プロモーションメディア
プロモーションメディア広告費:2兆2,239億円(前年比107.5%)
屋外広告 名称と定義
名称 | 定義 |
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ネオン看板 | ビル屋上に設置され、自社もしくは他社広告がネオンで製作された長期掲出の広告。 |
LED看板 | ビル屋上や施設内に設置され、自社もしくは他社広告がLEDで製作されたデジタルサイネージを含む長期掲出の広告。 |
長期看板 | 自社・他社のビル壁面・屋上などにネオン・LED以外の素材で製作された長期掲出の広告。店舗サインや袖看板を含む。 |
短期看板 | 他社のビル壁面・屋上などにネオン以外の素材で製作された短期(1ヶ月程度)で単独に掲出される広告。LEDなどのデジタルサイネージを含む。 |
短期ネットワーク看板 | 他社のビル壁面・屋上などにネオン以外の素材で製作された短期(1ヶ月程度)で複数エリアの面をネットワークして掲出される広告。LEDなどのデジタルサイネージを含む。 |
屋外 3,219億円(同100.6%)
全般に、アナログ看板からデジタルサイネージ・屋外ビジョンへのシフトが見られる。
- ネオン看板:媒体費・製作費共に大幅に減少した。
- LED看板:既存看板をLEDに転換する傾向が継続し、前年に続き媒体費、製作費共に増加。
- 長期看板:前年並、現状維持の傾向だった。
- 短期看板:青山・原宿エリアに新設の短期看板が登場。また、短期看板が集中する渋谷エリアも海外の企業から注目、増加傾向。
- 短期ネットワーク看板:前年並、現状維持の傾向が続いた。
- 屋外ビジョン:渋谷エリアで複数の新たなビジョンがスタートするなど、増加傾向。
- スタジアム看板:プロ野球の観客動員数は2,650万(前年比104%)と増加したものの、スタジアム看板の広告は売枠がなくほぼ現状維持。
- 商業施設メディア:首都圏を中心に商業施設増加に伴って、イベントプロモーション展開などを含め全体としては、堅調に増加した。
交通 2,062億円(同101.8%)
- 交通広告全体としては、鉄道は、紙媒体(中づり、まど上、ドア横、駅ばり)が落ち込み、それを車内・駅構内のデジタルサイネージでカバーする傾向が継続している。首都圏では、特に車内デジタルサイネージが好調であった。
- 空港は、外国人観光客の増加に伴い、広告需要が伸びている。一部媒体の支障などがあったが、全体稼働率が上がったことが好影響し、広告費は増加した。
- 地域別でみても、関西、中部エリアも首都圏のトレンドと同じく、紙媒体の売り上げの減少をデジタルサイネージ媒体がカバーしている構造は変わりがない。デジタルでカバーしきれなかった中部エリアは前年割れとなった。
- 業種別動向は、前年に続き、飲料の出稿が減少した。一方、エステ系、人材系、外資系の出稿は増加した。
- 全国的に駅・車内のデジタルサイネージの導入が続いている。大阪などでは大型の駅サイネージを新設し好調だった。また「ダイナミック・デジタルOOH ※」を利用したサイネージの展開やデジタルサイネージの車両・駅媒体との組み合わせが前年に続き進化している。
- ダイナミック・デジタルOOH … 天気・気温・時間・位置情報などの外部データとの動的・即時的な連携により、その瞬間、その場所、その人に最適なクリエイティブを配信する手法のこと。
- タクシー 活性化しているタクシービジョンの市場に、2019年はさらに参入があり、大幅に増加した。エリア展開としては、東京23区だけでなく、大都市圏を中心に地方にも普及し始めた。BtoB向けクライアントが多く出稿しているが、BtoC向けクライアントの出稿も増加し始めた。今後に期待がかかる。
折込 3,559億円(同91.0%)
- 新聞購読率の下落、新聞発行部数の減少(日本新聞協会の発表では、2019年は前年比5.2%減)に加え、販促手法の見直し、デジタル広告へのシフトや消費税率変更などの影響により、全国の折込枚数は減少した。全国折込広告出稿統計データによると、2019年一世帯の年間平均折込枚数は前年比96.6%となった。2018年(同95.9%)と比較すると、出稿量の下落率は下げ止まり傾向にあるともいえるが、印刷用紙の高騰、折込のサイズ縮小・回数減少、デジタルシフトの影響などにより、折込広告費は、同91.0%となった。
- 8月のみ前年の出稿を上回ったが、それ以外の月では前年の出稿を下回った。なかでも10月は、台風19号などの自然災害と消費税率変更の直後という事もあり、前年比89.9%と大幅減となった。
- 地域別で最多出稿地域は「中部」、次いで「北海道」、「東海・甲信越」と続く。この傾向は前年と同様。
- 業種別では、1位「小型スーパー」2位「家電」3位「塾・予備校」4位「パチンコホール」5位「大型スーパー」となっている。前年は4位だった「家電」が2位に躍進、前年は5位だった「ドラッグストア」が圏外となり、代わりに「大型スーパー」が2016年から3年ぶりに、出稿上位5位以内に入った。2位「家電」は、主力の「家電製品」の折込に加えて「リフォーム」や「日用品」が急増。前年同様、「百貨店」「紳士服専門店」「自動車販売店」と不動産全般については出稿が伸びず、これらの業種については減少傾向が続いた。
- 秋にはデジタルチラシが新たに展開されるなど、デジタルプラットフォーマーの折込周辺事業への本格参入もみられた。位置情報を利用したジオフェンシング広告(位置情報連動広告)などとのオンオフ(デジタルとアナログ)統合企画も一層進行。さらに、配信手法も多様化・精緻化が進んでいる。(折込のデジタル広告費関連は未推定。一部すでにインターネット広告費に含まれていると推測される)
DM(ダイレクト・メール) 3,642億円(同99.0%)
- 2019年日本の広告費には含まれないDM制作関連市場(2019年1,202億円)を加えると、全体では4,844億円と推測される。よりターゲティングされた人へオンタイム、ピンポイントで送付するDMがさらに進化している。
- 前年に続き、インターネット広告で取り込めない顧客を、紙のDMで取り込もうとする方法が伸長。特にECサイトの拡大とともに、紙のDMをタイミングよく的確な顧客へ送付、購買などのコンバージョンへつなげるオンオフ統合企画は顕著に増加した。
- DMを利用したサンプリング手法が活発化。ある程度の見込み客や他社ブランド利用者に対して、より高度で安全なデータを利活用したサンプリング手法である。試供品を同梱することで大きさや重さが通常の紙DMとは異なるケースもあり、そのようなDMを配送する需要も高まった。
- DM無宛名便市場も、前年に続き伸長。主に、小売業界での新店オープン時の活用がみられた。また、通販業界では、インターネット広告との使い分けでトライアル利用も多く、エリア特性に応じたメディアの使い分けで費用対効果を図るケースも出てきている。クライアント要望に応えつつ、デジタルとアナログの融合が進んでいる市場。そのため、業種業態を超えた協業、オープンイノベーション、また送客と認知の両目的をかなえられるメディアとして注目されている。
【参考】2019年日本の広告費には含まれないDM制作関連市場(2019年1,202億円、同99.0%)
フリーペーパー・電話帳 2,110億円(同92.3%)
- フリーペーパーは、2019年よりフリーペーパー・フリーマガジンを総称する。また、電話帳は、発行頻度の変更に伴い、従来の広告費推定が困難であるため、本年よりフリーペーパーとの合算値として発表することとした。
- デジタルシフトに伴い出稿の減少傾向が続く。一方、フリーペーパー発行企業自身がデジタル事業にも積極的なアプローチを行うことで「紙とデジタル」のそれぞれの特性と効果検証方法を活用した企画が実施されつつある。さらに、販促イベントなどを複合的に絡め、紙メディアの拡散力、フリーペーパーが持つブランド価値を配布エリアにしっかりと根付かせる努力が続けられている。
- 地域メディアとしてのコンテンツ力再強化を実施し、ナショナルスポンサーをはじめ、ローカルスポンサー復調の動きもあり、減少幅も少なくなってきている。
- デジタルプラットフォームにコンテンツを提供、公式チャンネルへのデジタル連携など枠を超えた取り組みが進む。さらに、新聞や雑誌など他メディアとのコラボレーション(特に動画関連)が増加。
- 今後もプロモーション(サンプリング、イベント、流通タイアップなど)連動が継続するだろう。
POP 1,970億円(同98.5%)
- リテールテクノロジーを強調するような、新しいタイプの店舗が増えた。顧客体験、省人省力化を主軸に店舗への新しい価値を求める動きがみられ、店頭演出としての最新デジタルツールも数多く登場した。
- その他、ショールーミング(店舗で実物の商品を確認後、インターネット通販で店頭価格より安価に購買すること)専用店舗など、オンオフ統合環境における意欲的な実験店舗がポップアップストアを中心に展開された。こうした店頭における顧客体験を中心とした演出は小売業自らが<空間スペース>領域で行っているため、メーカーが用意するPOPの役割が変わり始めている。
- 制作会社も最新ソリューションとして、AIロボットや次世代サイネージなどのデモンストレーションを行っており、業界全体がリテールテックへ向かっていると言えよう。
- より商品の特徴や機能に触れたり試すことができる「体験型POP」が増えた1年だった。
- 予算縮小とロットの減少も加速したと思われる。多くの量販店に大量POPを設置する考え方から、費用対効果を考慮し旗艦店には費用をかけ、その他の店舗は最低限のPOPとするような施策がさらに進んだ。
イベント・展示・映像ほか 5,677億円
今回追加推定した2019年「日本の広告費」における「イベント」は、1,803億円となった。「日本の広告費」における「イベント」を除き、前年同様の推定方法の「展示・映像ほか」は、3,874億円(前年比108.1%)
- 新元号制定に伴う祝賀イベントやディスプレイ変更が全国で実施された。またG20が大阪で開催され、世界の首脳に対しジャパンプレゼンテーションが行われた。さらにローマ法王が来日し、訪問地では大型イベントが多数開催された。国家的イベントが続いた事もあり、市場は拡大。
- さらに、スポーツイベントも活況を呈した。「ラグビーワールドカップ2019」開催によるラグビーファンの増加により、会期終了後も関連イベントが増加。2019年は、「東京2020オリンピック・パラリンピック」1年前の機運醸成イベントの開催など、「2021年ワールドマスターズゲームズ」まで続く「ゴールデン・スポーツ・イヤーズ」の幕開けとなった。
- 「東京モーターショー2019」が10月24日から11月4日まで開催された。会場である東京ビッグサイトの増改築に伴い、青海から有明地区の複数会場を各種モビリティでつなぐ初のエリア開催となった。またe モータースポーツ、ドローンレースやキッザニアとのコラボレーションなど、CASE(Connected Autonomous Shared & Services Electric、順にコネクテッド〈つながる〉、自動運転、シェア&サービス、電気自動車)による自動車業界の大変革を象徴するイベントとなった。
- 100年に1度と云われる渋谷再開発をはじめ、「東京2020オリンピック・パラリンピック」に合わせ各地で再開発が進み、首都圏をはじめとする大都市圏において都市開発や駅ビルなどの複合型商業施設の開業が相次いだ。さらに、企業ショールーム、博物館・美術館などの文化施設やテーマパークの環境演出、ホテルの新装改装などサービス関連施設が堅調に推移。「複合型商業施設」「文化施設」「サービス関連施設」などの市場を中心に、増加要因となった。
- 映像関連は、IT技術によるエンタテインメントの多様化が進み、VRを活用した体験型のアトラクションが増加。スマートフォン普及で、動画コンテンツを活かしたプロモーションも増加している。一方、展示映像単体でのプロモーション映像制作は減少傾向。
- 音楽、演劇、ミュージカルや歌舞伎など本広告費には含まれないイベント市場も前年に続き拡大している。
- シネアドは、映画界の興行状況が活況の中(2000年以降で興行収入歴代1位、入場人員歴代1位)、話題の海外映画を中心に、作品と親和性が高い映像配信系クライアント、エンタテインメント系やゲーム系クライアントの広告が増加。
参考:その他、注目すべき広告関連市場
- 商業印刷市場 1兆9,900億円(前年比99.5%)
うち、ポスター・チラシ・パンフレットの市場は1兆2,300億円(同99.4%)で、減少傾向だった。 - ポスティング市場 1,207億円(前年比106.9%)
前年に続き、全戸配布需要が増加。さらにその重要性が認知され、期待も高まっている。配布要員の確保や天候対策など、様々な課題に対して、業界内での連携や他媒体との協働を通し、解決を図っている。