背景

(1)日本経済は、国内外の様々な厳しい環境下にあっても、ゆるやかな成長を継続

2022年の日本経済は、オミクロン株など新しいタイプの新型コロナの影響があったものの、徐々に感染対策を取りながらの社会的、経済的活動が正常化し始めた。特に、飲食や旅行などの各種サービス関連における個人消費や、法人の設備投資も活発化、内需の増加に寄与した。一方、2020年から続くコロナ禍やウクライナ情勢、欧米などの相次ぐ金利引き上げ(金融緩和政策の見直し)などが要因にもなり、各種部品などの供給不足や原材料費、エネルギー(石油や天然ガス)価格の高騰など、特に厳しい環境が続いた。暦年の国内総生産(GDP)の実質成長率は1.1%。さらに四半期別を前期比ベースでみると、1-3月期は-0.4%だったものの、4-6月期は1.1%と小幅増加し、7-9月期に再び-0.3%とマイナス成長となり、10-12月期は0.2%と持ち直した。「日本の広告費」と相関の高い名目成長率も、1.3%の増加となった。(2023年2月14日四半期別GDP1次速報より)

企業業績、増収増益見通し

上場企業の2022年度通期(2022年4月-2023年3月期)は、全産業売上高が前期比13.4%増、最終利益が7.4%増の見通し。

雇用情勢は安定的

完全失業者数は、コロナ禍が始まった2020年に大きく高まったものの、それ以降漸減し、2022年12月には171万人となった。完全失業率は、年間を通して2.5~2.8%と比較的低い水準が継続。2022年平均の有効求人倍率は、新型コロナ感染第6波が落ち着いてきた6月以降上昇傾向で推移し、1.28倍となり、前年の1.13倍を0.15ポイント上回った。

一時大幅な円安、株価はダウ平均連動、原油価格はピークアウト

円相場は、記録的なインフレを抑え込むための米国による急激な利上げを受けて、前年から継続していたドル円が上昇し、10月には31年ぶりに150円台の大幅な円安となった。9月以降の日銀による市場介入などにより、最終日(12月30日)は前年より約17円安の132円14銭で取引終了した。

株価は、インフレ引き締め策として米国が実施する政策金利の利上げによるダウ平均株価の上下に連動して推移し、最終日(12月30日)の終値は2万6,094円と、4年ぶりの下落となった。

原油価格は、主要国による金融引き締め策の導入で世界景気が減速するとの懸念から、原油需要の減少が意識される状況となり、現状の水準での推移が予想される。国内レギュラーガソリンの店頭価格は、「燃料油価格激変緩和補助金」の導入もあり年間を通して170円前後で推移。11月末からは補助金がない状態でも200円を下回っており緩やかな下落が期待される。

(2)国内消費~流通では百貨店・コンビニ、旅行、レジャー業界の業績が回復基調

●百貨店は、来店客数の増加に加え、水際対策の緩和により消滅していた外国人観光客によるインバウンド需要が一部復活し、2022年売上高(既存店ベース)百貨店売上高は前年比13.1%増、2019年比では11.1%減とコロナ禍前の9割まで売り上げが回復。●コンビニエンスストアも、在宅から徐々に出社が増加したことなども手伝い、全店で前年同期比3.7%増、既存店では3.3%増と2年連続のプラスとなった。●スーパーマーケット(既存店ベース)は、巣ごもり需要の縮小を受け前年比1.9%増となった。●白物家電(民生用電気機器)の年間国内出荷金額は2.0%増と2年ぶりのプラス。内訳は金額に占める割合の大きい電気冷蔵庫、電気洗濯機、ルームエアコンなどが製品単価上昇の影響で出荷額が増加。また、電気掃除機、電気温水器などが大きく出荷額を伸ばした。●黒物家電<AV機器(民生用電子機器)>の年間国内出荷金額は、システムオーディオ(1.4%増)と販売量を伸ばしたカテゴリも見られたが、総じて出荷額が前年同期比を下回るなど苦戦が続いた。●国内新車販売は、前年同期比5.6%減の420万1,321台と419万台だった1977年以来、45年ぶりの低水準となった。世界的な半導体不足や、新型コロナによる部品調達難が長期化し、減産を強いられたことが影響した。ドライブレコーダーの年間国内出荷台数は、15.1%減、業務用は19.3%増となったが、規模の大きい一般消費者用が自動車生産の回復の遅れもあり25.1%減と伸び悩んだ。●デジタルカメラの年間国内出荷金額は、旅行・行楽需要の回復に伴い一体型とレンズ交換式合計で29.8%の増加。●住宅着工戸数は、前年同期0.3%増。持家が11.3%減も、貸家7.3%増、分譲4.7%増となった。●旅行業界は、行動制限の解除もあり国内旅行消費額が、4-6月期は前年同期比136.1%増、7-9月期は131.0%増と大幅に上回った。訪日外客数は前年同期比約16倍の383万人。3月より入国制限や水際対策を段階的に緩和したことで、徐々に訪日外客数が回復。●映画業界は、1986年に公開された作品をリメイクしたハリウッドアクション映画や大人気少年漫画の劇場版15作目などの国内アニメ作品も興行収入100億円を超えるヒット作もみられた。●テーマパークも入場制限の緩和・撤廃を受け、売上高が倍増。首都圏や中部圏にアニメーション映画をテーマにしたホテルやテーマパークがオープンし、好調な滑り出しを見せた。●外食業界は、営業制限が大幅に緩和、解除されたこともあり、年間売上高(全店ベース)は前年比13.3%増と前年を上回ったが、2019年比では5.8%減とコロナ禍前の水準には至らなかった。特に「パブ/居酒屋」は2019年比で50.8%減とコロナ禍前の売上の半分以下に留まる結果となった。

(3)話題のイベントや商品など

2022年は、3年目を迎え徐々に新型コロナとの向き合い方が変化。行動制限撤廃により外出や国内レジャーも活性化し、10月からは全国旅行支援が開始されるなど旅行・観光業者にとってはようやく明るい光が見えた年ともなった。
巣ごもりからの環境変化へ対応する方法として「睡眠」に注目の集まった年でもあった。2019年の発売以来地道な宣伝活動を続けていた睡眠の質を向上させるとうたわれている乳酸菌飲料が、利用者の口コミやテレビ番組での人気タレントによる睡眠改善効果露出なども手伝い一時入手困難になるほど大ヒット。また、寝る前に飲んで睡眠中に疲れを癒すというコンセプトが支持された栄養ドリンクや、耳を温めて安眠を促す製品などもより良い睡眠により疲れを回復したいニーズを捉えてヒットした。
外出活性化に伴って、“外向き”なサービスとして活気づく旅行業界に関しては、大手鉄道会社や格安航空会社などが提供する行き先が選べない一風変わった旅行プランが驚きを楽しむ旅行者に支持されヒットに繋がった。ファッション業界でも、若年層を中心に日焼け・暑さ対策に加えファッション性が評価されたアームカバー、若年層から子育て世代などの幅広い世代に、手ぶらでアクセサリー感覚で身につけられるアイテムとして使用されたスマホショルダー、きちんとした印象を与える眉用コンシーラーやたるみ肌を解決するハイテク美容液など数々のヒット商品が誕生した。
急激な物価高が続く時勢を受けて「コスパ(コストパフォーマンス)」の高い商品・サービスにも注目が集まった。作業服・作業用品専門店の手掛けたキャンプギアは、既存のアウトドアウェアと同じ素材や加工技術を使用することで低価格・高クオリティを実現。中国発のECサイトも破格の安さや品数の多さが支持され、若年層の支持を競合から奪った。
コスパに加え近年のトレンドである「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する傾向も継続。1食で厚労省の示す33品目の栄養素を摂取できる点を売りにした完全栄養食は、同ジャンルの通常商品よりも1.5倍ほどの価格ながら販売は好調に推移。大手冷凍食品会社が発売した「冷やし中華」は電子レンジで温める冷凍食品にも関わらず、麺・具材に同梱した氷が溶けずに残る仕掛けで、時短に加えて試してみたいとの要望も刺激しヒットにつなげた。飲料では、2020年より販売に力を入れてきた瓶のジンを家で手軽に飲むことができるようにと発売されたジンソーダ缶が人気に。食品・飲料以外では、置くだけで浴室の防カビを実現した商品が支持を集めた。
近年の「昭和・平成レトロ」文脈に則ったヒット商品・サービスも多数見られた。「食品」では90年代に一世を風靡したカヌレが、メーカーや流通各社の加えた一工夫が奏功しリバイバルヒット。「趣味・スポーツ用品」では、25年目にして初めてスマートウォッチ型にした携帯型育成玩具が、新機軸も取り入れ大ヒットした。