新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費

マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む):2兆3,985億円(前年比97.7%)

新聞広告費:3,697億円(前年比96.9%)

  • 北京2022冬季オリンピック・パラリンピックや第26回参議院議員通常選挙、FIFA ワールドカップ カタール 2022などが広告費の押し上げに寄与したものの、新型コロナやウクライナ情勢による経済低迷の影響や前年の東京2020オリンピック・パラリンピック開催の反動減により、通年では減少となった。
  • 業種別では、新型コロナの反動増により「交通・レジャー」が前年比117.8%となった。レジャー施設・興行関連のみならず、本年は旅行・宿泊や交通業種も大きく広告費を伸ばし、1年を通して増加した。一方、「薬品・医療用品」ではシニア向けの薬品を中心に減少し前年比88.1%。また、「情報・通信」ではコンピューター類を中心に減少し前年比91.8%と、コロナ禍の反動減が見られた。
  • 中央紙、地方紙でみると、地方紙のほうが、東京2020オリンピック・パラリンピック開催の反動減の影響が少なく、前年比は高い傾向となった。
  • 2023年は、物価高・経済低迷の影響が続き、広告費は前年並みの水準となる予測。一方、新型コロナ関連の規制が緩和されるため、経済活動はより活発化され、交通・レジャーや、世界的な大型スポーツイベントなどをはじめとする各種広告需要の回復が見込まれる。

雑誌広告費:1,140億円(前年比93.1%)

  • 紙の出版物推定販売金額は、前年比93.5%。内訳は、書籍が同95.5%、雑誌が同90.9%。一方、電子出版市場は同107.5%と引き続き伸長し、5,000億円を突破。なお、紙と電子出版を合わせた出版市場全体は同97.4%となり、4年ぶりの前年割れとなった。(数字出典:出版科学研究所「出版月報」2023年1月号)
  • 雑誌広告費は、年間を通じて前年を下回る結果となり、暦年では前年比93.1%となった。「withコロナ」の生活様式の定着というポジティブ要因はあるものの、世界情勢や物価人件費高騰などのリスク要因は大きく、また宣伝予算のデジタルシフト加速、自社DX(デジタルトランスフォーメーション)事業への投資加速なども続いており、雑誌広告出稿への需要影響は今後も不透明。出版各社は引き続きデジタル事業、コンテンツ事業などに大きく軸足をシフトしつつ、広告主のプロモーションニーズや手法の変化、それに伴う「紙媒体」としての雑誌の価値や役割、加えて流通対策や売り方の変化を模索していくと考えられる。
  • 2023年、出版各社は「コンテンツ」「コミック」に加えて「海外」を事業の中心に据え、XR※1(クロスリアリティ)、縦スクロールコミック※2、データプラットフォームの構築、コンテンツ資産の海外輸出の加速など、様々な面での事業変容を深化。また、広告収益の過半以上を占めるデジタル領域でも、コンテンツを活用したPVおよび広告単価などの更なる拡大、新領域事業の開発を更に進めるものと考えられる。

※1 現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術(VR<仮想現実>、 AR<拡張現実>、MR<複合現実>など)の総称。

※2 スマートフォンでの閲覧に特化した「縦スクロール」「オールカラー」のウェブコミック。

ラジオ広告費:1,129億円(前年比102.1%)

  • 通年で前年を上回り、前年比102.1%となった。
  • 業種別では、コロナ禍からの回復を受け「ファッション・アクセサリー」が前年比122.5%、「外食・各種サービス」が同113.4%と大きく増加。また前年に続き「化粧品・トイレタリー」(同117.3%)も二桁成長となった。
  • コロナ禍からの回復により、2023年はリアルイベントの開催機会が増加する見込み。番組関連ライブや放送局主催の音楽フェスティバルの盛り上がりが期待できる。

テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連) 1兆8,019億円(前年比98.0%)

地上波テレビ 1兆6,768億円(前年比97.6%)

  • コロナ禍による社会的な影響は減少しつつも、地上波テレビ広告費は1兆6,768億円(前年比97.6%)となった。
  • 番組(タイム)広告費は、北京2022冬季オリンピック・パラリンピック、FIFA ワールドカップ カタール 2022をはじめ、国内でもプロ野球、プロゴルフトーナメントなどの大型スポーツ大会や各種イベントが実施されたものの、東京2020オリンピック・パラリンピックなどによる反動減を押し上げるには至らなかった。地域別では、通期で大阪地区、名古屋地区、福岡地区が前年を上回った。
  • スポット広告費は、1-3月期はヒューマンリソース(人材)領域の出稿がけん引し「外食・各種サービス」の躍進が目立った。4-6月期は携帯キャリア・アプリ系の出稿が伸びず「情報・通信」は苦戦。半導体不足、ウクライナ情勢による原材料高騰の影響も加わり7-9月期も同様の状況が続いた。10-12月期は「外食・各種サービス」の躍進に加え、半導体不足の影響を受けていた「自動車・関連品」に復調の兆しがみえたものの、「情報・通信」の不調が続いた。地域別では、通期で基幹8地区全てが前年を下回った。
  • 2023年通期の見通しは、原材料費高騰、エネルギー不足などによる不安定な経済情勢にありながらも、番組(タイム)広告費は世界的な大型スポーツイベント(野球、水泳、陸上、ラグビーなど)や各種イベント実施などによる広告主各社のマーコム(マーケティングコミュニケーションの略称)戦略の活性化が見込まれる。スポット広告費においても同様に不安定な経済情勢にあり「情報・通信」の不調が続くスタートであるが、「自動車・関連品」に復調の兆しがみえ、行動制限の解除に伴う旅行支援に後押しされた「交通・レジャー」が好調に推移。さらなる活発化が期待される。これまで出稿をけん引してきたヒューマンリソース領域の好調は今後も続くとみられるが、米国労働市場の厳しい冷え込みによるマイナス影響の可能性には注視が必要。(2023年2月時点)

衛星メディア関連 1,251億円(前年比103.5%)

  • 通販市況が前年に続き好調に推移し、スポット広告需要も増えており、前年を上回った。
  • 2022年3月にBS新3局が開局し、衛星メディア市場に新しい動きが出た。
  • 2023年の大きなトピックスとしては、世界的な大型スポーツイベント(野球、水泳、陸上、ラグビーなど)が、地上波放送とすみわけながらBSやCSでも放送されることである
  • 2023年の通販市況に関しては、前年下期より若干の鈍化傾向がみられるものの、引き続き好調と予想する。

(億円、前年比%)

  2021年 2022年 前年比
衛星メディア関連 1,209 1,251 103.5
BS 899.5 936.6 104.1
CS 156.2 159.3 102.0
CATV 153.5 155.0 101.0

※衛星メディア関連は、小数点以下を四捨五入し合計値とする。

マスコミ四媒体広告制作費:2,611億円(前年比98.4%)

(注)広告制作費は、衛星メディア関連を除く新聞・雑誌・ラジオ・地上波テレビの広告費に含まれている。

  • マスコミ四媒体広告制作費のうち最も大きい地上波テレビCM制作費は2,027億円(前年比98.9%)となった。長期にわたりコロナ禍は続いており、行動制限など解除されたものの、長引くウクライナ情勢やインバウンドの減少など、様々な要因が影響し、減少した。その他の媒体の制作費動向としては、東京2020オリンピック・パラリンピック後の新聞広告制作費は再び減少傾向、雑誌広告制作費の減少傾向も止まらなかった。一方、ラジオ広告制作費は前年を維持。(なお、マスコミ四媒体広告制作費の内訳は、地上波テレビCM制作費以外は非開示)
  • 業種別では、全21業種中で前年より増加は9業種、減少は12業種と減少傾向が続いた。前年より増加の上位には行動制限の緩和から「交通・レジャー」が大きく伸長し、「ファッション・アクセサリー」「外食・各種サービス」の2業種がそれに続く。一方、イエナカ(在宅)消費が一段落した「家庭用品」や「化粧品・トイレタリー」、「家電・AV機器」の3業種が減少、深刻な半導体不足の影響から「自動車・関連品」がそれに続く結果となった。
  • 2022年も継続して広告主、広告会社、制作会社連携による働き方改革を前進させ、取引の透明性向上を実現するため、内容、予算、スケジュール管理の徹底に努めた。一方、クリエイターを中心にコンサルティング業界への人材の流出が止まらない傾向であると言われており、広告業界では危機感を強めている。

2022年 マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む)の四半期別伸び率

「マスコミ四媒体広告費」(衛星メディア関連も含む)を四半期別にみると、1-3月期はプラスに推移したものの、それ以降は前年の反動減も大きく減速した。

(前年比、前年同期比、%)

マスコミ四媒体広告費
(衛星メディア関連も含む)
2021年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
108.9 107.0 110.7 96.6 121.2 117.3 105.3
2022年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
97.7 99.2 96.3 101.2 97.1 97.7 95.0