金融・保険に関しては大幅増となった。一方、教育・教養、不動産は新型コロナの影響とDXの加速もあり、それぞれ減少した。
  • 地域別では、首都圏は増加。全国的に見ても前年を下回っている地域はなく、最も増加したのは東海・甲信越。コロナ感染者が比較的少ない東北では県内旅行、地元の飲食店利用、農産物の購入などを促す新聞折込が前年よりも多くなった。また、都市部では激減したパチンコホールなどの娯楽レジャーも、出稿が前年を上回る地域もあるなど、独自の動きも見られた。
  • 2022年は年初からの新型コロナ感染再拡大により、流通業は再び折込の出稿を控えるなど、当面は回復に向けたスピードが上がらないと予想される。しかし、感染拡大がひと段落すれば、徐々に回復すると考えられる。サービス業は飲食関連や旅行・宿泊関連の出稿停滞は続くと思われるものの、ワクチンブースター接種の拡大やGoToなどの支援事業の再開で、増加に転じていくと期待される。また、インターネット系サービス業種は、インターネット広告がリーチしにくい(届きにくい)高齢者などへの訴求を目的に新聞折込を活用するケースが増えており、今後もその傾向は変わらないと思われる。

DM(ダイレクト・メール) 3,446億円(同104.7%)

  • 新型コロナの影響が大きかった前年から回復し、増加した。
  • リモートワークの普及とリアルでの対面営業が難しくなったことを受け、保険営業などを中心にDMを積極活用するケースが増加した。また、デジタルマーケティングと連動したパーソナライズDM(個々の顧客に向けた内容やデザインが個々に異なるDMのこと)も、デジタル印刷機の普及もあって、さらに広く活用された。
  • 業種別では、在宅需要の活性化に伴い、通販関連は比較的好調であったものの、交通・レジャー関連(観光・旅行など含む)などは前年に引き続き厳しい状況が続いた。
  • インターネット広告だけではカバーすることが難しいターゲット向けに、無宛名便DMの活用も増加し、そのDM市場が拡大した。全戸配布の様々な課題は他媒体でも同様にあり、業界業態の垣根を超えた提携・連携が求められていくだろう。
  • DM制作関連市場(参考:P.20日本の広告費」関連市場を参照)との合計では4,517億円となる。

フリーペーパー 1,442億円(同93.7%)

  • 前年に続き、新型コロナの影響や、一部発行紙の休刊、エリア統合、発行号の削減などを受け、前年比93.7%となった。特に駅などに設置するタイプは前年に引き続き減少した。一方で、第49回衆議院議員総選挙関連や新聞社発行のフリーペーパーは好調だった。
  • 地域情報を主体としたフリーペーパーでは、地域の広告主や自治体に対し、編集力やコンテンツ力などを生かしたウェブサイト編集、オンライン販促施策、動画制作などのサービス提供の動きもみられた。
  • 営業・販売支援を目的とした流通・販促施策への関心が高い広告主もおり、単純な紙面スペースの提供だけにとどまらない、複合的・立体的な施策も評価をうけている。このような傾向は2022年も継続すると予想される。
  • また、地域活性化を目的とし、絆を大切にした取材や記事に力を入れた生活情報誌には根強い需要がある。社会のデジタル化が進む中、情報取得の普遍性や多様性といった社会的観点からも、全戸配布を目標とした媒体はまだまだ活用幅が広い。さらに在宅需要を後押しする紙媒体として、デジタルをはじめ他媒体との協業、産学官の連携を図り、ソーシャルビジネスの一環として、市場が活性化していくことが期待される。

※フリーペーパーは、タブロイド判タイプのフリーペーパー・雑誌タイプのフリーマガジン・電話帳の総称。

POP 1,573億円(同94.9%)

  • 前年に続き各種集客イベントや店頭販促プロモーションが自粛となり、メーカー販促ツールの導入も見送られるなど、POP(店頭販促物)の減少に繋がった。
  • 一方で、店頭DX施策※が数多く行われた。リアルな場での貴重な接点となる店頭では、さらなる顧客体験を高める手法として、デジタルサイネージの導入や、ARやVRを活用したPOPもみられた。今後の発展が期待される領域である。
  • また、「エコ」「循環型社会」「SDGs」について、POP関連業界でも、徐々に意識が高まり社会的テーマになっていることもあり、様々なアプローチが見られた。商品企画の段階でサプライチェーンから見直し、エコやSDGsを考慮したもの、商品パッケージの回収プログラムを策定し、その回収のための什器を作成したものなど、主体や手法も様々実施され始めた。
  • 新型コロナの影響による来店者の入店時間の短縮や流通や店舗側の配送費・廃棄費用コスト削減などのため、店頭での組立・設置が簡単な小型POPツールのニーズが高かった。
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック関連では、販促予算の縮小や無観客開催などの影響もあり、さらに付随する各種キャンペーンやインバウンドキャンペーンなどの中止も相次いだため、プラス要因としては弱かった。
  • 現在は、ウェブサイトやSNSなどで配信している動画広告コンテンツをそのまま店頭に置き換えていることも多いため、買い物をしながら見てもらえる売場専門動画作りのノウハウはまだまだ確立されてない。この領域にも動画制作含め期待がかかる。

※タッチ&トライデータ、購買導線データ、AIカメラなどによる視聴者数・属性調査など、データ取得や分析についての試み。

イベント・展示・映像ほか 3,230億円(同93.0%)

  • コロナ禍の影響が継続し、前年を大幅に下回った。
  • 「東京モーターショー」や「東京マラソン2021」の中止・延期などがあったものの、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されたこともあり、イベント領域は1,372億円(前年比126.0%)と増加した。
  • 展示領域では、文化施設や百貨店、オフィスの改装需要などが増加したものの、複合型商業施設、企業PR施設、テーマパークなどのエンターテインメント施設は、感染拡大による経済活動の停滞により計画の見直しや集客関連の設備投資抑制を受け、大きく減少した。展示会や企業イベントにおいては、オンライン開催がますます加速し、主催者側、参加者側ともにその形態が通常化してきた。今後、イベントのオンライン化、ハイブリッド(リアルとオンライン併用)化は、他業種からの参入やコスト競争の激化が想定される。
  • 映像関連は、オンライン展示会やウェブ講演会・セミナーなどに付随する配信動画、商品サービス紹介などの制作需要が増大した。オンライン展示会などでは実際の商品に触れることができないこともあり、来訪者を引き付けるコンテンツ制作や演出が重要になってきている。今後、視聴覚系の新たなデジタル技術を活用し、参加者とリアルに近い体験やターゲット別のコンテンツ提供やオンライン上での情報発信や企業と来場者との新しいコミュニケーションツールとしても、さらなる発展が予想される。vシネアド(シネマ・アドバタイジング)は、上半期は緊急事態宣言による休館などで低迷したが、下半期はラグジュアリーブランドなどの需要が急回復した。2022年は順調に広告需要も拡大していくと思われるが、新型コロナの影響による休館・作品の公開延期の懸念は残る。

参考「日本の広告費」関連市場

※「日本の広告費」には含まれない

商業印刷市場 1兆7,800億円(前年比101.7%)

  • うち、ポスター・チラシ・パンフレットの印刷市場は、前年を上回る1兆700億円(同101.9%)となった。前年に続くインバウンド需要の減少や、ペーパーレス化の加速、商業施設・飲食業の休業など、マイナス要因が拡大した。大手・中堅印刷会社は前年比100%前後、小規模印刷会社ではその多くが前年比90%程度の実績であった。
  • 2022年はDX化の加速、印刷原材料高騰が見込まれる。SDGsやデジタルの取り組みなどをキーワードに他社との差別化、付加価値をつけた提案型営業への転嫁と価格競争からの脱却が成長のポイントとなる。

ポスティング市場 1,283億円(前年比111.0%)

  • 新型コロナの影響で全戸配布の社会的需要が高まり、市場は堅調に成長した。官公庁関連の配布物、公告などが増加。PCR検査やワクチン接種の案内チラシなどで、紙の利用価値も高まった。主要都市圏では、在宅でチラシを見る機会が増えたことも要因の一つ。また、地域の求人、不動産関連など、その土地ならではの情報をエリア限定でタイミングよく配布するタイプのポスティングも堅調だった。新型コロナの影響で厳しい外食・各種サービス関連においても、販促手段の一つとして利用価値が高まった。折込、DM、フリーペーパー広告市場の一部と重なるが、業界の垣根を超えた連携も始まった。また、データマーケティングの積極活用や最新のデジタル技術なども活用した、よりきめ細やかな配布も実施された。

DM制作関連市場 1,071億円(前年比101.7%)

  • 対人営業の代替手段やリモート営業の販促ツールとしてDMが活用され、企画制作作業が前年より増加した。さらに、データマーケティングをはじめとした作業運用費なども増加した。

媒体別構成比

媒体別構成比のイメージ

注)インターネット広告費の構成比内訳は、小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはなりません。