新聞/雑誌/ラジオ/テレビ/マスコミ四媒体広告費

マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む):2兆6,094億円(前年比96.6%)

新聞広告費:4,547億円(前年比95.0%)

  • 広告出稿増の期待トピックス(改元、消費税率変更関連、世界的なスポーツイベントなど)が多く、好調な四半期があったものの、通期では長期的な低下傾向が継続した。
  • 参議院選挙、消費税率変更に関する出稿(消費税軽減税率制度、税率変更前の駆け込み需要、キャッシュレス推進、レジ補助金など)で、「官公庁・団体」関連が増加した。
  • 「ラグビーワールドカップ2019」では、開催地エリアでの出稿が増加、また準々決勝リーグ進出のタイミングでも臨時出稿がみられた。
  • そのほか「趣味・スポーツ用品」「薬品・医療用品」で、シニア向け通販の出稿が多く見られた。一方、「飲料・嗜好品」「ファッション・アクセサリー」は前年同様マイナス傾向。
  • 新しい取り組みとしては、計画的な号外の発行や新聞社同士が連携して紙面企画プロモートを行う試みを積極的に行った。また、他媒体と絡めたキャンペーンを実施した。
  • 今後は、「東京2020オリンピック・パラリンピック」に伴う特集や号外、イベントの企画実施や、5G サービスの本格的導入にあたり、出稿の増加が期待される。さらに、キャッシュレスポイント還元制度、マイナポイントなども全国出稿を期待。

雑誌広告費:1,675億円(前年比91.0%)

  • 紙の出版物推定販売金額は、同95.7%と15年連続のマイナスとなった。内訳は、書籍が同96.2%、雑誌が同95.1%。一方、電子出版市場はコミック系誌の好調により、同123.9%と前年から大きく伸長、紙と電子出版市場を合わせた全体は同100.2%となり、電子出版の統計を開始して以降、初めて前年を上回る結果となった。※出典:出版月報2020年1月号
  • 雑誌広告費は、宣伝予算のデジタルメディアやプロモーションへのシフト、および雑誌発行部数の逓減などにより、年間を通じて前年を下回る厳しい状況が続いた。一方、デジタルメディアの成長持続(コンテンツの質の高さ、メディアパワーの成長など)、デジタルネイティブメディアのローンチ、広告手法の多様化(SNS拡散企画や出版社制作による動画のプロモーション活用など)によるデジタル事業での収益拡大、また、多様なコンテンツホルダーとしての事業開発(コミック他各種コンテンツを活用したイベントや商品開発、過去コンテンツも活用したサブスクリプションビジネスなど)による収益構造の変化に伴い、新領域ビジネスの伸長は今後も期待される。(インターネット広告費に含まれる雑誌デジタル広告費は増加傾向)
  • 雑誌ジャンル別では、全てのジャンルで前年を割る結果となった。
  • 業種別では、「官公庁・団体」が前年より増加したものの、トップシェアである「ファッション・アクセサリー」、同2位の「化粧品・トイレタリー」は前年に続き減少。
  • スポーツ誌のみならず各ジャンルにおいて、著名人やコンテンツ活用型の様々なスポーツ関連企画が検討されており、こちらも収益拡大への寄与が期待される。

ラジオ広告費:1,260億円(前年比98.6%)

  • 前年に続き、減少傾向ではあるものの、デジタルと組み合わせた出稿やradiko「ラジコオーディオアド」
    ※などの出稿(インターネット広告費に含まれるラジオデジタル広告費として推定)が活発化した。
  • 「東京2020オリンピック・パラリンピック」に伴うスポーツ需要で、スポーツ関連の出稿が増加。さらに、シニアのスマホ乗り換え促進に伴い、通信業界・スマホ関連の出稿が増加した。損害保険関連は、前年の被災地お見舞い出稿が大きく、反動減となった。飲料関連では、デジタルやPR関連への広告費シフトがみられた。
  • radiko「ラジコオーディオアド」のセグメントにおいて、性・年齢などの基本セグメントに加え、ライフスタイルなども追加。
  • 今後は、ラジオの聴取率が放送翌日には測定できるVR365が導入され(関東圏)、ラジオ聴取率の課題であった即時性のないデータという点が克服されるだろう。
  • radiko「ラジコオーディオアド」とは、番組単位でターゲットをセグメントする地上波ラジオ放送の広告とは異なり、聴取番組に関係なくラジコリスナーの年代や性別といった属性でターゲットをセグメントすることが可能な広告モデルのこと。

テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連):1兆8,612億円(前年比97.3%)

地上波テレビ 1兆7,345億円(同97.2%)

  • 地上波テレビは、長梅雨・冷夏・台風といった天災・天候不順、米中貿易摩擦の経済への影響を受けるなか広告活動が活発に行われることは難しく、通期で前年割れとなった。
  • 番組(タイム)広告は、前年の「第23回オリンピック冬季競技大会平昌」「2018FIFAワールドカップロシア大会」などの反動減はあるものの、「世界水泳韓国・光州2019」「ラグビーワールドカップ2019」「第17回世界陸上競技選手権大会」「第2回世界野球プレミア12」「2019世界柔道選手権東京大会」などのスポーツ番組が牽引しほぼ前年並みとなった。視聴者の関心が高まり、日本選手の活躍や番組中継技術の高度化もあり、いずれもクライアントニーズは高かった。また、番組に合わせた広告表現も増え、単なる接触効率だけではなくロイヤリティ向上などの効果を狙う出稿が増加した。地域別では、通年で基幹8地区中、大阪、名古屋(3年連続)、静岡(2年連続)の3地区が前年越えとなった。
  • スポット広告は、中小企業庁の大型出稿や税率変更を目前にしたキャッシュレス関連出稿が好調だったが、長梅雨・冷夏・自然災害に伴う影響、消費税率変更に伴う各社出稿控え、米中貿易摩擦の影響も加わり全体としては低調に推移し3年連続のマイナスとなった。地域別では、通期で全32地区が前年を割った。
  • 業種別では、「官公庁・団体」(政党・政治団体)「金融・保険」(キャッシュレス・損保)などが増加。一方、「情報・通信」(キャリア・アプリ各社)「化粧品・トイレタリー」などが減少した。
  • NHKが同時配信の正式なサービス「NHKプラス」を開始する。民放事業者がすでに開始しているキャッチアップサービスも順調にユーザーを増やしているため、「東京2020オリンピック・パラリンピック」を機に、どの程度アプリ視聴が定着するかがひとつのポイントとなる。信頼のおける放送コンテンツへの広告出稿は大きく崩れないと考えられるが、ユーザーのニーズや視聴スタイルを踏まえながら、クライアントも地上波テレビ放送への広告出稿と配信サービスへの出稿バランスを検討する可能性もあるだろう。

衛星メディア関連 1,267億円(同99.4%)

  • BS(無料民放8局)は前年越え、CS/CATVは前年割れとなった。(以下の表を参照)
  • CS/CATVにおいて、ダイレクト関連の広告に関して厳しい状況が続いた。
  • 2020年3月末で閉局する局があるものの、「東京2020オリンピック・パラリンピック」がBS4Kで放送予定、4K放送普及の後押しとなることに期待する。
  • また、2020年4月より、BSにおいても新視聴率データの導入が決まっており、地上波テレビと同一パネルのデータとなる。

(億円、前年比%)

  2018年 2019年 前年比
衛星メディア関連 1,275 1,267 99.4
BS 922.9 932.6 101.1
CS 187.0 178.0 95.2
CATV 164.8 156.4 94.9

注)合計値は小数点以下を四捨五入

マスコミ四媒体広告制作費:2,822億円(前年比97.4%)

(注)広告制作費は、衛星メディア関連を除く新聞・雑誌・ラジオ・地上波テレビの広告費に含まれている。

  • うち地上波テレビCM制作費は、2,099億円(同98.2%)。前年の「第23回オリンピック冬季競技大会平昌」、「2018FIFAワールドカップロシア大会」などの反動減で1-6月期が対前年割れになるのは想定されていたが、7-12月期となっても、「ラグビーワールドカップ2019」、消費税率変更関連、「東京モーターショー」など好条件に恵まれたものの、増加にいたらなかった。
  • 業種別では、春の統一地方選挙、G20や参議院選挙、消費税率変更関連などで、「官公庁・団体」がトップ。続いて「エネルギー・素材・機械」「食品」「自動車・関連品」が前年を上回った。一方、減少は「精密機器・事務用品」「ファッション・アクセサリー」「化粧品・トイレタリー」「不動産・住宅設備」など、通年で減少業種の方が多かった。

2019年 マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む)の四半期別伸び率

「マスコミ四媒体広告費」(衛星メディア関連も含む)を四半期別にみると、4四半期ともに前年割れ、12四半期連続(2016年4-6月期より)でマイナスとなり減少傾向が続いた。

(前年比、前年同期比、%)

マスコミ四媒体広告費
(衛星メディア関連も含む)
2018年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
96.7 96.6 96.9 96.1 97.0 97.8 96.1
2019年1-12月 1-6月 7-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
96.6 98.1 95.0 98.6 97.6 97.0 93.1